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【王太子視点】この出会いは必然か1

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俺はドリスタン王国の王太子、レイモンド・アーサー・ドリスタン。13歳だ。
現在は王都にある魔法学園に在学しているため、王宮の近くではあるが、入学時の10歳から寮住まいだ。それまでは、当たり前だがずっと王宮暮らしだったため、寮生活は新鮮な驚きの連続だ。

学園では、身分の差などなく王族だろうが平民だろうが、魔力を持ち才能ある者は分け隔てなく受け入れる、という方針だが、寮ではさすがに王族や貴族と平民を同じ部屋にするとトラブルの元になるので、ある程度階級ごとに居住スペースが区切られている。
俺はもちろん、王族専用の部屋だ。しかし、王宮での生活と同じとはならない。できる限り自分のことは自分でしなくてはならない。

寮での生活を始めるにあたり困ったのは、俺付きの侍従やメイドを連れて行けないため、様々なことを自分1人でしなくてはならないことだ。
さすがにベッドメイキングや洗濯などは寮で雇われた者がするので俺がしなくてもよいが、細々としたこと…例えば朝は自分1人で起きて着替えなくてはならないとか、制服の準備は自分でしなくてはならないとか…。平民が当たり前に自分1人でしていたことを、俺は多くの人の手を借り、助けられていたことが寮生活を通じてよくわかった。
俺1人では何にもできない子どもだったことを痛感したのだ。それを知っただけでも俺にとって寮生活は大きな収穫と言えるだろう。

国民に感謝できる王になれ。

国王である父上がおっしゃっていたことだ。
きっと父上も学園で痛感したに違いない。

そんな何もできない俺の日常生活をサポートするために、入学前に紹介されたのがエリスフィード公爵家の長男のノーマンだ。
初めて紹介された時はその整った容貌から、令嬢かと勘違いしてしまった。ちゃんと男の服装だったのに、俺付きになるために男装したのかと思いこんだくらいだ。
あまりにも儚げな見た目に、うっかり一目惚れしてしまい、俺が守らなければ!と奮起したのだが、ノーマンは俺より何でもできるし、強かった…。

ノーマンと剣の練習をしてみれば、飲み込みが早いのも、試合をして先に勝ったのもノーマンだった。
…普通、王太子である俺に勝ちを譲りそうなもんだが、あいつはそれをしなかった。俺に媚びないヤツは初めてだったからびっくりしたけど、気に入った。後日その話をしたら、女顔で舐められることが多いから負けないように頑張ってると笑ってた。俺は強いヤツも、そのために努力するヤツも好きだから、ますます気に入った。
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