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わかる人だけがわかるのよ!
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マーレン師による特別練習が終了し、そろそろ夕食の時間になるので寮に戻ることになった。
監督役を引き受けてくださったマーレン師に「ありがとうございました!」と礼をした。
「なに、暇じゃったからよいよい。新入生ながらもここまで熱心に練習できるとは、さすが特別クラスに選ばれるだけあるわい」
マーレン時は顎ひげを撫でながら目尻を下げ、ふと思い出したように話を続けた。
「そうそう。おぬしたち、今日覚えたことを寮の中庭なんぞで試そうとしてはならんぞ? 魔力操作がまだまだ未熟じゃから、暴走でもしたら大変じゃからな。もし何かやるとしたら魔力循環を効率よく行う練習をするがええぞい」
魔法を展開するために必要なのは明確にイメージすることだけど、それに威力を乗せるには魔力が必要だ。
その魔力がたくさんあっても自分が上手くコントロールできなければ、出力が足りなかったり、逆にあふれだして暴走したりして大惨事に繋がりかねない。
私が前世を思い出してコントロールする術を身につけるまでは、まさにこの状態だったわけだ。
「はい! マーレン先生! 魔力循環を効率よくってどうしたらいいんですか?」
エイディー様がビシッと手を挙げて質問した。
「私も知りたいですわ」
アリシア嬢もおずおずと手を挙げた。
「ん? おぬしたちは家庭教師に習ったはずじゃろ?」
「はい。ええと……身体の中にある魔力を意識して手元に集めるのだと習いました」
「その身体の中の魔力はどこから来とるのか理解しとるかの?」
「どこから……?」
マーレン師の問いに皆が戸惑いの表情を見せた。
「ふむ、じゃあそれは次回までの宿題にしておこうかの。さあ、急がんと食いっぱぐれるぞい」
「あっ! まずい! 皆急いで寮に戻るぞ!」
エイディー様が焦った様子で皆を急かすと、それぞれにマーレン師に礼をしてからバタバタとそれぞれの寮へ急いだのだった。
特別寮と男女の寮へ別れるところで、先頭を急いでいたエイディー様がくるっと振り向いた。
「クリステア嬢にマリエル嬢。結局今日は俺たちの練習みたいになっちまってごめんな! でもまた一緒に練習しようぜ!」
「ええ、また」
「は、はいっ!」
「じゃあまた明日な! セイ!」
「ああ、また明日」
エイディー様がニカッと笑うと、ロニー様がこちらに振り向いたものの、そっぽを向いた。視線はチラチラとこちらを向いていたけれど。
「き、今日は有意義な午後だった。じゃあ、ま、また……」
それだけ言うとそのまま前を向いてスタスタと男子寮へ向かっていった。
エイディー様が肘でロニー様を突いていたけれど、ロニー様が肩でエイディー様に体当たりして対抗していた。ほほえましいなあ。
そんな中で、アリシア様がその場に立ち尽くして黙ってこちらを見るので私たちも思わず立ち止まってしまった。
「あ、あの、私も途中からお邪魔してしまって……もうしわけありませんでしたわ」
「いえ、それはお気になさらないでくださいませ!」
重ねて謝罪するアリシア様に、私とマリエルちゃんはブルブルと首を横に振った。
「それで、あの……」
アリシア様がもじもじしながら口篭った。
「はい?」
私とマリエルちゃんが首を傾げて続きを待つと、アリシア様が顔を赤くし、思い切ったように声を上げた。
「わ、私も! とっても有意義な時間でしたわ! で、ですから……ありがとうございましたわ!」
「……! はい! こちらこそ」
「あ、ありがとうございました!」
「……で、ではまた明日、ごきげんよう!」
アリシア様は私たちがにこやかに答えたのに安堵した様子でくるりと踵を返して女子寮へ駆けていった。
「や、やばい、可愛い……」
「ええ、これはいいツンデレ……」
「……二人の感性がよく分からんのだが……」
マリエルちゃんと私が漏らした言葉に、セイが首を捻っていた。
セイくん、分からんでいいのだよ。
わかるものにだけわかる癖なのだから……
「はいはい、俺らも寮に帰ってメシにしようぜ~腹減った!」
白虎様が急いで食事の支度をしようと私たちの背中を押した。
「主に気安く触れるな」
「たべたいならびゃっこははやくりょうにもどりなよ」
黒銀と真白が、私とマリエルちゃんを白虎様から引き剥がしてシッシッと追いやる。
白虎様「ひでえ!」とぶーたれながらも、サッとセイを肩車して「おらおらぁ! とっとと帰ってメシだメシー!」と特別寮の玄関に向かって走り始めた。
「こら白虎! 下ろせ! こらー!」
セイが慌てて白虎様の頭を鷲掴みにしながら振り落とされないようにしているのを見て、声を上げて笑ったのだった。
今日の夕食は手早く準備するため、オーク肉と野菜をにんにく醤油で炒めたお肉多めの野菜炒めにした。
疲労には豚肉がいいかな? ってことで、オーク肉にしたけど、豚肉じゃなくてオーク肉なので、実際のところはどうなのだろうね……でも、魔力回復にはばっちり効くはず!
皆の食いつきは良かったので、よしとする。
白虎様なんて、ご飯の上に肉多めに盛って丼にしてるし……
白虎様って、美味しいものを食べるためのそういう工夫は惜しまないよね⁇
マリエルちゃんは、野菜炒めにマヨネーズかけてるし……
マリエルちゃん、貴女今日使った魔力のほとんどは魔石に充電していたルビィの魔力のはずよね?
なのに、そんなに食べたら確実にカロリーオーバーよ!
食後、自室に戻ってゆっくりしているとマリエルちゃんたちが私の部屋にやってきた。
「クリステアさん、こんばんは」
「はぁい、今いいかしら?」
「あれ、マリエルさんにルビィ? どうしたの?」
立ち話もなんなので、と部屋に招き入れると
ルビィは遠慮なくリビングまでピョンピョンと進む。
ルビィは特別寮にすっかり慣れて、勝手知ったるといった様子。
「す、すみません。お邪魔します」
ルビィを引き止められなかったマリエルちゃんが恐縮しながら私の案内で奥へ進んだ。
「それで、二人ともどうしたの?」
ミリアにお茶を淹れてもらい、落ち着いたところで話を切り出した。
「どうもこうもないわよ、女子会のこと忘れてない?」
「あ」
本気だったんだ……
「やっぱり忘れてたのね。このままうやむやにしちゃうとアリーとの関係が微妙なままじゃない? せっかくだし女子会ってやつをやってみたいのよねぇ」
まあいいけど。私もアリシア様と仲直りできたことだしね……でもルビィの目的はアリシア様との親睦より、女子会だよね?
私がジト目で見ているのも気にせず、ルビィは話を続ける。
「場所は特別寮でいいかしら? それとも他にいい場所はある?」
「あ、それならサロン棟がありますよ」
ルビィの質問にマリエルちゃんが答え、サロン棟の説明をする。
「ふうん、社交用の部屋ねぇ……アナタたち貴族って無駄なことするわね」
いやまったくその通り。
内心同意しつつもその貴族の最たる立場の公爵令嬢としては苦笑いするしかない。
「まあいいわ。女子会にふさわしい場所があるならそこにしましょ」
「あ……でも……」
「何よ?」
「えっと……」
マリエルちゃんが何かを思い出して気まずそうに口篭った。
うん、サロン棟はアリシア様が私に暴言を吐いたところだから、もしかしたら彼女が気まずい思いをするかもしれないわね。
マリエルちゃんがこしょこしょとルビィに耳打ちすると、最後に耳をプルプルっと振るわせてマリエルちゃんの顔に打ちつけた後、すっくと立ち上がった。
「んぶっ! ルビィってばひどい!」
「ばかね、そういうことならなおさらそこでやりましょ。そこでイチから仕切り直しってことにしましょうよ」
ルビィの言葉に私たちは呆気にとられたものの、それも一理あるのかも……? と思い、女子会の計画を立て始めたのだった。
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その魔力がたくさんあっても自分が上手くコントロールできなければ、出力が足りなかったり、逆にあふれだして暴走したりして大惨事に繋がりかねない。
私が前世を思い出してコントロールする術を身につけるまでは、まさにこの状態だったわけだ。
「はい! マーレン先生! 魔力循環を効率よくってどうしたらいいんですか?」
エイディー様がビシッと手を挙げて質問した。
「私も知りたいですわ」
アリシア嬢もおずおずと手を挙げた。
「ん? おぬしたちは家庭教師に習ったはずじゃろ?」
「はい。ええと……身体の中にある魔力を意識して手元に集めるのだと習いました」
「その身体の中の魔力はどこから来とるのか理解しとるかの?」
「どこから……?」
マーレン師の問いに皆が戸惑いの表情を見せた。
「ふむ、じゃあそれは次回までの宿題にしておこうかの。さあ、急がんと食いっぱぐれるぞい」
「あっ! まずい! 皆急いで寮に戻るぞ!」
エイディー様が焦った様子で皆を急かすと、それぞれにマーレン師に礼をしてからバタバタとそれぞれの寮へ急いだのだった。
特別寮と男女の寮へ別れるところで、先頭を急いでいたエイディー様がくるっと振り向いた。
「クリステア嬢にマリエル嬢。結局今日は俺たちの練習みたいになっちまってごめんな! でもまた一緒に練習しようぜ!」
「ええ、また」
「は、はいっ!」
「じゃあまた明日な! セイ!」
「ああ、また明日」
エイディー様がニカッと笑うと、ロニー様がこちらに振り向いたものの、そっぽを向いた。視線はチラチラとこちらを向いていたけれど。
「き、今日は有意義な午後だった。じゃあ、ま、また……」
それだけ言うとそのまま前を向いてスタスタと男子寮へ向かっていった。
エイディー様が肘でロニー様を突いていたけれど、ロニー様が肩でエイディー様に体当たりして対抗していた。ほほえましいなあ。
そんな中で、アリシア様がその場に立ち尽くして黙ってこちらを見るので私たちも思わず立ち止まってしまった。
「あ、あの、私も途中からお邪魔してしまって……もうしわけありませんでしたわ」
「いえ、それはお気になさらないでくださいませ!」
重ねて謝罪するアリシア様に、私とマリエルちゃんはブルブルと首を横に振った。
「それで、あの……」
アリシア様がもじもじしながら口篭った。
「はい?」
私とマリエルちゃんが首を傾げて続きを待つと、アリシア様が顔を赤くし、思い切ったように声を上げた。
「わ、私も! とっても有意義な時間でしたわ! で、ですから……ありがとうございましたわ!」
「……! はい! こちらこそ」
「あ、ありがとうございました!」
「……で、ではまた明日、ごきげんよう!」
アリシア様は私たちがにこやかに答えたのに安堵した様子でくるりと踵を返して女子寮へ駆けていった。
「や、やばい、可愛い……」
「ええ、これはいいツンデレ……」
「……二人の感性がよく分からんのだが……」
マリエルちゃんと私が漏らした言葉に、セイが首を捻っていた。
セイくん、分からんでいいのだよ。
わかるものにだけわかる癖なのだから……
「はいはい、俺らも寮に帰ってメシにしようぜ~腹減った!」
白虎様が急いで食事の支度をしようと私たちの背中を押した。
「主に気安く触れるな」
「たべたいならびゃっこははやくりょうにもどりなよ」
黒銀と真白が、私とマリエルちゃんを白虎様から引き剥がしてシッシッと追いやる。
白虎様「ひでえ!」とぶーたれながらも、サッとセイを肩車して「おらおらぁ! とっとと帰ってメシだメシー!」と特別寮の玄関に向かって走り始めた。
「こら白虎! 下ろせ! こらー!」
セイが慌てて白虎様の頭を鷲掴みにしながら振り落とされないようにしているのを見て、声を上げて笑ったのだった。
今日の夕食は手早く準備するため、オーク肉と野菜をにんにく醤油で炒めたお肉多めの野菜炒めにした。
疲労には豚肉がいいかな? ってことで、オーク肉にしたけど、豚肉じゃなくてオーク肉なので、実際のところはどうなのだろうね……でも、魔力回復にはばっちり効くはず!
皆の食いつきは良かったので、よしとする。
白虎様なんて、ご飯の上に肉多めに盛って丼にしてるし……
白虎様って、美味しいものを食べるためのそういう工夫は惜しまないよね⁇
マリエルちゃんは、野菜炒めにマヨネーズかけてるし……
マリエルちゃん、貴女今日使った魔力のほとんどは魔石に充電していたルビィの魔力のはずよね?
なのに、そんなに食べたら確実にカロリーオーバーよ!
食後、自室に戻ってゆっくりしているとマリエルちゃんたちが私の部屋にやってきた。
「クリステアさん、こんばんは」
「はぁい、今いいかしら?」
「あれ、マリエルさんにルビィ? どうしたの?」
立ち話もなんなので、と部屋に招き入れると
ルビィは遠慮なくリビングまでピョンピョンと進む。
ルビィは特別寮にすっかり慣れて、勝手知ったるといった様子。
「す、すみません。お邪魔します」
ルビィを引き止められなかったマリエルちゃんが恐縮しながら私の案内で奥へ進んだ。
「それで、二人ともどうしたの?」
ミリアにお茶を淹れてもらい、落ち着いたところで話を切り出した。
「どうもこうもないわよ、女子会のこと忘れてない?」
「あ」
本気だったんだ……
「やっぱり忘れてたのね。このままうやむやにしちゃうとアリーとの関係が微妙なままじゃない? せっかくだし女子会ってやつをやってみたいのよねぇ」
まあいいけど。私もアリシア様と仲直りできたことだしね……でもルビィの目的はアリシア様との親睦より、女子会だよね?
私がジト目で見ているのも気にせず、ルビィは話を続ける。
「場所は特別寮でいいかしら? それとも他にいい場所はある?」
「あ、それならサロン棟がありますよ」
ルビィの質問にマリエルちゃんが答え、サロン棟の説明をする。
「ふうん、社交用の部屋ねぇ……アナタたち貴族って無駄なことするわね」
いやまったくその通り。
内心同意しつつもその貴族の最たる立場の公爵令嬢としては苦笑いするしかない。
「まあいいわ。女子会にふさわしい場所があるならそこにしましょ」
「あ……でも……」
「何よ?」
「えっと……」
マリエルちゃんが何かを思い出して気まずそうに口篭った。
うん、サロン棟はアリシア様が私に暴言を吐いたところだから、もしかしたら彼女が気まずい思いをするかもしれないわね。
マリエルちゃんがこしょこしょとルビィに耳打ちすると、最後に耳をプルプルっと振るわせてマリエルちゃんの顔に打ちつけた後、すっくと立ち上がった。
「んぶっ! ルビィってばひどい!」
「ばかね、そういうことならなおさらそこでやりましょ。そこでイチから仕切り直しってことにしましょうよ」
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