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存分にもふもふしないとね!

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それからは先輩たちの使い魔に触らせていただくふれあいの時間が設けられたのだけど、私とセイは魔獣たちに騒がれはしなかったものの微妙に避けられていたため、皆が楽しそうにしているのを遠巻きに眺めるだけに終わった。
ああ、もふもふでめちゃくちゃ可愛い子もいたのに、もふれないとか……悲しい。
「ク、クリステアさん、授業が始まれば触れるようになりますよ……きっと」
マリエルちゃん、目をそらしつつ慰めるのは余計悲しくなるから。
マリエルちゃんは真白ましろ黒銀くろがねの独占欲を知ってるから、絶対とは言い切れないんだよね。うん、私もわかってる……
とりあえず、不完全燃焼なこのもふ欲は真白ましろたちのブラッシングで昇華しようと思うよ……
「そういえば、俺たちは使い魔の召喚はできるのかな?」
「……! そ、そういえば……」
すでに聖獣契約している私たちの召喚に応じる魔物っているのかしら。
「あの……お二人の場合、召喚される魔物のランクを心配したほうがよいのでは……」
マリエルちゃんの言葉にハッとする。
そ、そうだった。
魔力量もだけど、輝夜かぐやを引き寄せたりした経緯もある私が召喚なんてしたら、どんな大型の魔物がやってくるのか……
「……事前にニール先生やマーレン先生に相談するべきだろうな」
「そ、そうね……」
もふもふたちに後ろ髪を引かれつつ、研究棟を後にする私たちなのだった。

見学をひととおり終えた私たちが教室に戻ると、ニール先生がプリントを手に教壇に立った。
「さて、簡単に各コースを回ってみたわけだけど、もし変更したいとか追加したいとかあれば今から相談にのるからね。で、これから配る用紙に選択したコースを記入して明日提出するように」
プリントが前から回されてきたのを一枚抜き取り、後ろへ回していく。
プリントには選択コースの申請書で、先日相談した内容から変更がなければそのまま清書して提出すればいいようになっていた。
「相談の必要がなければ今日はこれで終了にしよう。あ、そうそう、明日の午前の授業から魔法学初級の授業が始まるから遅れないように気をつけてね。じゃあ、今日は解散!」
ニール先生の声で教室を出ていく者、ニール先生の元へ駆け寄り相談する者と動き始めた。
私は相談したければ後からニール先生に聞いてもいいし……
「クリステアさんはこのまま寮に戻られますか?」
マリエルちゃんがプリントをしまいながら私を見る。
「ええ、そのつもりよ。セイはどうする?」
「ああ、相談はあとで寮でもできるから」
セイも私と同じことを考えていたようで、プリントを紙挟みにしまい、席を立った。
「あの、じゃあ少し相談にのっていただけますか?」
マリエルちゃんが可愛らしく目をうるうるさせてお願いしてきたので、私は二つ返事でオーケーしたのだった。
マリエルちゃん、腐ってなければ可愛いのよねぇ。本当に残念な「守ってあげたい系美少女」だわ……

特別寮に戻り談話室に向かうと、輝夜かぐやがソファーで丸くなって寝ていた。
「あら、珍しいわね。輝夜かぐやが部屋から出ているなんて」
私が近寄るとビクッと跳ね起きて警戒してみせたけれど、相手が私とわかり気が抜けたようにゆるりと座った。
『ああもう、びっくりしたじゃないか。あの鳥の気配がしたからまた構い倒されるのかと思ったよ』
輝夜かぐやはそう念話で答えながら顔を洗った。
「あの鳥って……朱雀様?」
『ああ。弱いけどアンタらからアイツの気配がしてる……て、アンタ。犬たちの気配まで薄れてるじゃないか。よくアイツらが許したね?』
どうやら朱雀様の羽根の効果はあったようだ。
「今日は魔物学の見学で魔物たちに会うから、朱雀様からこれを貸していただいたのよ」
そう言ってポケットにしまっていた羽根を見せると、輝夜かぐやがうげっと顔を歪ませた。
『アンタなんてモン持ってんだい。ああ、だからアイツら午後から不貞腐れてたんだ』
輝夜かぐやが納得したように言った。
「不貞腐れてたって……真白ましろ黒銀くろがねが?」
『ああそうだよ。だから居心地悪くて部屋を抜け出したら、あの鳥にとっつかまっちまってさぁ。さっきようやく開放されたとこさ』
「そっか……」
二人とも、我慢してくれてたんだね。輝夜かぐやにも悪いことしちゃったな。
「あの……クリステアさん? いったい何が……?」
あ、いけない。輝夜かぐやは念話で私に話しかけてきてたから、マリエルちゃんには会話の内容がわからなかったのね。
念話は特定相手、ここでは契約主である私とは念話で普通に話せても他の人にはわからないのよ。輝夜かぐやが皆にわかるように範囲指定のようなかたちで念話を飛ばせば皆と会話も可能なのだけど、輝夜かぐやは他の人とは念話したがらないのよね。ご飯をねだるミリアにさえ文字通り猫を被っているんだもの。
ミリアが輝夜かぐやの柄の悪さを知ったら驚くか「女の子がそんな言葉遣いしちゃいけません!」って叱るかだろうから知らぬが仏、なんだけどね。
「あの……?」
おっと、マリエルちゃんを放置してた。
「あのね、魔物学の見学のために朱雀様から魔物が怯えないようにって仕掛けをしてくださったのだけど、真白ましろ黒銀くろがねがそれで拗ねちゃったみたいで……」
「ああ……確かにお二方には申し訳ないことをしたな」
私の説明にセイが得心した様子で言った。
「申し訳ない?」
「聖獣契約すると主人に対してものすごく独占欲が強くなるのは知っているでしょう? だから、いつも自分の主人だと主張するために自分の気配を強く残そうマーキングとするの。今日はそれが原因で魔物たちを怯えさせてはいけないからって朱雀様に対策をしていただいたのだけど……」
そう言って私はポケットから朱雀様の羽根を取り出して見せた。
「なるほど! 要はクリステアさんが朱雀様の気配を身に纏うことになるから嫉妬しちゃったということですね!」
「そういうこと。あの……マリエルさん。相談は皆のブラッシングをしながら聞くのでも大丈夫かしら?」
私ももふ欲を満たしたいところだったし、ちょうどいいわ。
「もちろんです。早くお二人の機嫌を直してあげてください」
マリエルちゃんの了承も得たことだし、私は早速二人を呼んで、マリエルちゃんのコース選択の相談に乗りつつ、輝夜かぐやもまとめて存分にもふり倒し……もとい、ブラッシングしまくったのだった。
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