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え? もう⁇
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午後の授業を終え、セイと一緒に特別寮に戻ると、真白や黒銀の出迎えはなく、自室もミリアと輝夜だけだった。
「まだ調査から帰っていないのね」
私の呟きに、ミリアが荷物を受け取りながら答えた。
「黒銀様と真白様でしたら、仕留めた魔物を解体するとかで奥の解体場にいらっしゃいますよ」
「えっ? 捕まえてきちゃったの⁉︎」
しまった、そういえば調査だけで狩らなくていいからってことを後で念話で伝えておくのを忘れていた。
オークの時にやりすぎはダメだって散々言い聞かせているけれど、解体場が魔物で埋め尽くされてやしないかと心配になってしまった。
私は手早くワンピースに着替え、解体場に急いだ。
「あっ、くりすてあ! おかえりなさい」
「おお、主。待っていたぞ」
食堂のさらに奥の方にある出入口から新しく設置した解体場のある中庭に出ると、すでに解体は済ませていたようで、血や内臓を詰めた樽にフタをしているところだった。
うう、スプラッタな場面じゃなくてよかった……
「今日は調査だけでいいってことを伝えていなくてごめんなさい。それで、何を仕留めてきたの?」
「うむ、この辺りに生息しているのは主にビッグホーンブルと金毛羊だった」
ビッグホーンブルといえば、スジだらけで食べられるところが少ないアレね。
食べられる部位は希少な上に美味であることから高値で取引されている。
でも名前の通りの大きな角を持っていて、気性が荒いもんだから仕留めるのが大変な上、狩れたら狩れたで、スジだらけで解体が大変なのよね。
解体の技術がないと、過食部位を無駄なく切り分けるのが難しいと言われているわ。
そうかと言って解体しないで容量の収納が可能なマジックバッグにそのまま収納して持ち帰ると、解体費用を取られるからコスト面で割に合わないと敬遠されているそう。
その為、頭数が増えたらある程度間引くために討伐依頼が出されるくらいだから、さらに希少なお肉となり、貴族の食卓にしか出てこない希少なお肉なのだ。
でも私はその希少部位ではなくスジを美味しくいただきたいほうなのよね。
うーむ、ビッグホーンブルかぁ……捨てるような部位なら、コスト的にも良さそうだわね。
金毛羊は金色の毛が美しく、比較的おとなしい魔物だ。
その羊毛は美しい上にとても暖かいので、冬支度に間に合うよう、夏前になると羊毛素材の調達依頼が増えるんですって。
でも金毛羊はおとなしいが、狩るのはなかなか難しいのよ。
というのも、ビッグホーンブルより遥かに巨体で、剣や弓矢で攻撃してもモコモコの毛が邪魔をして本体に攻撃が通らないからだ。
金毛羊を一番効率よく倒す方法として、土魔法や風魔法でひっくり返すというのがある。
金毛羊はひっくり返されると大人しくなるのでそのまま固定して毛だけを刈り取ってから離すことが多いのだそう。
依頼されたのは羊毛だけだから、乱獲せずそのまま群れに帰してまた羊毛が取れるように配慮しているらしいのだけど……
黒銀情報によると、人間に捕まり、あまつさえ全身の毛を刈り取られ、文字通り丸裸にされた金毛羊のほとんどは群れに戻れないのだそうだ。
そうして「はぐれ」となった丸裸の金毛羊は、敵の攻撃をガードする術を持たないためすぐに他の魔物の餌食になるか、なんとか生き延びた個体はやさぐれて獰猛になり、手に負えなくなるのが定説なのだそう。
金毛羊の「はぐれ」は数は少ないものの、かなり獰猛だと言われているのだけれど、まさかそんな理由だったとは……
金毛羊は、もし食べるとしたら前世の羊肉のような扱いでいいのかしら。
ジンギスカン、プルコギ、煮込み、ラムチョップ……いやいや。
金毛羊は羊毛に価値を置かれているのだから、お肉まで狙ったら絶滅に追い込まれてしまうかもしれない。
うん、金毛羊は除外しよう。
……もし万が一、「はぐれ」を狩れたら、こっそり試食くらいはしてみてもいいかもね。
「……主?」
「え? ……あ、うん、そうね。金毛羊よりビッグホーンブルのほうが良さそうね」
「うむ。我もそう思って今日はビッグホーンブルを狩ってきた。久々にギュードンを食べたいと思ってな」
あ、やっぱり。黒銀の背後に見える枝肉の肉質に見覚えがあったのよね。ちゃんとスジも確保してあるし。
「おれとくろがねでしゅんさつだよ!」
「そ、そう……すごいわね」
「えへん」
ドヤ顔をキメる真白可愛い……発言は物騒だけど。
「カフェのメニューに牛丼ってどうなのかしら」
オサレカフェが一気にファストフード店に。
でもスジ肉とはいえお肉はたっぷりで、お腹いっぱい食べられるし……
それはそれとして、他の部位で高級感のあるものを作ればいいかな?
「うん。決めた! まずはビッグホーンブルのスジ肉で牛丼を作るわよ。二人とも手伝ってね」
「「了解!」」
まずはスジ肉の下拵えからね。
ちょうど夕食作りの手伝いにやってきた白虎様たちも巻き込み、ビッグホーンブルの調理に勤しんだのだった。
翌日。午前中の授業は一般教養で、私は免除されているため黒銀たちと一緒にカフェに向かった。
「クリステア様⁉︎ どうなさったのですか?」
私の来店を知った料理長が慌てて出てきた。
「新メニューのご提案に参りましたの」
にこやかに答えると、料理長が固まった。
「え……? 昨日の今日で、ですか⁉︎」
そういうと、料理長はあんぐりと口を開けて、信じられないという目で私のことを見た。
……あれ? ちょっと早すぎた、かな?
---------------------------
連載中のコミカライズ版「転生令嬢は庶民の味に飢えている」は4月14日(木)更新予定!お見逃しなく!
原作の書籍は全4巻、文庫版とコミカライズ版はそれぞれ3巻まで発売中です( ´ ▽ ` )
あわせてお楽しみくださいませ~!
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私の呟きに、ミリアが荷物を受け取りながら答えた。
「黒銀様と真白様でしたら、仕留めた魔物を解体するとかで奥の解体場にいらっしゃいますよ」
「えっ? 捕まえてきちゃったの⁉︎」
しまった、そういえば調査だけで狩らなくていいからってことを後で念話で伝えておくのを忘れていた。
オークの時にやりすぎはダメだって散々言い聞かせているけれど、解体場が魔物で埋め尽くされてやしないかと心配になってしまった。
私は手早くワンピースに着替え、解体場に急いだ。
「あっ、くりすてあ! おかえりなさい」
「おお、主。待っていたぞ」
食堂のさらに奥の方にある出入口から新しく設置した解体場のある中庭に出ると、すでに解体は済ませていたようで、血や内臓を詰めた樽にフタをしているところだった。
うう、スプラッタな場面じゃなくてよかった……
「今日は調査だけでいいってことを伝えていなくてごめんなさい。それで、何を仕留めてきたの?」
「うむ、この辺りに生息しているのは主にビッグホーンブルと金毛羊だった」
ビッグホーンブルといえば、スジだらけで食べられるところが少ないアレね。
食べられる部位は希少な上に美味であることから高値で取引されている。
でも名前の通りの大きな角を持っていて、気性が荒いもんだから仕留めるのが大変な上、狩れたら狩れたで、スジだらけで解体が大変なのよね。
解体の技術がないと、過食部位を無駄なく切り分けるのが難しいと言われているわ。
そうかと言って解体しないで容量の収納が可能なマジックバッグにそのまま収納して持ち帰ると、解体費用を取られるからコスト面で割に合わないと敬遠されているそう。
その為、頭数が増えたらある程度間引くために討伐依頼が出されるくらいだから、さらに希少なお肉となり、貴族の食卓にしか出てこない希少なお肉なのだ。
でも私はその希少部位ではなくスジを美味しくいただきたいほうなのよね。
うーむ、ビッグホーンブルかぁ……捨てるような部位なら、コスト的にも良さそうだわね。
金毛羊は金色の毛が美しく、比較的おとなしい魔物だ。
その羊毛は美しい上にとても暖かいので、冬支度に間に合うよう、夏前になると羊毛素材の調達依頼が増えるんですって。
でも金毛羊はおとなしいが、狩るのはなかなか難しいのよ。
というのも、ビッグホーンブルより遥かに巨体で、剣や弓矢で攻撃してもモコモコの毛が邪魔をして本体に攻撃が通らないからだ。
金毛羊を一番効率よく倒す方法として、土魔法や風魔法でひっくり返すというのがある。
金毛羊はひっくり返されると大人しくなるのでそのまま固定して毛だけを刈り取ってから離すことが多いのだそう。
依頼されたのは羊毛だけだから、乱獲せずそのまま群れに帰してまた羊毛が取れるように配慮しているらしいのだけど……
黒銀情報によると、人間に捕まり、あまつさえ全身の毛を刈り取られ、文字通り丸裸にされた金毛羊のほとんどは群れに戻れないのだそうだ。
そうして「はぐれ」となった丸裸の金毛羊は、敵の攻撃をガードする術を持たないためすぐに他の魔物の餌食になるか、なんとか生き延びた個体はやさぐれて獰猛になり、手に負えなくなるのが定説なのだそう。
金毛羊の「はぐれ」は数は少ないものの、かなり獰猛だと言われているのだけれど、まさかそんな理由だったとは……
金毛羊は、もし食べるとしたら前世の羊肉のような扱いでいいのかしら。
ジンギスカン、プルコギ、煮込み、ラムチョップ……いやいや。
金毛羊は羊毛に価値を置かれているのだから、お肉まで狙ったら絶滅に追い込まれてしまうかもしれない。
うん、金毛羊は除外しよう。
……もし万が一、「はぐれ」を狩れたら、こっそり試食くらいはしてみてもいいかもね。
「……主?」
「え? ……あ、うん、そうね。金毛羊よりビッグホーンブルのほうが良さそうね」
「うむ。我もそう思って今日はビッグホーンブルを狩ってきた。久々にギュードンを食べたいと思ってな」
あ、やっぱり。黒銀の背後に見える枝肉の肉質に見覚えがあったのよね。ちゃんとスジも確保してあるし。
「おれとくろがねでしゅんさつだよ!」
「そ、そう……すごいわね」
「えへん」
ドヤ顔をキメる真白可愛い……発言は物騒だけど。
「カフェのメニューに牛丼ってどうなのかしら」
オサレカフェが一気にファストフード店に。
でもスジ肉とはいえお肉はたっぷりで、お腹いっぱい食べられるし……
それはそれとして、他の部位で高級感のあるものを作ればいいかな?
「うん。決めた! まずはビッグホーンブルのスジ肉で牛丼を作るわよ。二人とも手伝ってね」
「「了解!」」
まずはスジ肉の下拵えからね。
ちょうど夕食作りの手伝いにやってきた白虎様たちも巻き込み、ビッグホーンブルの調理に勤しんだのだった。
翌日。午前中の授業は一般教養で、私は免除されているため黒銀たちと一緒にカフェに向かった。
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私の来店を知った料理長が慌てて出てきた。
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