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習得しましょう!
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翌日の朝食は簡単にお味噌汁と卵焼きとシャーケンの塩焼きとごはんにした。
シャーケンの塩焼きは以前まとめて焼いておいたのをインベントリに収納していたものだから直前に出すだけで焼き立てが食べられる。
インベントリって本当に便利。
皆が席についてから「いただきます」を合図に食べはじめる。
「そういえば……ねえセイ。セイはインベントリ使えないの?」
「インベ……?」
「インベントリ。空間収納だな」
「ああ、クリステア嬢がよく使ってるあれか」
昨日の採取で、薬草が少し萎れてしまっていたのが気になっていたので聞いてみたのだけど、この反応を見るに習得していないようだ。
「空間収納は使える者が少ないと聞いたが……」
「あ、私使えますよ」
「当然ワタシも使えるわよ」
マリエルちゃんが手を上げ、ルビィが飾り切りをした野菜スティックを上げながらそれに続いた。
彼女は私の作った和食をストックしておきたいがためにインベントリを習得したからね……
「ルビィ殿はともかく、マリエル嬢も使えるのか⁉︎ ああ……だから昨日採取した薬草の鮮度がよかったのか。てっきりアリシア嬢と同じようにマジックバッグを持っているのだとばかり……」
「いえいえ、マジックバッグなんて高級品、私なんかが持てませんよ。それっぽく普通のバッグから出し入れしてただけです」
「そうだったのか。……ということは」
セイはちら、と白虎様や黒銀たちを見る。
ああ、聖獣の皆はインベントリ使えるよね。
「俺だけか、空間収納を使えないのは」
セイが肩を落としながらお茶碗をテーブルに置いた。
本来インベントリが使えるほうが特殊なんだけど、自分ひとりだけ使えないっていう状況はなんだかさみしいよね。
なんとなくその気持ちはわかる。
「まーお前もそろそろ覚えてもいい頃かもな! インベントリがあれば武器も仕込み放題だし、なんなら転移も覚えとくかぁ?」
白虎様がセイの肩を叩きながら物騒なことを言った。武器って……
「おいトラ、俺は暗器使いになるつもりはないぞ? 護身程度なら今でも仕込んでいるし、それ以上は必要ないだろう?」
えっ?
「セイさん、武器を携帯しているんですか? 学園内では私闘は禁止されてるし、武器の携帯も規制されてるはずですけど……」
マリエルがオドオドしながらセイに注意した。
そうなのだ。学園に在籍している大半は貴族の子どもだから、武器を使っての攻撃など大事に発展しかねないので基本的に所持すら許可が必要だ。
魔法にしても、それで相手を傷つけるようなことがあれば停学や場合によっては放校……退学だってあり得るのだ。
「ああ、武器と言っても護身用だよ」
そう言って見せてくれたのは、髪を結ぶ紐にピアノ線のような鋼糸を編み込んだものや、靴先と踵に飛び出す刃物や針を仕込んであったり……いや立派に暗器使いですやん。
「す、すごいですね……」
マリエルちゃんはオタク&レイヤー心がくすぐられるのか、それらをまじまじと見ていた。
「暗殺に備えておこうと思えばこれくらいは……」
「暗殺⁉︎」
「あ、いや、騎士コースを目指すのならそれくらいの心構えでいたほうがいいかなと」
マリエルちゃんはセイがヤハトゥールの現帝のご落胤かつ次期帝候補で、自分の息子を帝にしたい継母に命を狙われているなんて事情、知らないからね。
仲間ばかりだからとうっかり話しちゃったセイは慌てて誤魔化していた。
そっか、学園にいるから安心って訳じゃないのか……特別寮内や、私たちと一緒の時はそんなそぶりを見せないから、セイが未だに警戒してたとは思ってなかったよ……
「そうだな、空間収納があればもっと大きな武器……刀も隠し持てるな……よし、やってみるか」
「おお、んじゃ今日の放課後から特訓するか!」
「ああ、トラ。協力してくれるか」
「まかせとけ!」
いやあの、武器の所持は禁止だし、脳筋指導の白虎様は、セイの指導者には向かないんじゃないかなって思うんですけど……?
その夕方、特訓開始ということで応援の意味も込めてセイと白虎様は夕食の準備が免除になったのだけど、夕食ができた頃に食堂にやってきたセイは見るからにぐったりしていた。
「……トラの説明がさっぱりわからない」
でしょうね! そんなことだと思ったよ!
「は? なんでだよ。収納したいモンをガッとつかんでここじゃない空間に押し込むだけだし、取り出すのは同じように出したいモンをつかんでそっから引っ張り出すだけだろ? 簡単じゃねーか」
いや全くわかりませんが⁇
「あの、白虎様……その説明では少々わかりにくいのでは……?」
私が助け船を出すと、セイがすがるような目で私を見た。
「だよな⁉︎ クリステア嬢もそう思うよな?」
「ええ、まあ……」
珍しくセイが必死だ。白虎様の説明がアレなのもあるけど、ここじゃない空間って言われても普通わからないわよね。
「そう言われてもなぁ……」
白虎様は頭をガリガリと搔きつつ、渋面を作った。
「ここじゃない空間って、何なんだ? ここにあるものを何処へやるんだ?」
セイの言い分はよくわかる。わかる、けど……
「クリステア嬢やマリエル嬢は一体どこに荷物を収納しているんだ⁉︎ そういうものなのだと思っていたが、いざ自分が習得しようとなると、疑問だらけで……」
はい、キター!
私たちにも答えられないやつ!
私とマリエルちゃんは、前世のオタク知識からなんとなく感覚で習得できたけど、セイはそういうわけにはいかない。
異次元とか、亜空間とか、そういう知識や概念がない人にそれを想像できるように説明するのはすごく難しいのだ。
「ええと、あの……」
「あまり難しく考えないほうが……」
私たちがどう説明したものかと戸惑っていると、セイががっくりと肩を落とした。
「考えるなと言っても、仕組みがわからないものを習得できるわけがないだろう……」
あ、さらに落ち込んだ。
確かに「考えるな! 感じろ!」って無茶振りされてるようなもんだよね。
「ええと……このマジックボックスで説明しますね」
え、マリエルちゃん?
「この箱はインベントリと同じような効果が付与されてますよね? これ、中身はどこにあると思いますか?」
「え……? 中身は……別の場所? あれ? そういえばどこにあるんだ?」
セイガ コンラン シテイル!
ワタシモ コンワク シテイル!
マリエルちゃん? 大丈夫?
「私は、見えないけれど、すぐ側にあると思っています。そしてそれは時を止めたままそこにあるんです。この箱の向こうには見えないけれど大きな空間があって、そこにある棚に収まって、時を止めて取り出されるその時までそこにただあるんです」
「時を止めて、見えないけれど、ただ、そこに……」
「インベントリは、マジックバッグが自分専用の見えないポケットになったものと私は考えています。見えないポケット中は大きな空間で、その中に収納するんです」
マリエルちゃああぁん!
もしかしてそれ、某ポケットのことを言ってる⁉︎
「ポケット……」
「はい。はじめは小さなポケットでもいいんです。使っているうちに中はどんどん大きくなります」
「小さなポケットの中が、大きく……」
「はい」
「……わかったような、わからないような……でも、ありがとう。もう少し頑張ってみるよ」
「はい、頑張ってください!」
セイは気を取り直したようで、腹が減ってはなんとやらとばかりに食事を再開し、おかわりまでしていた。
よかった。急がなくてもいいから、いずれ習得できたらいいね。
翌朝。
「おはよう! マリエル嬢ありがとう! あの後特訓してなんとか習得できたよ! ほら」
晴れ晴れとした様子のセイがパッと日本刀……ヤハトゥール刀? を取り出した。
えっ、あの説明で習得できたの⁉︎
セイも大概チートじゃない⁇
……ていうかセイ、武器の携帯は禁止だってば!
しまって……じゃない、部屋に置いてきなさーい!
シャーケンの塩焼きは以前まとめて焼いておいたのをインベントリに収納していたものだから直前に出すだけで焼き立てが食べられる。
インベントリって本当に便利。
皆が席についてから「いただきます」を合図に食べはじめる。
「そういえば……ねえセイ。セイはインベントリ使えないの?」
「インベ……?」
「インベントリ。空間収納だな」
「ああ、クリステア嬢がよく使ってるあれか」
昨日の採取で、薬草が少し萎れてしまっていたのが気になっていたので聞いてみたのだけど、この反応を見るに習得していないようだ。
「空間収納は使える者が少ないと聞いたが……」
「あ、私使えますよ」
「当然ワタシも使えるわよ」
マリエルちゃんが手を上げ、ルビィが飾り切りをした野菜スティックを上げながらそれに続いた。
彼女は私の作った和食をストックしておきたいがためにインベントリを習得したからね……
「ルビィ殿はともかく、マリエル嬢も使えるのか⁉︎ ああ……だから昨日採取した薬草の鮮度がよかったのか。てっきりアリシア嬢と同じようにマジックバッグを持っているのだとばかり……」
「いえいえ、マジックバッグなんて高級品、私なんかが持てませんよ。それっぽく普通のバッグから出し入れしてただけです」
「そうだったのか。……ということは」
セイはちら、と白虎様や黒銀たちを見る。
ああ、聖獣の皆はインベントリ使えるよね。
「俺だけか、空間収納を使えないのは」
セイが肩を落としながらお茶碗をテーブルに置いた。
本来インベントリが使えるほうが特殊なんだけど、自分ひとりだけ使えないっていう状況はなんだかさみしいよね。
なんとなくその気持ちはわかる。
「まーお前もそろそろ覚えてもいい頃かもな! インベントリがあれば武器も仕込み放題だし、なんなら転移も覚えとくかぁ?」
白虎様がセイの肩を叩きながら物騒なことを言った。武器って……
「おいトラ、俺は暗器使いになるつもりはないぞ? 護身程度なら今でも仕込んでいるし、それ以上は必要ないだろう?」
えっ?
「セイさん、武器を携帯しているんですか? 学園内では私闘は禁止されてるし、武器の携帯も規制されてるはずですけど……」
マリエルがオドオドしながらセイに注意した。
そうなのだ。学園に在籍している大半は貴族の子どもだから、武器を使っての攻撃など大事に発展しかねないので基本的に所持すら許可が必要だ。
魔法にしても、それで相手を傷つけるようなことがあれば停学や場合によっては放校……退学だってあり得るのだ。
「ああ、武器と言っても護身用だよ」
そう言って見せてくれたのは、髪を結ぶ紐にピアノ線のような鋼糸を編み込んだものや、靴先と踵に飛び出す刃物や針を仕込んであったり……いや立派に暗器使いですやん。
「す、すごいですね……」
マリエルちゃんはオタク&レイヤー心がくすぐられるのか、それらをまじまじと見ていた。
「暗殺に備えておこうと思えばこれくらいは……」
「暗殺⁉︎」
「あ、いや、騎士コースを目指すのならそれくらいの心構えでいたほうがいいかなと」
マリエルちゃんはセイがヤハトゥールの現帝のご落胤かつ次期帝候補で、自分の息子を帝にしたい継母に命を狙われているなんて事情、知らないからね。
仲間ばかりだからとうっかり話しちゃったセイは慌てて誤魔化していた。
そっか、学園にいるから安心って訳じゃないのか……特別寮内や、私たちと一緒の時はそんなそぶりを見せないから、セイが未だに警戒してたとは思ってなかったよ……
「そうだな、空間収納があればもっと大きな武器……刀も隠し持てるな……よし、やってみるか」
「おお、んじゃ今日の放課後から特訓するか!」
「ああ、トラ。協力してくれるか」
「まかせとけ!」
いやあの、武器の所持は禁止だし、脳筋指導の白虎様は、セイの指導者には向かないんじゃないかなって思うんですけど……?
その夕方、特訓開始ということで応援の意味も込めてセイと白虎様は夕食の準備が免除になったのだけど、夕食ができた頃に食堂にやってきたセイは見るからにぐったりしていた。
「……トラの説明がさっぱりわからない」
でしょうね! そんなことだと思ったよ!
「は? なんでだよ。収納したいモンをガッとつかんでここじゃない空間に押し込むだけだし、取り出すのは同じように出したいモンをつかんでそっから引っ張り出すだけだろ? 簡単じゃねーか」
いや全くわかりませんが⁇
「あの、白虎様……その説明では少々わかりにくいのでは……?」
私が助け船を出すと、セイがすがるような目で私を見た。
「だよな⁉︎ クリステア嬢もそう思うよな?」
「ええ、まあ……」
珍しくセイが必死だ。白虎様の説明がアレなのもあるけど、ここじゃない空間って言われても普通わからないわよね。
「そう言われてもなぁ……」
白虎様は頭をガリガリと搔きつつ、渋面を作った。
「ここじゃない空間って、何なんだ? ここにあるものを何処へやるんだ?」
セイの言い分はよくわかる。わかる、けど……
「クリステア嬢やマリエル嬢は一体どこに荷物を収納しているんだ⁉︎ そういうものなのだと思っていたが、いざ自分が習得しようとなると、疑問だらけで……」
はい、キター!
私たちにも答えられないやつ!
私とマリエルちゃんは、前世のオタク知識からなんとなく感覚で習得できたけど、セイはそういうわけにはいかない。
異次元とか、亜空間とか、そういう知識や概念がない人にそれを想像できるように説明するのはすごく難しいのだ。
「ええと、あの……」
「あまり難しく考えないほうが……」
私たちがどう説明したものかと戸惑っていると、セイががっくりと肩を落とした。
「考えるなと言っても、仕組みがわからないものを習得できるわけがないだろう……」
あ、さらに落ち込んだ。
確かに「考えるな! 感じろ!」って無茶振りされてるようなもんだよね。
「ええと……このマジックボックスで説明しますね」
え、マリエルちゃん?
「この箱はインベントリと同じような効果が付与されてますよね? これ、中身はどこにあると思いますか?」
「え……? 中身は……別の場所? あれ? そういえばどこにあるんだ?」
セイガ コンラン シテイル!
ワタシモ コンワク シテイル!
マリエルちゃん? 大丈夫?
「私は、見えないけれど、すぐ側にあると思っています。そしてそれは時を止めたままそこにあるんです。この箱の向こうには見えないけれど大きな空間があって、そこにある棚に収まって、時を止めて取り出されるその時までそこにただあるんです」
「時を止めて、見えないけれど、ただ、そこに……」
「インベントリは、マジックバッグが自分専用の見えないポケットになったものと私は考えています。見えないポケット中は大きな空間で、その中に収納するんです」
マリエルちゃああぁん!
もしかしてそれ、某ポケットのことを言ってる⁉︎
「ポケット……」
「はい。はじめは小さなポケットでもいいんです。使っているうちに中はどんどん大きくなります」
「小さなポケットの中が、大きく……」
「はい」
「……わかったような、わからないような……でも、ありがとう。もう少し頑張ってみるよ」
「はい、頑張ってください!」
セイは気を取り直したようで、腹が減ってはなんとやらとばかりに食事を再開し、おかわりまでしていた。
よかった。急がなくてもいいから、いずれ習得できたらいいね。
翌朝。
「おはよう! マリエル嬢ありがとう! あの後特訓してなんとか習得できたよ! ほら」
晴れ晴れとした様子のセイがパッと日本刀……ヤハトゥール刀? を取り出した。
えっ、あの説明で習得できたの⁉︎
セイも大概チートじゃない⁇
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