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久々の領地へ!
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翌朝。いつもより少しだけ寝坊してしまったけれど朝食の時間にはまだ早かったので、マリエルちゃんを起こして朝ヨガをすることにした。
「まったく、マリエルも貴女も朝から元気ねぇ……ま、いい感じ魔力がに全身に巡っているようだし、魔力運用にちょうどいいから続けるといいんじゃないかしら?」
ルビィはベッドから私たちを見てそう言うと、あくびをしてまたこてん、と寝そべる。
やはり魔力を意識しながらやると効果があるみたいね。
「魔力を上手く巡らせられたら、美容にもいいわよぉ」
なんですと⁉︎ それは頑張らないと!
「クリステアさぁん……お腹空きました……」
「マリエルさん、あともうひと頑張りしたら朝食よ」
「うう、頑張りましゅ……」
「今朝はふわとろオムレツをリクエストしておいたわ」
「わあい、頑張りまっす!」
メニューを教えると途端にイキイキ、キビキビと動き始めた。
マリエルちゃんの場合、美容より美味しいもののほうが効果あるわね……
着替えてから食堂へ向かうと、すでに皆が席に着いていた。
「おはようございます。遅くなりまして申し訳ございません」
「お、おはようございます……」
「いや、私たちも来たばかりだ。始めてくれ」
私たちが席に着き、お父様が指示を出すと、給仕たちがさっと動き始めた。
寮ではビュッフェ形式にしているから、こんなふうに給仕してもらうのは久しぶりかも。
上げ膳据え膳、いいわぁ……実家最高。
今朝のメニューはふわとろオムレツに野菜たっぷりのコンソメスープとサラダ、そしてクロワッサン。バターとジャムはお好みで。
クロワッサンは料理長が「何か新メニューを!」と言うので、ざっくりとしたレシピだけ伝えておいたのだけど、私がいない間に試作を繰り返して完成させたのだそう。
「クリステア様が戻られた時、いつでも召し上がっていただけるよう頑張りました」
と、料理長が自信満々で言うだけあって、クロワッサンはバターの風味が素晴らしく、サクサクの食感で最高に美味しかった。
完成形を食べていないのに、私の渡したレシピだけでここまで到達する料理長まじすごくないかな……⁉︎
朝食後は町娘風の服装に着替えて、転移部屋へ。
「あら? シンも一緒に行くの?」
転移部屋の前に普段着のシンとミリアがいた。
「おう。あっちの料理長にこっちで書き溜めたレシピと領地で手に入りにくい食材を届けるのと、ついでに買い出しだな」
バステア商会の王都支店で欠品している食材が領地の本店なら在庫があるそうで、転移陣を使うのならついでにとおつかいを頼まれたのだそう。
領地の料理長にレシピを届けるのは王都の料理長に「彼が悔しがる様をとくと観察してきなさい」と言われたそうで……タチ悪っ!
「まあ、お嬢がこっちに来るまでは逆の立場だったからな……」
シンは「しかたねぇだろ」とガリガリと頭を掻いた。
そう言うシンは二人から「お前だけがクリステア様のお気に入りだと思うなよ?」と釘を刺されているそうなんだけど……
シンは前世を思い出すきっかけをくれた恩人だからね。特別枠よ。
転移するメンバーが揃ったので転移部屋の中に移動する。
使用人たちが領地に送る荷物を運び込み終わると、お父様が確認にやってきた。
「皆転移陣に入ったな? では行きは魔石を使って私がが魔力を流し込もう。帰りはノーマンとクリステアの二人でなんとかしなさい」
「「はい」」
お父様が魔石を手に転移陣に魔力を流し込み起動する。
転移陣が光り始めてすぐに目を閉じて待つとお兄様が「さあ、着いたよ」と声をかけてくださった。
「え? もう着いたのですか?」
マリエルちゃんがきょろきょろと辺りを見渡す。
学園内の採取地に移動するのとは違い、王都から遠く離れた領地の館まで一瞬で移動したのだからまあびっくりするよね。
「ええ。さあここから出ましょう」
転移部屋から出て、使用人たちに出迎えられるのもそこそこに用意してもらった簡素な馬車に乗り込む。
ミリアもついて行くといったのだけれど、領地の館の皆のためにお土産を買っていたのを知っているので、輝夜と一緒に留守番してもらうことにした。
シンはさっそく料理長に捕まっていたので、後から単独でバステア商会に向かうことになりそうだ。
料理長の相手、頑張ってね、シン……
……というわけで、街へ繰り出すメンバーは、マリエルちゃんとルビィ、セイと白虎様
と朱雀様、お兄様、黒銀と真白、そして私となった。
シンとミリアがいないので、馬車二台に振り分けるのをやめて一台に乗ることにしたのだけれど、本来全員が馬車一台に乗るには定員オーバー。なので、真白と白虎様には聖獣の姿になってもらい、それぞれ私とセイの膝に乗ってもらうことにした。
『この姿も久しぶりだぜ』
白虎様はぐでんとセイの膝でくつろいでいる。
確かに、学園では人の姿ばかりだったから子虎姿の白虎様は久々かも。
「かっ……かわいい……!」
対面に座るマリエルちゃんがお目目をキラキラさせて白虎様を見つめ、ボソリと呟く。
「こんなふうに弱い姿を晒すのはお前にだけ……そう、お前だから……うん。いい……」
……マリエルさんや? 身内やお友達で妄想を働かせるのはやめなさいとあれほど……
「うふふ、なかなかいいセンいってるんじゃなぁい? 後でゆっくりじっくりそのネタ、聞こうじゃないの」
「ふふ……臨むところです」
……ルビィ、お前もか。
二人の笑い声が「腐腐腐……」と聞こえたのは気のせいだろうか……
馬車は程なくして活気のある街の中に入り、職人街の近くで停まった。
お兄様が御者にお金を渡してしばらく時間を潰すように伝えていた。
御者は嬉しそうにしていたので大目にお小遣いを渡したみたいだ。
お兄様、やることがそつなさ過ぎじゃないかな?
お兄様の年齢でやることじゃないと思うの。
「さあ、クリステア。ガルバノおじさまのところへ行くんだろう?」
「ええ。あ、そうだわ黒銀。冒険者ギルドに行ってオークが不足していないか確認してきてくれるかしら? 他にも不足している素材があれば納品してきてほしいの」
「あいわかった」
黒銀は即座に冒険者ギルドに向かうのを見送ってから冒険者や商人が行き交う職人街にあるガルバノおじさまの店へ向かったのだった。
ガルバノおじさまの店は通りに面した店舗こそこじんまりとしているけれど、奥に鍛冶場と庭付きの住居スペースがある。
本人曰く、武器や武具などは見本だけで、実際に売る物は置かないから店は小さくていいのだそうだ。
ガルバノおじさまは超一流の鍛冶師だから、人を見てその人に合う武器を造るのがモットーで量産はしない人だからね。
以前はおじさまが多めにみてくださっているのをいいことに庭へ転移して裏口から入っていたのだけれど、今日は友人を連れているのでそんな不調法なことはせず、ちゃんとお店から入る。
「おはようございます……あら、いない。ガルバノおじさま、いらっしゃいますかー?」
店の奥へ声をかけるものの、反応がない。
もしかして、まだ寝ているのかもしれない。
気分次第で店を閉めて鍛冶に没頭していることもあれば、前日に飲み過ぎて昼まで寝ていることもあるのだ。今日はどちらだろう。
「ごめんなさい、奥に確認しに行くから、少し待っていてくれるかしら」
マリエルちゃんとセイに待つように伝える。
「あ、はい」
「わかった」
「テア、僕も行こう」
「おれもいく!」
お兄様も真白もガルバノおじさまとは面識があるから大丈夫ね。
三人でカウンターの奥にある鍛冶場へ向かう。
「あら、ここにもいない……」
まだ炉に火は入っておらず、シン……と静まり返っていた。
「ということは、まだ寝てるのかしら……」
起こすのはしのびないけれど、今日は用事があってわざわざ転移陣まで使って来たのだ。
諦めて帰るわけにはいかない。
さらに奥へ進み、住居スペースへ入る。
「うっ……こ、この臭い……」
むせかえる臭いに皆が口元を覆う。
そして、臭いの元へ目を向けると……
「おじさま!」
おじさまが床に倒れていた。
「まったく、マリエルも貴女も朝から元気ねぇ……ま、いい感じ魔力がに全身に巡っているようだし、魔力運用にちょうどいいから続けるといいんじゃないかしら?」
ルビィはベッドから私たちを見てそう言うと、あくびをしてまたこてん、と寝そべる。
やはり魔力を意識しながらやると効果があるみたいね。
「魔力を上手く巡らせられたら、美容にもいいわよぉ」
なんですと⁉︎ それは頑張らないと!
「クリステアさぁん……お腹空きました……」
「マリエルさん、あともうひと頑張りしたら朝食よ」
「うう、頑張りましゅ……」
「今朝はふわとろオムレツをリクエストしておいたわ」
「わあい、頑張りまっす!」
メニューを教えると途端にイキイキ、キビキビと動き始めた。
マリエルちゃんの場合、美容より美味しいもののほうが効果あるわね……
着替えてから食堂へ向かうと、すでに皆が席に着いていた。
「おはようございます。遅くなりまして申し訳ございません」
「お、おはようございます……」
「いや、私たちも来たばかりだ。始めてくれ」
私たちが席に着き、お父様が指示を出すと、給仕たちがさっと動き始めた。
寮ではビュッフェ形式にしているから、こんなふうに給仕してもらうのは久しぶりかも。
上げ膳据え膳、いいわぁ……実家最高。
今朝のメニューはふわとろオムレツに野菜たっぷりのコンソメスープとサラダ、そしてクロワッサン。バターとジャムはお好みで。
クロワッサンは料理長が「何か新メニューを!」と言うので、ざっくりとしたレシピだけ伝えておいたのだけど、私がいない間に試作を繰り返して完成させたのだそう。
「クリステア様が戻られた時、いつでも召し上がっていただけるよう頑張りました」
と、料理長が自信満々で言うだけあって、クロワッサンはバターの風味が素晴らしく、サクサクの食感で最高に美味しかった。
完成形を食べていないのに、私の渡したレシピだけでここまで到達する料理長まじすごくないかな……⁉︎
朝食後は町娘風の服装に着替えて、転移部屋へ。
「あら? シンも一緒に行くの?」
転移部屋の前に普段着のシンとミリアがいた。
「おう。あっちの料理長にこっちで書き溜めたレシピと領地で手に入りにくい食材を届けるのと、ついでに買い出しだな」
バステア商会の王都支店で欠品している食材が領地の本店なら在庫があるそうで、転移陣を使うのならついでにとおつかいを頼まれたのだそう。
領地の料理長にレシピを届けるのは王都の料理長に「彼が悔しがる様をとくと観察してきなさい」と言われたそうで……タチ悪っ!
「まあ、お嬢がこっちに来るまでは逆の立場だったからな……」
シンは「しかたねぇだろ」とガリガリと頭を掻いた。
そう言うシンは二人から「お前だけがクリステア様のお気に入りだと思うなよ?」と釘を刺されているそうなんだけど……
シンは前世を思い出すきっかけをくれた恩人だからね。特別枠よ。
転移するメンバーが揃ったので転移部屋の中に移動する。
使用人たちが領地に送る荷物を運び込み終わると、お父様が確認にやってきた。
「皆転移陣に入ったな? では行きは魔石を使って私がが魔力を流し込もう。帰りはノーマンとクリステアの二人でなんとかしなさい」
「「はい」」
お父様が魔石を手に転移陣に魔力を流し込み起動する。
転移陣が光り始めてすぐに目を閉じて待つとお兄様が「さあ、着いたよ」と声をかけてくださった。
「え? もう着いたのですか?」
マリエルちゃんがきょろきょろと辺りを見渡す。
学園内の採取地に移動するのとは違い、王都から遠く離れた領地の館まで一瞬で移動したのだからまあびっくりするよね。
「ええ。さあここから出ましょう」
転移部屋から出て、使用人たちに出迎えられるのもそこそこに用意してもらった簡素な馬車に乗り込む。
ミリアもついて行くといったのだけれど、領地の館の皆のためにお土産を買っていたのを知っているので、輝夜と一緒に留守番してもらうことにした。
シンはさっそく料理長に捕まっていたので、後から単独でバステア商会に向かうことになりそうだ。
料理長の相手、頑張ってね、シン……
……というわけで、街へ繰り出すメンバーは、マリエルちゃんとルビィ、セイと白虎様
と朱雀様、お兄様、黒銀と真白、そして私となった。
シンとミリアがいないので、馬車二台に振り分けるのをやめて一台に乗ることにしたのだけれど、本来全員が馬車一台に乗るには定員オーバー。なので、真白と白虎様には聖獣の姿になってもらい、それぞれ私とセイの膝に乗ってもらうことにした。
『この姿も久しぶりだぜ』
白虎様はぐでんとセイの膝でくつろいでいる。
確かに、学園では人の姿ばかりだったから子虎姿の白虎様は久々かも。
「かっ……かわいい……!」
対面に座るマリエルちゃんがお目目をキラキラさせて白虎様を見つめ、ボソリと呟く。
「こんなふうに弱い姿を晒すのはお前にだけ……そう、お前だから……うん。いい……」
……マリエルさんや? 身内やお友達で妄想を働かせるのはやめなさいとあれほど……
「うふふ、なかなかいいセンいってるんじゃなぁい? 後でゆっくりじっくりそのネタ、聞こうじゃないの」
「ふふ……臨むところです」
……ルビィ、お前もか。
二人の笑い声が「腐腐腐……」と聞こえたのは気のせいだろうか……
馬車は程なくして活気のある街の中に入り、職人街の近くで停まった。
お兄様が御者にお金を渡してしばらく時間を潰すように伝えていた。
御者は嬉しそうにしていたので大目にお小遣いを渡したみたいだ。
お兄様、やることがそつなさ過ぎじゃないかな?
お兄様の年齢でやることじゃないと思うの。
「さあ、クリステア。ガルバノおじさまのところへ行くんだろう?」
「ええ。あ、そうだわ黒銀。冒険者ギルドに行ってオークが不足していないか確認してきてくれるかしら? 他にも不足している素材があれば納品してきてほしいの」
「あいわかった」
黒銀は即座に冒険者ギルドに向かうのを見送ってから冒険者や商人が行き交う職人街にあるガルバノおじさまの店へ向かったのだった。
ガルバノおじさまの店は通りに面した店舗こそこじんまりとしているけれど、奥に鍛冶場と庭付きの住居スペースがある。
本人曰く、武器や武具などは見本だけで、実際に売る物は置かないから店は小さくていいのだそうだ。
ガルバノおじさまは超一流の鍛冶師だから、人を見てその人に合う武器を造るのがモットーで量産はしない人だからね。
以前はおじさまが多めにみてくださっているのをいいことに庭へ転移して裏口から入っていたのだけれど、今日は友人を連れているのでそんな不調法なことはせず、ちゃんとお店から入る。
「おはようございます……あら、いない。ガルバノおじさま、いらっしゃいますかー?」
店の奥へ声をかけるものの、反応がない。
もしかして、まだ寝ているのかもしれない。
気分次第で店を閉めて鍛冶に没頭していることもあれば、前日に飲み過ぎて昼まで寝ていることもあるのだ。今日はどちらだろう。
「ごめんなさい、奥に確認しに行くから、少し待っていてくれるかしら」
マリエルちゃんとセイに待つように伝える。
「あ、はい」
「わかった」
「テア、僕も行こう」
「おれもいく!」
お兄様も真白もガルバノおじさまとは面識があるから大丈夫ね。
三人でカウンターの奥にある鍛冶場へ向かう。
「あら、ここにもいない……」
まだ炉に火は入っておらず、シン……と静まり返っていた。
「ということは、まだ寝てるのかしら……」
起こすのはしのびないけれど、今日は用事があってわざわざ転移陣まで使って来たのだ。
諦めて帰るわけにはいかない。
さらに奥へ進み、住居スペースへ入る。
「うっ……こ、この臭い……」
むせかえる臭いに皆が口元を覆う。
そして、臭いの元へ目を向けると……
「おじさま!」
おじさまが床に倒れていた。
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