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屋敷に戻った私たちは、そのまま転移陣で王都へ移動しようと思っていたのだけど、料理長をはじめとした料理人たちに「是非とも我々の修行の成果を見てほしい」と熱望されたため今晩は領地の屋敷で過ごすことにした。
修行……とは?
滝に打たれるとかしたのかな⁉︎
「こちら、フライ盛り合わせでございます」
夕食に出てきたのは、なんと白身魚や海老のフライ。
私レシピのウスターソースやタルタルソースを添えて。
「うわあ、おいしそう!」
マリエルちゃんが目を輝かせている。タルタルソース、好きだもんね……
かく言う私もワクワクしている。
王都は海に面していないので海産物にお目にかかれることがない。
我が家には転移陣があるし、私のインベントリには以前の追い込み漁でストックがあるから困らないんだけどね。
王都で食べられるのは干し魚や川魚くらいだし、カツなどのパン粉を使うレシピは商業ギルドに登録しているけどパン粉を作る手間やたっぷりの油を使うこともあって魚のフライなんて絶対出ない。
「いただきます!」
まずは海老フライから。
タルタルソースをかけてひと口。
サクッ……といい音を立てて衣の部分からぷりぷりの海老の弾力の変化が歯に伝わる。
「んんん……っ! 美味しい!」
思わず漏れた言葉に、ドアの隙間から覗いていた料理長がグッと拳を握りしめたのが見えた。
いやでも本当に美味しい。
サクッサクのぷりっぷりで、添えたタルタルソースもピクルスや卵がたっぷりだから食べ応えがあって嬉しい。
よし、次は白身魚のフライだ。
こっちはウスターソースにしてみよう。
……うん、こっちも間違いない美味しさ。
サクッとした食感の後、白身のふんわりとした柔らかさと旨味がソースと合わさって、早く次のひと口を求めて咀嚼が止まらない。
一緒に出てきたのはなぜか味噌汁とごはんだったけど、それがまた合う。
要はミックスフライ定食だもんね。
お兄様やセイ、聖獣の皆様もおかわりするくらい美味しかったようだ。
ルビィは美しく繊細に飾り切りされたサラダを満足そうに食べていた。
体育会系にも見えるあの料理人たちにこんな特技があったとは……
長い付き合いの領地の料理人たちの成長と意外性に驚く私なのだった。
翌日、転移陣で王都に戻った私たちはお父様に引き留られながらも、ガルバノおじさまに発注した品ができたらまた泊まりで来ることを約束し、屋敷を出た。
途中屋台を覗いたりマリエルちゃんのお父様が経営している商会に寄って買い物したり、メイヤー商会で売り出しているショートブレッドのついて相談されたりしたけど、無事何事もなく学園に戻った。
付き添ってくださったお兄様にお礼を言って別れ、特別寮に戻った私たちはインベントリ持ちということもあり部屋に置きに行く荷物もないのでそのまま談話室に向かった。
「はー、疲れたぁ」
主にオーウェンさんの件で。
「ごめんなさい、私とルビィのことで……」
マリエルちゃんがすまなそうに謝るので、私は慌てて訂正した。
「マリエルさんのせいじゃないわよ。久しぶりに領地に戻れて楽しかったもの」
「俺も伝説の鍛治師ガルバノ氏と有意義な時間が過ごせたのでむしろありがたいので謝られる理由はないぞ」
セイはガルバノおじさまと武器談義ができたのと気が向いたら剣を打ってくれると約束してくれたそうで機嫌がいい。
「ええ、私もおじさまたちと会いたかったからちょうどよかったわ」
「それならいいんだけど……」
マリエルちゃんは働き者のミリアが戻ってすぐに用意してくれた紅茶をこくりと飲み、苦笑いした。
「それにしても完成が楽しみよねぇ」
影からするりと出てきたルビィがマリエルちゃんの膝に座り、メイヤー商会から試作品として
渡されたショートブレッドのキャロット味を齧る。
「まさか、私の武器にもなるように魔改造されるとは思いませんでしたけどね……」
マリエルちゃんは私たちから目をそらしつつ、ハハ……と乾いた笑いを漏らした。
「いや、マリエル嬢。いざという時のために攻撃手段があるのは重要だぞ」
セイが真剣な表情でマリエルちゃんを見つめる。
「そうよ、聖獣契約者になったんだから護身のために攻撃手段を持つのは大事よ」
私やセイには護衛らしく見え、実際強い黒銀や白虎様がいるからそう簡単に手を出す輩はいないと思うけれど、見た目気弱そうな女の子に可愛らしいうさぎっぽい聖獣であるマリエルちゃんとルビィにちょっかいをかける不届き者がいないとも限らない。
まあ、中身は腐女子とオネエなんだけどね……
「そうは言っても、咄嗟にあれが使えるか自信はないです」
うう、とマリエルちゃんがルビィを抱きしめる。
「んもう、アンタって子は仕方ないわねぇ。いいわ、モノができあがったら特訓よ! 皆も付き合いなさい!」
「えええ……⁉︎」
ルビィのスパルタ発言にゲンナリとした顔で答えていると、白虎様が転移してきた。
そういえばメイヤー商会にいる間、二人はバステア商会王都支店に行っていたのよね。
セイと合流してから「本店に用がある」って転移で領地にトンボ帰りしてたんだった。
「ただいまっと」
「おかえり。で、どうだった?」
「え? 本店に何かあったの?」
セイの言葉に慌てて問うと、セイの隣のソファにどっかと座り、テーブルに置かれたショートブレッドをひょいとつまんで口に放り込む。
「んー、べふにひひょふふぁなふて」
「行儀悪いぞ、ちゃんと飲み込んでから話さんか!」
セイが注意すると、白虎様はミリアが淹れてくれた紅茶をすかさず飲んで流し込んだ。
「悪い。えーと、別に何か問題があったわけじゃなくて荷物を受け取りに行っただけだ。んで、これを預かってきた」
白虎様はそう言ってインベントリから大きな木箱を取り出した。
「なんだ?」
「お嬢にだってよ。前に約束してた品だってさ」
「え? 私?」
バステア商会と何か約束してたっけ?
心当たりがないなぁと思いつつ、床に置かれた木箱に歩み寄り、蓋を開けた。
「こ、これは……!」
私が待ち望んでいたものではないか!
修行……とは?
滝に打たれるとかしたのかな⁉︎
「こちら、フライ盛り合わせでございます」
夕食に出てきたのは、なんと白身魚や海老のフライ。
私レシピのウスターソースやタルタルソースを添えて。
「うわあ、おいしそう!」
マリエルちゃんが目を輝かせている。タルタルソース、好きだもんね……
かく言う私もワクワクしている。
王都は海に面していないので海産物にお目にかかれることがない。
我が家には転移陣があるし、私のインベントリには以前の追い込み漁でストックがあるから困らないんだけどね。
王都で食べられるのは干し魚や川魚くらいだし、カツなどのパン粉を使うレシピは商業ギルドに登録しているけどパン粉を作る手間やたっぷりの油を使うこともあって魚のフライなんて絶対出ない。
「いただきます!」
まずは海老フライから。
タルタルソースをかけてひと口。
サクッ……といい音を立てて衣の部分からぷりぷりの海老の弾力の変化が歯に伝わる。
「んんん……っ! 美味しい!」
思わず漏れた言葉に、ドアの隙間から覗いていた料理長がグッと拳を握りしめたのが見えた。
いやでも本当に美味しい。
サクッサクのぷりっぷりで、添えたタルタルソースもピクルスや卵がたっぷりだから食べ応えがあって嬉しい。
よし、次は白身魚のフライだ。
こっちはウスターソースにしてみよう。
……うん、こっちも間違いない美味しさ。
サクッとした食感の後、白身のふんわりとした柔らかさと旨味がソースと合わさって、早く次のひと口を求めて咀嚼が止まらない。
一緒に出てきたのはなぜか味噌汁とごはんだったけど、それがまた合う。
要はミックスフライ定食だもんね。
お兄様やセイ、聖獣の皆様もおかわりするくらい美味しかったようだ。
ルビィは美しく繊細に飾り切りされたサラダを満足そうに食べていた。
体育会系にも見えるあの料理人たちにこんな特技があったとは……
長い付き合いの領地の料理人たちの成長と意外性に驚く私なのだった。
翌日、転移陣で王都に戻った私たちはお父様に引き留られながらも、ガルバノおじさまに発注した品ができたらまた泊まりで来ることを約束し、屋敷を出た。
途中屋台を覗いたりマリエルちゃんのお父様が経営している商会に寄って買い物したり、メイヤー商会で売り出しているショートブレッドのついて相談されたりしたけど、無事何事もなく学園に戻った。
付き添ってくださったお兄様にお礼を言って別れ、特別寮に戻った私たちはインベントリ持ちということもあり部屋に置きに行く荷物もないのでそのまま談話室に向かった。
「はー、疲れたぁ」
主にオーウェンさんの件で。
「ごめんなさい、私とルビィのことで……」
マリエルちゃんがすまなそうに謝るので、私は慌てて訂正した。
「マリエルさんのせいじゃないわよ。久しぶりに領地に戻れて楽しかったもの」
「俺も伝説の鍛治師ガルバノ氏と有意義な時間が過ごせたのでむしろありがたいので謝られる理由はないぞ」
セイはガルバノおじさまと武器談義ができたのと気が向いたら剣を打ってくれると約束してくれたそうで機嫌がいい。
「ええ、私もおじさまたちと会いたかったからちょうどよかったわ」
「それならいいんだけど……」
マリエルちゃんは働き者のミリアが戻ってすぐに用意してくれた紅茶をこくりと飲み、苦笑いした。
「それにしても完成が楽しみよねぇ」
影からするりと出てきたルビィがマリエルちゃんの膝に座り、メイヤー商会から試作品として
渡されたショートブレッドのキャロット味を齧る。
「まさか、私の武器にもなるように魔改造されるとは思いませんでしたけどね……」
マリエルちゃんは私たちから目をそらしつつ、ハハ……と乾いた笑いを漏らした。
「いや、マリエル嬢。いざという時のために攻撃手段があるのは重要だぞ」
セイが真剣な表情でマリエルちゃんを見つめる。
「そうよ、聖獣契約者になったんだから護身のために攻撃手段を持つのは大事よ」
私やセイには護衛らしく見え、実際強い黒銀や白虎様がいるからそう簡単に手を出す輩はいないと思うけれど、見た目気弱そうな女の子に可愛らしいうさぎっぽい聖獣であるマリエルちゃんとルビィにちょっかいをかける不届き者がいないとも限らない。
まあ、中身は腐女子とオネエなんだけどね……
「そうは言っても、咄嗟にあれが使えるか自信はないです」
うう、とマリエルちゃんがルビィを抱きしめる。
「んもう、アンタって子は仕方ないわねぇ。いいわ、モノができあがったら特訓よ! 皆も付き合いなさい!」
「えええ……⁉︎」
ルビィのスパルタ発言にゲンナリとした顔で答えていると、白虎様が転移してきた。
そういえばメイヤー商会にいる間、二人はバステア商会王都支店に行っていたのよね。
セイと合流してから「本店に用がある」って転移で領地にトンボ帰りしてたんだった。
「ただいまっと」
「おかえり。で、どうだった?」
「え? 本店に何かあったの?」
セイの言葉に慌てて問うと、セイの隣のソファにどっかと座り、テーブルに置かれたショートブレッドをひょいとつまんで口に放り込む。
「んー、べふにひひょふふぁなふて」
「行儀悪いぞ、ちゃんと飲み込んでから話さんか!」
セイが注意すると、白虎様はミリアが淹れてくれた紅茶をすかさず飲んで流し込んだ。
「悪い。えーと、別に何か問題があったわけじゃなくて荷物を受け取りに行っただけだ。んで、これを預かってきた」
白虎様はそう言ってインベントリから大きな木箱を取り出した。
「なんだ?」
「お嬢にだってよ。前に約束してた品だってさ」
「え? 私?」
バステア商会と何か約束してたっけ?
心当たりがないなぁと思いつつ、床に置かれた木箱に歩み寄り、蓋を開けた。
「こ、これは……!」
私が待ち望んでいたものではないか!
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