上 下
280 / 373
連載

申請しよう!

しおりを挟む
梅仕事がひととおり終わり、後は時の経過にまかせるだけの状態となってからしばらくして、お父様を経由してガルバノおじさまから例の物ステッキが完成したと連絡が入った。

「そういうわけで、またこの週末は領地に行こうと思うのだけど。皆の予定はどうかしら?」
夕食の席で尋ねると特に予定はないとのことなので、前回と同じように週末の外出許可を取り、授業が終わり次第我が家へ向かうことになった。

ステッキを受け取るだけなら我が家の使用人がおじさまのお店に受け取りに行き、転移陣で荷物を転送してもらえばいいのだけど、動作確認が必要だからマリエルちゃんとルビィが行かなくちゃいけない。

当然ながらマリエルちゃんたちだけで我が家の転移部屋を使わせるわけにはいかないので私や黒銀くろがねたちの付き添いは確定。

セイもガルバノおじさまとの武器談義が楽しかったようで、私たちがよければ同行したいとのことでもちろん快諾。
……となれば、白虎様と朱雀様が護衛として付き添うわけで……はい、いつも通りのメンバーですね!

お兄様もお誘いしたけれど、王太子殿下の護衛兼付き添いで今回はやむなく欠席。
「週末に殿下が体調を崩せば……」なんて物騒なことを呟いていたけれど、まさか……一服盛ったりしたりなんてことは……ないわよね⁉︎
私が不安そうにお兄様を見ていると「ああ、殿下は鑑定スキル持ちだし、暗殺対策に解毒や回復効果のある魔導具を常に身につけているから体調を崩すことはないよ。だからいつも健康そうだろう?」とのこと。
今回ばかりは残念ながらね、とポソリと呟いたのはきっと空耳だろう。

「そういえば、ステッキを手に入れたら修練場の使用許可を取らないとね」
マリエルちゃんの膝に座ったルビィがおやつの野菜スティックをポリポリと齧りながら言った。
「え、え? 修練場って……なぜ?」
ルビィは修練と聞いてビクッと反応したマリエルちゃんにもたれかかるようにして見上げ、呆れたように食べかけのにんじんを最後までポリポリポリッと齧って口の中に収めた。

「むぐむぐ……ん、前に言ったでしょう? ワタシのステッキをマリエルが武器として使えるように連携込みで特訓するわよ」
ルビィはそう言ってカットされたキャベツを手に取り、バリバリと食べ始めた。
「えええ……そんな武器とか物騒な……」
「丸腰のほうがよっぽど危ないわよ。ワタシと契約したことで変なのに狙われるかもしれないんでしょ? いざという時の対策はしとかないとね」
「うう……いざという時なんて、学園ここにいたら早々起きませんよぉ」
学園ここに引きこもってるわけにもいかないでしょうに。つべこべ言わずに許可を取っときなさいよ」
「ふぁい……」

がくりと項垂れるマリエルちゃんの髪がバサリとルビィに降りかかると「ちょっと、邪魔よ!」とルビィの耳がビビビッと震えてマリエルちゃんの顔に当たった。
「ぶぶっ⁇ ご、ごめんルビィ」
「アンタはワタシのご主人様なんだから、堂々としてなさいよね。変な輩に捕まったりなんてのも許さないわよ。しっかりしなさい!」
ルビィの喝でマリエルちゃんの背筋がビシッとなった。
「は、はいっ!」
「それでよし」
ルビィは満足そうに頷くと再びにんじんスティックを手にしたのだった。
あの二人は主従関係が逆転してる気がしてならないわね……

「修練場の使用許可?」
ルビィとのやりとりがあった翌日。
今日は授業が終わればミリアに手配をお願いしていた迎えの馬車が正門で待機しているはずだ。
休み前の今日のうちに申請しておかないと休み明けすぐに使えないかもしれないとセイのアドバイスを受けたマリエルちゃんに付き添い、朝食を摂りにきたニール先生を捕まえて質問した。

「は……はい。私たちで魔法の訓練がしたくて」
「ふむ。確か休み明けの午後は修練場を使う授業はなかったと思うけど……君たちも午後の授業はなかったよね?」
「はい!」
「じゃあ後で申請書を渡すよ。付き添いは誰か決まってる?」
「付き添い……ですか?」
「うん。新入学生たちだけで修練場の使用許可は出せないよ。修練場の結界魔法の起動や魔法の暴走など、いざという時のために監督役が必要だ」
「監督役……」
「基本は上級生か院生、後はその時間に授業中がない教師の誰かだね」
ニール先生の言葉に心当たりがないマリエルちゃんがオロオロしている。
うーむ、監督かぁ……お兄様にお願いしてみる? 
無理そうなら他の上級生……王太子殿下は論外だし、ええと……ヘクター様とか?
いや、ヘクター様はやめとこう。
マリエルちゃんが疲弊しそうだ。

後は、ええと……
「えー、ゴホン。何なら僕が監督をしても……」
「え、ニール先生は午後から上級生の授業がありましたよね?」
ニール先生の申し出に私は反論した。
確か本人から上級生の授業も受けないかと誘われたことがあるから覚えている。
「え? あ、いやあ……たまには休講にしてもいいかなって……」
「……ニール先生は! お仕事を! してください!」
「は、はい……」
しょんぼりと肩を落とすニール先生を無理矢理教員棟へ送り出し、私たちも身支度を整えて教室へ向かった。
ニール先生のことだから、私たちの修練を監督する合間に聖獣の皆様との交流を目論んでいだのだろうけれど……まったくもう。

教室で授業が始まるのを待っていると、ニール先生とマーレン師……先生がやってきた。
マーレン先生がニール先生から何やら紙切れを引ったくると、私たちのところへやってきた。
「おお、クリステア嬢にマリエル嬢。修練場の件じゃが、わしが監督してやろう」
「えっ、よろしいのですか?」
「構わんよ。あの時間はわしも暇しとるでな。クリステア嬢の成長具合も確かめられて元家庭教師としてはちょうどいいわい」
マーレン先生が呵呵と笑いながら請け負ってくださったので訓練をサボり気味な元生徒の私は嫌な汗をかきつつもこれ幸いとお願いし、そのまま申請書を書き上げ提出したのだった。

背後から「マーレン先生の、監督? 直接指導……⁉︎」と声変わりがまだのはずのロニー様が発した低い声が聞こえたのは……気のせいじゃない。ひえっ⁉︎

---------------------------
レジーナブックスの新刊情報に書影がアップされましたのでご報告!
二月上旬に文庫版「転生令嬢は庶民の味に飢えている」四巻が発売します!
書き下ろし番外編も掲載されていますので是非!
今回の書き下ろしの主役は誰なのか、ぜひ予想してみてくださいね。

ちなみに文庫版一巻はミリア、二巻はティリエ、三巻はマリエル視点の書き下ろし番外編が収録されております!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。