250 / 373
連載
二人?の過去
しおりを挟む
「はー、美味しかったぁ」
マリエルちゃんが皿洗いをしながら満足そうに言った。
「からあげやポテトサラダを何度もおかわりしていたものね。皆びっくりしてたわよ」
私はマリエルちゃんから皿を受け取っては拭き上げていった。
黒銀や真白は何回も一緒に食事をしたことがあるから驚きはしなかったけれど、白虎様たちは自分の分がなくなるんじゃないかとひやひやしていたみたいだもの。
「あはは……久々のクリステアさんのごはんがいただけるのが嬉しくて、つい……」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、これからは毎日のことなんだし」
「そう! これからは毎日のようにクリステアさんのごはんが……ぐふふ」
マリエルちゃん、キャラがブレてきてないかしら? 美少女がそんな笑い方したら台無しじゃないの。
「そうねぇ。マリエルのサラダの盛り付けは素敵だったし、ポテトサラダだったかしら? あれも美味しかったわぁ」
ルビィが機嫌良さそうに拭き終えたお皿を転移魔法で食器棚に片付ける。器用ね……
「ルビィ、ポテトサラダはマヨが決め手なんですよ! すなわちマヨが至高!」
皿を洗い終えたマリエルちゃんが濡れた手を拭っていた手拭いをグッと握りしめ、力説した。
いやどんだけマヨ推しなの。
「ルビィ、マヨネーズには卵が使われていたけれど、大丈夫でした?」
ルビィは基本野菜しか食べないと言っていたので気になった。
美味しそうに全部平らげていたから大丈夫だとは思うけれど。
「ああ、あれくらいなら全然気にならないし、美味しかったわよ? むしろ、マリエルの言う通りあれはマヨネーズがないと美味しくないんじゃないの?」
「ええまあ……」
「じゃあいいじゃない。ワタシ、美味しくないものはちゃんと美味しくないって言うから平気よ」
マッシュポテトと他の野菜をあわせた時点で
ルビィ用に取り分けるべきだったかなと反省していたところだったから少し安心した。
……美味しくないって言われないように気をつけよう。私が平気じゃないから。
「もう! ルビィったら、クリステアさんの料理が美味しくないわけがないじゃないですか! そんなこと言うなら私の料理を食べさせますからね! ……うぅ、どんな罰ゲーム……!」
……マリエルちゃん、自分で言って傷つくのはやめよう?
「よしっと、これで片付けるお皿は最後かしら?」
ルビィはお皿に触れてもいないのに、パンパンと手……じゃない、前足を叩いた。
「ええ。お手伝いありがとう。それで、あの……ルビィに聞きたいことがあって」
「あら、ワタシに? 何かしら?」
ルビィがこてん、と首を傾げる。
可愛いー! ……っと、いけない。つい。
「輝夜のことなんですけど」
気を取り直してコホンと咳払いをしてから切り出した。
「ああ、あの間抜けな猫のこと?」
ルビィったら、ナチュラルに毒舌を吐くわね……
「間抜けかどうかはともかく。輝夜とは知り合いなんですか?」
私が質問すると、ルビィは一瞬きょとんとした様子を見せたものの、すぐにお腹を抱えて笑い出した。
「アッハハハ! あー、可笑しい。やぁねぇ、知り合いとかそんなんじゃないわよ。ただ、以前あの姿になる前に私を狙って襲いかかってきたから返り討ちにしてやったってだけの話よ」
ケタケタとひとしきり笑ったあと、ようやく落ち着いた様子のルビィがふふん、と鼻を鳴らしながら答えた。
「えっ、輝夜がルビィを?」
以前の姿というと、私と出会う前の話だけど何だか申し訳ない気持ちになる。
「ええそう。私はカーバンクルだから、人からも魔獣からも狙われやすいのよねぇ」
ルビィの説明によると、十年ほど前に契約主が亡くなってからしばらくの間はあてもなく国中を旅して回っていたそう。
そして数年前、旅の途中で魔獣姿の輝夜と遭遇し、ルビィのことを食べようと襲いかかってきたところを、魔法で翻弄させまくった挙句、輝夜の縄張りから遠く離れた地に強制的に転移させたんですって。
「うふふっ、転移先は魔獣だらけで、いつもどこかしらで命を狙われるような場所だったから命からがらに逃げ出したんじゃないのかしら? よく生きてたわねって思ったくらいよ~」
え、えげつな……
「ワタシの魔石を食べて力をつけようと思ったんでしょうけど、カーバンクルを舐めんじゃないわよってのよねぇ」
オーホホホと高笑いするルビィに私とマリエルちゃんは思わず顔をひきつらせた。
ルビィの話によると、時期的にどうやら私と魔獣契約を結ぶ少し前の出来事だったみたいで、輝夜が魔獣だらけの場所からどうにか逃げ切ったところに、お兄様やレイモンド王太子殿下が遠乗りにやってきた。そして、これ幸いと二人に襲いかかって食べようとしたものの、二人に持たせたお弁当にこもった私の魔力の気配に惹かれて、お兄様を泳がせて私の元へやってきた、と。
あの時の輝夜は魔力的にもかなりギリギリだったみたいだから、お兄様やレイモンド王太子殿下が襲われなかったのは本当に運が良かったんだわ。
私の魔力が美味しそうだったからよかったのね。ちょっと複雑だけど。
「ええと……輝夜がご迷惑をおかけしたようで……」
「あら、貴女と契約する前の話なんだから、貴女が気にすることなんてないのよ。それにワタシも暇つぶしだと思ってつい遊んじゃったしぃ?」
じゃあね~と部屋に戻るルビィとマリエルちゃんに挨拶をしてから私も自室へ向かう。
ルビィに出会ってからの輝夜って散々だったみたい。
明日の朝ごはんにはおかかを追加してあげようと決めた私なのだった。
マリエルちゃんが皿洗いをしながら満足そうに言った。
「からあげやポテトサラダを何度もおかわりしていたものね。皆びっくりしてたわよ」
私はマリエルちゃんから皿を受け取っては拭き上げていった。
黒銀や真白は何回も一緒に食事をしたことがあるから驚きはしなかったけれど、白虎様たちは自分の分がなくなるんじゃないかとひやひやしていたみたいだもの。
「あはは……久々のクリステアさんのごはんがいただけるのが嬉しくて、つい……」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、これからは毎日のことなんだし」
「そう! これからは毎日のようにクリステアさんのごはんが……ぐふふ」
マリエルちゃん、キャラがブレてきてないかしら? 美少女がそんな笑い方したら台無しじゃないの。
「そうねぇ。マリエルのサラダの盛り付けは素敵だったし、ポテトサラダだったかしら? あれも美味しかったわぁ」
ルビィが機嫌良さそうに拭き終えたお皿を転移魔法で食器棚に片付ける。器用ね……
「ルビィ、ポテトサラダはマヨが決め手なんですよ! すなわちマヨが至高!」
皿を洗い終えたマリエルちゃんが濡れた手を拭っていた手拭いをグッと握りしめ、力説した。
いやどんだけマヨ推しなの。
「ルビィ、マヨネーズには卵が使われていたけれど、大丈夫でした?」
ルビィは基本野菜しか食べないと言っていたので気になった。
美味しそうに全部平らげていたから大丈夫だとは思うけれど。
「ああ、あれくらいなら全然気にならないし、美味しかったわよ? むしろ、マリエルの言う通りあれはマヨネーズがないと美味しくないんじゃないの?」
「ええまあ……」
「じゃあいいじゃない。ワタシ、美味しくないものはちゃんと美味しくないって言うから平気よ」
マッシュポテトと他の野菜をあわせた時点で
ルビィ用に取り分けるべきだったかなと反省していたところだったから少し安心した。
……美味しくないって言われないように気をつけよう。私が平気じゃないから。
「もう! ルビィったら、クリステアさんの料理が美味しくないわけがないじゃないですか! そんなこと言うなら私の料理を食べさせますからね! ……うぅ、どんな罰ゲーム……!」
……マリエルちゃん、自分で言って傷つくのはやめよう?
「よしっと、これで片付けるお皿は最後かしら?」
ルビィはお皿に触れてもいないのに、パンパンと手……じゃない、前足を叩いた。
「ええ。お手伝いありがとう。それで、あの……ルビィに聞きたいことがあって」
「あら、ワタシに? 何かしら?」
ルビィがこてん、と首を傾げる。
可愛いー! ……っと、いけない。つい。
「輝夜のことなんですけど」
気を取り直してコホンと咳払いをしてから切り出した。
「ああ、あの間抜けな猫のこと?」
ルビィったら、ナチュラルに毒舌を吐くわね……
「間抜けかどうかはともかく。輝夜とは知り合いなんですか?」
私が質問すると、ルビィは一瞬きょとんとした様子を見せたものの、すぐにお腹を抱えて笑い出した。
「アッハハハ! あー、可笑しい。やぁねぇ、知り合いとかそんなんじゃないわよ。ただ、以前あの姿になる前に私を狙って襲いかかってきたから返り討ちにしてやったってだけの話よ」
ケタケタとひとしきり笑ったあと、ようやく落ち着いた様子のルビィがふふん、と鼻を鳴らしながら答えた。
「えっ、輝夜がルビィを?」
以前の姿というと、私と出会う前の話だけど何だか申し訳ない気持ちになる。
「ええそう。私はカーバンクルだから、人からも魔獣からも狙われやすいのよねぇ」
ルビィの説明によると、十年ほど前に契約主が亡くなってからしばらくの間はあてもなく国中を旅して回っていたそう。
そして数年前、旅の途中で魔獣姿の輝夜と遭遇し、ルビィのことを食べようと襲いかかってきたところを、魔法で翻弄させまくった挙句、輝夜の縄張りから遠く離れた地に強制的に転移させたんですって。
「うふふっ、転移先は魔獣だらけで、いつもどこかしらで命を狙われるような場所だったから命からがらに逃げ出したんじゃないのかしら? よく生きてたわねって思ったくらいよ~」
え、えげつな……
「ワタシの魔石を食べて力をつけようと思ったんでしょうけど、カーバンクルを舐めんじゃないわよってのよねぇ」
オーホホホと高笑いするルビィに私とマリエルちゃんは思わず顔をひきつらせた。
ルビィの話によると、時期的にどうやら私と魔獣契約を結ぶ少し前の出来事だったみたいで、輝夜が魔獣だらけの場所からどうにか逃げ切ったところに、お兄様やレイモンド王太子殿下が遠乗りにやってきた。そして、これ幸いと二人に襲いかかって食べようとしたものの、二人に持たせたお弁当にこもった私の魔力の気配に惹かれて、お兄様を泳がせて私の元へやってきた、と。
あの時の輝夜は魔力的にもかなりギリギリだったみたいだから、お兄様やレイモンド王太子殿下が襲われなかったのは本当に運が良かったんだわ。
私の魔力が美味しそうだったからよかったのね。ちょっと複雑だけど。
「ええと……輝夜がご迷惑をおかけしたようで……」
「あら、貴女と契約する前の話なんだから、貴女が気にすることなんてないのよ。それにワタシも暇つぶしだと思ってつい遊んじゃったしぃ?」
じゃあね~と部屋に戻るルビィとマリエルちゃんに挨拶をしてから私も自室へ向かう。
ルビィに出会ってからの輝夜って散々だったみたい。
明日の朝ごはんにはおかかを追加してあげようと決めた私なのだった。
99
お気に入りに追加
13,937
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。