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みんなで採取
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「……あった! ありました!」
マリエルちゃんが嬉しそうに薬草を手に立ち上がった。
「やったじゃない! その調子よ、マリエル」
ルビィがうんうんと頷きながらマリエルちゃんを褒める。
「えへへ、ルビィのお陰です」
ルビィは自分が探し当てたのを教えるだけではマリエルちゃんのためにならないからと、ある程度の範囲まで絞り込んでからマリエルちゃんに探させる、というのを繰り返し、慣れてきてからは範囲を広げていき難易度を上げていった。
そのうちマリエルちゃんも薬草が生えている場所の特徴なんかを掴みはじめ、見つけるのも早くなっていった。ルビィもマリエルちゃんもすごい。
ヘクター様はその様子をうんうんと微笑ましそうに見つめ、たまにお節介を焼いてフラフラと近づいて答えを教えそうになるのをお兄様が襟元を掴んで引き戻す、というのを繰り返していた。
お兄様、私たちの監督というより、ヘクター様のお目付役みたいになってますやん……
私はというと、領地の森とは多少勝手が違うものの、薬草探しには慣れているためすでに予定数量分の採取は済ませているのだけど……
「えっとー……これだ!」
「違います。それは雑草ですよ、エイディー様」
「じゃ、じゃあこれ!」
「……それも雑草です。その隣が薬草です」
「これか! よし! 見つけたぞー!」
いや自分で見つけきれてないから。
こんな調子で今はエイディー様のサポートに回っていた。
だって、はじめにわさわさと掴んでいたのが全て雑草だったのを見ちゃうと、いつか毒草を掴んでかぶれさせたりしそうで、放っておくのは危なっかしすぎるんだもの……
よくこれで試験に合格したなぁ……と思ったけれど、聞くところによると騎士コースで密かに出回っている過去問から山を張ってそれ以外は勉強しなかったらしい。
それで試験に臨んで山が当たり高得点とか……エイディー様、強運の持ち主か。
「クリステア嬢、これは大丈夫だろうか」
「ええ、合ってますね」
「ありがとう」
セイは自力で探し当て、自信がないものは私に念のため確認する程度だ。
もう少ししたら確認なしでも大丈夫だろう。
「いやー、ノーマンの妹君は優秀だな! お前の出る幕がないじゃないか、なあ?」
ヘクター様がお兄様の肩に腕を置いてもたれかかりつつ揶揄うように言った。
お兄様は、ヘクター様のお世話で大変そうですが……?
「クリステアは領地でも採取をしていたから慣れているんだ。僕より詳しいくらいさ」
「へー、すごいな! 将来は薬師志望とか?」
「え? いえ、そういうわけでは……」
ヘクター様に将来の進路希望を問われたけれど、言葉を濁しつつ笑って誤魔化す。
だって、食材探しのために領地の森で採取していた結果、薬草にも詳しくなったってだけのことだし……
私が食材に使っているものの中にはこの世界では薬草のカテゴリに入るものもあるので、試験で名前を書き間違えないように覚えるほうが寧ろ大変だったくらいだ。
薬師とか、無理無理。
「ふーん、エリスフィード家はエリート揃いって噂は本当なんだな」
え、何それ。そんな噂があるの⁉︎ 初耳なんだけど?
お父様やお母様、そしてお兄様は確かにエリートなんだろうけど、私はどちらかっていうと家族の中じゃ食い気のために行動してばっかの落ちこぼれだと思うから、私は対象外でお願いします。いやまじで。
「ああ、クリステアは可愛いだけじゃなくて、優秀なんだ」
「へー! すごいな!」
やめて、変にハードル上げるのは勘弁してください、お兄様! いたたまれない!
ヘクター様も、エイディー様も「すげー」と、キラキラとした目で見つめるのはやめて!
ヘクター様たちの眼差しに耐えきれず目を逸らした先に、アリシア様がいた。
アリシア様は黙々と薬草を探し、特徴を書いたメモと照らし合わせ、根を残して丁寧に採取しては専用のポーチに収納していた。
こうしてよくよく観察すると、アリシア様って普段の態度は鼻持ちならない感じだけど、すっごく真面目なんだよねぇ。
魔力量は多めで、試験はいつも高得点だし。
エリートってアリシア様みたいな人を言うのよね、きっと。
私の場合、前世の知識も応用できる分、チートなだけだもん。
レイモンド殿下のことがなければ、アリシア様とはクラスメイトとして仲良くしてたかもしれないのになぁ……惜しい。実に惜しい。
未だに私が殿下の婚約者候補として有力だと誤解されたままだから、いい加減その誤解も解きたいのだけど、取り付く島がないというか……
「……何か御用ですの?」
アリシア様は私が見つめていたのに気づいた
ようで、私のほうをチラリと見ることもなく問いかけてきた。
「えっ、あの、いえその……ええと、その……あっ! それ、パパリア草に似てますけど、ババリス草って言って、間違えて入れると逆の効能になるやつです!」
「えっ⁉︎」
「本当です。葉の裏が白いのがパパリア草で、うっすらと青いのがババリス草なのが見分けのコツです」
以前、領地の森で採取していた時に黒銀から教わったから間違いない。
アリシア様は私の説明を聞いて葉の裏をすぐさま確認し、青いと分かるとハァ、とため息を吐いて葉から手を離した。
「……教えていただいて、ありがとうございますわ」
「……! いえ! お役に立ててよかったですわ」
おお、お礼言われちゃった。
失礼な話だけど「余計なお世話ですわ!」とか言われるのかと思ってたから意外だった。
まあ、その後は悔しそうな顔で私が説明したことをメモに追記してるけど……はは。
根は悪い子じゃなさそうなんだよねぇ。
「クリステアさーん! 向こうに薬草がいっぱいあるみたいですからそっちに行ってみませんか?」
マリエルちゃんがルビィから情報を得て、移動しないかと持ちかけてきた。
薬草の根さえ残っていれば、癒しの魔法で翌日には復活するものの、同じ場所で薬草を刈り尽くすのは採取の森のルール違反になるので、ある程度採取したら他の場所に移動しなくてはならない。
学園を卒業してからも資源を絶やさないためにも守るべきルールというか、採取するもののマナーとして学園では徹底されているそうだ。
「確かに、このあたりの採取はこれくらいにして、移動したほうが良さそうだ」
新入生は採取に夢中になってうっかり刈り尽くしてしまいがちだから、監督役は採取を切り上げるタイミングも考えて指導するのよね。監督役って大変だわ。
「そうすっか。おーい皆、集まって移動するぞー。お、そろそろ昼だな。よし、移動先でメシにするか」
私たちはお兄様とヘクター様に呼び集められ、ルビィの案内で次の採取場に向かったのだった。
マリエルちゃんが嬉しそうに薬草を手に立ち上がった。
「やったじゃない! その調子よ、マリエル」
ルビィがうんうんと頷きながらマリエルちゃんを褒める。
「えへへ、ルビィのお陰です」
ルビィは自分が探し当てたのを教えるだけではマリエルちゃんのためにならないからと、ある程度の範囲まで絞り込んでからマリエルちゃんに探させる、というのを繰り返し、慣れてきてからは範囲を広げていき難易度を上げていった。
そのうちマリエルちゃんも薬草が生えている場所の特徴なんかを掴みはじめ、見つけるのも早くなっていった。ルビィもマリエルちゃんもすごい。
ヘクター様はその様子をうんうんと微笑ましそうに見つめ、たまにお節介を焼いてフラフラと近づいて答えを教えそうになるのをお兄様が襟元を掴んで引き戻す、というのを繰り返していた。
お兄様、私たちの監督というより、ヘクター様のお目付役みたいになってますやん……
私はというと、領地の森とは多少勝手が違うものの、薬草探しには慣れているためすでに予定数量分の採取は済ませているのだけど……
「えっとー……これだ!」
「違います。それは雑草ですよ、エイディー様」
「じゃ、じゃあこれ!」
「……それも雑草です。その隣が薬草です」
「これか! よし! 見つけたぞー!」
いや自分で見つけきれてないから。
こんな調子で今はエイディー様のサポートに回っていた。
だって、はじめにわさわさと掴んでいたのが全て雑草だったのを見ちゃうと、いつか毒草を掴んでかぶれさせたりしそうで、放っておくのは危なっかしすぎるんだもの……
よくこれで試験に合格したなぁ……と思ったけれど、聞くところによると騎士コースで密かに出回っている過去問から山を張ってそれ以外は勉強しなかったらしい。
それで試験に臨んで山が当たり高得点とか……エイディー様、強運の持ち主か。
「クリステア嬢、これは大丈夫だろうか」
「ええ、合ってますね」
「ありがとう」
セイは自力で探し当て、自信がないものは私に念のため確認する程度だ。
もう少ししたら確認なしでも大丈夫だろう。
「いやー、ノーマンの妹君は優秀だな! お前の出る幕がないじゃないか、なあ?」
ヘクター様がお兄様の肩に腕を置いてもたれかかりつつ揶揄うように言った。
お兄様は、ヘクター様のお世話で大変そうですが……?
「クリステアは領地でも採取をしていたから慣れているんだ。僕より詳しいくらいさ」
「へー、すごいな! 将来は薬師志望とか?」
「え? いえ、そういうわけでは……」
ヘクター様に将来の進路希望を問われたけれど、言葉を濁しつつ笑って誤魔化す。
だって、食材探しのために領地の森で採取していた結果、薬草にも詳しくなったってだけのことだし……
私が食材に使っているものの中にはこの世界では薬草のカテゴリに入るものもあるので、試験で名前を書き間違えないように覚えるほうが寧ろ大変だったくらいだ。
薬師とか、無理無理。
「ふーん、エリスフィード家はエリート揃いって噂は本当なんだな」
え、何それ。そんな噂があるの⁉︎ 初耳なんだけど?
お父様やお母様、そしてお兄様は確かにエリートなんだろうけど、私はどちらかっていうと家族の中じゃ食い気のために行動してばっかの落ちこぼれだと思うから、私は対象外でお願いします。いやまじで。
「ああ、クリステアは可愛いだけじゃなくて、優秀なんだ」
「へー! すごいな!」
やめて、変にハードル上げるのは勘弁してください、お兄様! いたたまれない!
ヘクター様も、エイディー様も「すげー」と、キラキラとした目で見つめるのはやめて!
ヘクター様たちの眼差しに耐えきれず目を逸らした先に、アリシア様がいた。
アリシア様は黙々と薬草を探し、特徴を書いたメモと照らし合わせ、根を残して丁寧に採取しては専用のポーチに収納していた。
こうしてよくよく観察すると、アリシア様って普段の態度は鼻持ちならない感じだけど、すっごく真面目なんだよねぇ。
魔力量は多めで、試験はいつも高得点だし。
エリートってアリシア様みたいな人を言うのよね、きっと。
私の場合、前世の知識も応用できる分、チートなだけだもん。
レイモンド殿下のことがなければ、アリシア様とはクラスメイトとして仲良くしてたかもしれないのになぁ……惜しい。実に惜しい。
未だに私が殿下の婚約者候補として有力だと誤解されたままだから、いい加減その誤解も解きたいのだけど、取り付く島がないというか……
「……何か御用ですの?」
アリシア様は私が見つめていたのに気づいた
ようで、私のほうをチラリと見ることもなく問いかけてきた。
「えっ、あの、いえその……ええと、その……あっ! それ、パパリア草に似てますけど、ババリス草って言って、間違えて入れると逆の効能になるやつです!」
「えっ⁉︎」
「本当です。葉の裏が白いのがパパリア草で、うっすらと青いのがババリス草なのが見分けのコツです」
以前、領地の森で採取していた時に黒銀から教わったから間違いない。
アリシア様は私の説明を聞いて葉の裏をすぐさま確認し、青いと分かるとハァ、とため息を吐いて葉から手を離した。
「……教えていただいて、ありがとうございますわ」
「……! いえ! お役に立ててよかったですわ」
おお、お礼言われちゃった。
失礼な話だけど「余計なお世話ですわ!」とか言われるのかと思ってたから意外だった。
まあ、その後は悔しそうな顔で私が説明したことをメモに追記してるけど……はは。
根は悪い子じゃなさそうなんだよねぇ。
「クリステアさーん! 向こうに薬草がいっぱいあるみたいですからそっちに行ってみませんか?」
マリエルちゃんがルビィから情報を得て、移動しないかと持ちかけてきた。
薬草の根さえ残っていれば、癒しの魔法で翌日には復活するものの、同じ場所で薬草を刈り尽くすのは採取の森のルール違反になるので、ある程度採取したら他の場所に移動しなくてはならない。
学園を卒業してからも資源を絶やさないためにも守るべきルールというか、採取するもののマナーとして学園では徹底されているそうだ。
「確かに、このあたりの採取はこれくらいにして、移動したほうが良さそうだ」
新入生は採取に夢中になってうっかり刈り尽くしてしまいがちだから、監督役は採取を切り上げるタイミングも考えて指導するのよね。監督役って大変だわ。
「そうすっか。おーい皆、集まって移動するぞー。お、そろそろ昼だな。よし、移動先でメシにするか」
私たちはお兄様とヘクター様に呼び集められ、ルビィの案内で次の採取場に向かったのだった。
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