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クラス分け
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私たちが寮に戻ったことで、また何か動きがあるのではないかと警戒していたけれど、学園長によってすでにやらかしてしまった生徒が早々に警告などの処分を受けていたためか、新たな襲撃はないみたい。
ほっとしたよ。
あの後、私たちは食堂でニール先生からクラス分けについて説明を受け、翌日は掲示されたクラス分け表を見ずにそのまま教室に向かうように言われた。
生徒たちでごった返す中に私たちが現れて騒ぎになるのを防ぐためなんですって。
すでに知っていることとはいえ、クラス分けなんてドキドキのイベントをスルーしなきゃいけないのはさみしいなぁ。
どんな子がクラスメイトになるのか、そこで確認したりしたいじゃない?
まあ、セイとマリエルちゃんが同じクラスだってことはもうわかってるからいいんだけどさぁ……
ああもう皆、早く私たちの存在に慣れて落ち着いてくれないかなぁ。
今はただ、聖獣契約者とその聖獣様がいるってことが物珍しいから騒ぎ立ててるだけだろう。
だから、ほんの僅かな期間だけの我慢だと割り切るしかない。
「じゃあ、また明日。おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」
ニール先生はまだ仕事が残っているそうで、ふらふらと寮を出て行った。お疲れ様です。
私たちが自室に引き上げると、先に荷物の整理で戻っていたミリアがお風呂の用意をしてくれていたのでありがたく入らせてもらうことにした。
ミリアは私が一人でのんびりお風呂に浸かりたいのを理解……というか無理矢理納得してもらっているから、楽でいい。
「ふはぁ……」
全身しっかり洗い上げて、肩まで湯に浸かる。
特別寮でよかったと思うのは、こうして一人でゆっくりお風呂に入れることよね。
貴族用の個室にはお風呂はあるそうなのだけど、寮生は大浴場を使うのが原則なので、お風呂の支度など基本の業務以外のことをメイドに頼むのなら別料金だったりするらしい。
そのため、卒業後メイドとして働きたい生徒に相場よりも安い賃金で頼む生徒もいるんだよね。うーん、世知辛い。
それでも平民の生徒からしてみれば、ちょっとした割りのいいアルバイトみたいなものらしいけど。
なんだかんだ言って平等ではない学園内で、少しでも平民の子たちの生活費の足しになるようにそういうシステムになっていると聞いた時は釈然としなかったけれど、学園に行かずに働く子供たちと比べたらその稼ぎは雲泥の差らしい。
それに、働きぶりによっては卒業後の就職先としてスカウトされる可能性もあるわけだから、貴族の御令嬢や子息と繋がりが作れるこのシステムはそれなりに歓迎されているらしいし。
私の場合、大抵のことは自分でやっちゃおうとするからよくミリアに嗜められるんだよね。
昔、下の者を使うのではなく頼ることも必要ですよ、と言われた時は「自分でできることはするべきなんじゃない?」と思っていたけれど、こういうことなのかと今になって納得したわ。
「……クリステア様、寝ていらっしゃいませんよね?」
ミリアが扉の向こうからノックしつつ声をかけてきた。
おっと、長湯しすぎちゃったみたいね。
ザブッと湯から出た私は、さっと水気を拭い、ほこほことあたたまった身体を夜着とガウンで包み、リビングに向かった。
翌朝、いつも通り朝ヨガをしてから朝食を作り、皆で朝食を摂った。
今朝はエリスフィード家で焼いたふわふわの食パンで作ったサンドイッチだ。
パンの耳は帰ってから揚げて砂糖をまぶしておやつにしようっと。
え? 貴族の令嬢が貧乏くさいって?
ほっといてもらおうか。
うちのパンは耳まで美味しいのだ。
「そろそろ教室に向かおうか」
セイが筆記用具を手にして言った。
すでに制服に着替えているから、後は出るだけの状態だ。
「ええ、そうね。マリエルさんはもういるかしら?」
「どうかな……先週は連絡するどころではなかったから、いつもの場所にいるといいけど」
そう話しながら玄関ホールの扉を開けると、マリエルちゃんがちょうど駆け込んできたところだった。
「マリエルさん⁉︎」
「ああっ⁉︎ クリステアさんちょうどよかった! 私、先にクラス分けの掲示を見てきたんです! それで……」
ゼイゼイと息を切らしているところを見ると走ってきたみたいだ。
構内は走り回っちゃだめよ。淑女らしくないと怒られちゃうわよ?
「ああ、マリエルさんと私たち、同じクラスだったでしょう? よかったわ」
「……えっ? クリステアさん、知ってたの⁉︎」
びっくりした様子のマリエルちゃん。
ごめんね、やっぱり先に教えておくべきだったわね。
「ごめんなさい。先週聞いていたのだけど、伝える暇がなくて」
「ああ……大変でしたもんね……って、それはいいとして、なんで私がSクラスなんですかあぁ⁉︎」
半べそ状態のマリエルちゃんが私に詰め寄る。
「え? 私に聞かれてもわからないわよ? 私も先生に同じクラスだって聞かされただけだし。あっ、筆記試験の成績がよかったって言ってたわよ」
「えっ、それはよかった……じゃなくて! たかが男爵の、しかも新興貴族の娘如きが筆記試験の結果程度でSクラスっておかしいじゃないですか⁉︎ 高位貴族の御令嬢でもAクラスの方が多いのに!」
あ、そうなんだ。……てことは、Sクラスってかなりのエリートコースってこと⁉︎
「あの、二人とも。遅刻してはいけないから移動しながら話さないか?」
セイに言われてハッとした私たちは慌てて教室に向かったのだった。
ニール先生に教えられた通り、掲示板を避けるコースを使って特別クラス、通称Sクラスの教室にたどり着いた。
向かう間にマリエルちゃんと話そうにも、なんだかんだで人の目が多かったのでまともに話もできずただひたすら教室へ急いだ私たちは、扉の前で顔を見合わせた。
「お……じゃない、僕から入るよ」
そう言ってセイが扉のノブに手をかけた。
「あっ! そうだ、クリステアさんに伝えなきゃと思ってたのに」
マリエルちゃんが慌てたようにこちらに顔を近づけた。
「え? 何かしら?」
「えっと、クラスメイトにあの……」
マリエルちゃんがひそりと耳打ちしようとしたところでセイが扉を開けた。
その向こうにいたのは……
「アリシア・グルージア様が」
キラキラと輝く金髪縦巻きロールの彼女が、こちらを見ていた。
---------------------------
11月11日(木)はコミカライズ版「転生令嬢は庶民の味に飢えている」第22話の更新日です!お楽しみに!
ほっとしたよ。
あの後、私たちは食堂でニール先生からクラス分けについて説明を受け、翌日は掲示されたクラス分け表を見ずにそのまま教室に向かうように言われた。
生徒たちでごった返す中に私たちが現れて騒ぎになるのを防ぐためなんですって。
すでに知っていることとはいえ、クラス分けなんてドキドキのイベントをスルーしなきゃいけないのはさみしいなぁ。
どんな子がクラスメイトになるのか、そこで確認したりしたいじゃない?
まあ、セイとマリエルちゃんが同じクラスだってことはもうわかってるからいいんだけどさぁ……
ああもう皆、早く私たちの存在に慣れて落ち着いてくれないかなぁ。
今はただ、聖獣契約者とその聖獣様がいるってことが物珍しいから騒ぎ立ててるだけだろう。
だから、ほんの僅かな期間だけの我慢だと割り切るしかない。
「じゃあ、また明日。おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」
ニール先生はまだ仕事が残っているそうで、ふらふらと寮を出て行った。お疲れ様です。
私たちが自室に引き上げると、先に荷物の整理で戻っていたミリアがお風呂の用意をしてくれていたのでありがたく入らせてもらうことにした。
ミリアは私が一人でのんびりお風呂に浸かりたいのを理解……というか無理矢理納得してもらっているから、楽でいい。
「ふはぁ……」
全身しっかり洗い上げて、肩まで湯に浸かる。
特別寮でよかったと思うのは、こうして一人でゆっくりお風呂に入れることよね。
貴族用の個室にはお風呂はあるそうなのだけど、寮生は大浴場を使うのが原則なので、お風呂の支度など基本の業務以外のことをメイドに頼むのなら別料金だったりするらしい。
そのため、卒業後メイドとして働きたい生徒に相場よりも安い賃金で頼む生徒もいるんだよね。うーん、世知辛い。
それでも平民の生徒からしてみれば、ちょっとした割りのいいアルバイトみたいなものらしいけど。
なんだかんだ言って平等ではない学園内で、少しでも平民の子たちの生活費の足しになるようにそういうシステムになっていると聞いた時は釈然としなかったけれど、学園に行かずに働く子供たちと比べたらその稼ぎは雲泥の差らしい。
それに、働きぶりによっては卒業後の就職先としてスカウトされる可能性もあるわけだから、貴族の御令嬢や子息と繋がりが作れるこのシステムはそれなりに歓迎されているらしいし。
私の場合、大抵のことは自分でやっちゃおうとするからよくミリアに嗜められるんだよね。
昔、下の者を使うのではなく頼ることも必要ですよ、と言われた時は「自分でできることはするべきなんじゃない?」と思っていたけれど、こういうことなのかと今になって納得したわ。
「……クリステア様、寝ていらっしゃいませんよね?」
ミリアが扉の向こうからノックしつつ声をかけてきた。
おっと、長湯しすぎちゃったみたいね。
ザブッと湯から出た私は、さっと水気を拭い、ほこほことあたたまった身体を夜着とガウンで包み、リビングに向かった。
翌朝、いつも通り朝ヨガをしてから朝食を作り、皆で朝食を摂った。
今朝はエリスフィード家で焼いたふわふわの食パンで作ったサンドイッチだ。
パンの耳は帰ってから揚げて砂糖をまぶしておやつにしようっと。
え? 貴族の令嬢が貧乏くさいって?
ほっといてもらおうか。
うちのパンは耳まで美味しいのだ。
「そろそろ教室に向かおうか」
セイが筆記用具を手にして言った。
すでに制服に着替えているから、後は出るだけの状態だ。
「ええ、そうね。マリエルさんはもういるかしら?」
「どうかな……先週は連絡するどころではなかったから、いつもの場所にいるといいけど」
そう話しながら玄関ホールの扉を開けると、マリエルちゃんがちょうど駆け込んできたところだった。
「マリエルさん⁉︎」
「ああっ⁉︎ クリステアさんちょうどよかった! 私、先にクラス分けの掲示を見てきたんです! それで……」
ゼイゼイと息を切らしているところを見ると走ってきたみたいだ。
構内は走り回っちゃだめよ。淑女らしくないと怒られちゃうわよ?
「ああ、マリエルさんと私たち、同じクラスだったでしょう? よかったわ」
「……えっ? クリステアさん、知ってたの⁉︎」
びっくりした様子のマリエルちゃん。
ごめんね、やっぱり先に教えておくべきだったわね。
「ごめんなさい。先週聞いていたのだけど、伝える暇がなくて」
「ああ……大変でしたもんね……って、それはいいとして、なんで私がSクラスなんですかあぁ⁉︎」
半べそ状態のマリエルちゃんが私に詰め寄る。
「え? 私に聞かれてもわからないわよ? 私も先生に同じクラスだって聞かされただけだし。あっ、筆記試験の成績がよかったって言ってたわよ」
「えっ、それはよかった……じゃなくて! たかが男爵の、しかも新興貴族の娘如きが筆記試験の結果程度でSクラスっておかしいじゃないですか⁉︎ 高位貴族の御令嬢でもAクラスの方が多いのに!」
あ、そうなんだ。……てことは、Sクラスってかなりのエリートコースってこと⁉︎
「あの、二人とも。遅刻してはいけないから移動しながら話さないか?」
セイに言われてハッとした私たちは慌てて教室に向かったのだった。
ニール先生に教えられた通り、掲示板を避けるコースを使って特別クラス、通称Sクラスの教室にたどり着いた。
向かう間にマリエルちゃんと話そうにも、なんだかんだで人の目が多かったのでまともに話もできずただひたすら教室へ急いだ私たちは、扉の前で顔を見合わせた。
「お……じゃない、僕から入るよ」
そう言ってセイが扉のノブに手をかけた。
「あっ! そうだ、クリステアさんに伝えなきゃと思ってたのに」
マリエルちゃんが慌てたようにこちらに顔を近づけた。
「え? 何かしら?」
「えっと、クラスメイトにあの……」
マリエルちゃんがひそりと耳打ちしようとしたところでセイが扉を開けた。
その向こうにいたのは……
「アリシア・グルージア様が」
キラキラと輝く金髪縦巻きロールの彼女が、こちらを見ていた。
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11月11日(木)はコミカライズ版「転生令嬢は庶民の味に飢えている」第22話の更新日です!お楽しみに!
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