71 / 384
連載
クリステアの消失
しおりを挟む
「トッド~!これはどう?もう頃合いかしら?」
「どれどれ…ああ、これは美味しそうだ!良いですよ。」
庭師のトッドにOKをもらったのでパチンと鋏を入れる。
「わあ…綺麗…!」
太陽光をキラキラと反射し、まるで宝石のようだ。
え?何がって?お野菜ですよ!採れたて野菜!ツヤツヤ、ピカピカのお野菜!
きゅうりやナス、トマトにパプリカetc…ああ、瑞々しくて、美味しそう…。そのままかぶりつきたい衝動を抑えつつ、収穫を続ける。
ここは、エリスフィード家の菜園。
屋敷の裏手の、ひっそりとした場所に菜園を作ったのだ。
採れたてに勝るものはない!と庭園の一部を菜園にしようとしたらトッドに
泣いて止められた。
美しい庭園のバランスが崩れるから、と…。まあ、お客様も案内するところだからね…仕方がないか。
交渉の末にここなら、と与えられたスペースに菜園を作ったのだ。
トッドもなんだかんだ言って、野菜作りを楽しんでいるようだ。
「ふう、こんなものかしら。ありがとう、トッド。これ、調理場に持っていくわね。」
「これは重いから僕が持って行きますよ。」
収穫したばかりの、山盛り野菜をみてトッドは言う。
「クリステア様、私たちがお持ちしますわ。」
「大丈夫よ、これは…」
手伝おうとするミリアを止めて、野菜の山に触れ、インベントリに収納する。
「あっ!?」
「ふふ、この方が鮮度を保ったまま運べるからいいのよ。」
「空間魔法ですか…。はー…すごいですね。」
さすがお嬢様だ、と驚き、感心するトッド。
「でも、クリステア様に荷物運びをさせるなんて…」
申し訳なさそうにミリアは言うが、これでいいのだ。
「いいの、いいの。さあ、行きましょう!」
調理場に野菜を届け、あれこれと指示をして立ち去る。
---------------------------
「クリステア様、喉が乾いたでしょう。」
自室に戻ったクリステアに、すかさずどうぞ、と水出しの紅茶を出してくれた。本当にミリアはよくできる侍女だ。うん、美味しい。良い茶葉だから水出しで美味しくいただける。
「あっ、いけない!シンに新しいドレッシングのレシピを渡してなかったわ!」
ガタッと立ち上がりポケットに入れていたレシピのメモを取り出し、あちゃーと顔をしかめる。
「まあ…では私が届けますわ。」
「悪いけれど、お願いできるかしら。」
よろしくね、とクリステアからメモを受け取り部屋を出たミリアは、廊下に出たところで、もうじきマナー学の時間だと思い至る。
してやられるところだった!と、慌てて引き返した。
メモはレティアにクリステアを引き渡してからでも十分間に合うはずだ。
「クリステア様!そろそろマナー学のお時間です、よ…?」
キョロキョロと部屋を見渡すが、クリステアがいない。
「クリステア様…?」
寝室だろうか?と移動するも、クリステアの姿はない。
「クリステア…さま…?」
クリステアが、忽然と消えてしまった。
「どれどれ…ああ、これは美味しそうだ!良いですよ。」
庭師のトッドにOKをもらったのでパチンと鋏を入れる。
「わあ…綺麗…!」
太陽光をキラキラと反射し、まるで宝石のようだ。
え?何がって?お野菜ですよ!採れたて野菜!ツヤツヤ、ピカピカのお野菜!
きゅうりやナス、トマトにパプリカetc…ああ、瑞々しくて、美味しそう…。そのままかぶりつきたい衝動を抑えつつ、収穫を続ける。
ここは、エリスフィード家の菜園。
屋敷の裏手の、ひっそりとした場所に菜園を作ったのだ。
採れたてに勝るものはない!と庭園の一部を菜園にしようとしたらトッドに
泣いて止められた。
美しい庭園のバランスが崩れるから、と…。まあ、お客様も案内するところだからね…仕方がないか。
交渉の末にここなら、と与えられたスペースに菜園を作ったのだ。
トッドもなんだかんだ言って、野菜作りを楽しんでいるようだ。
「ふう、こんなものかしら。ありがとう、トッド。これ、調理場に持っていくわね。」
「これは重いから僕が持って行きますよ。」
収穫したばかりの、山盛り野菜をみてトッドは言う。
「クリステア様、私たちがお持ちしますわ。」
「大丈夫よ、これは…」
手伝おうとするミリアを止めて、野菜の山に触れ、インベントリに収納する。
「あっ!?」
「ふふ、この方が鮮度を保ったまま運べるからいいのよ。」
「空間魔法ですか…。はー…すごいですね。」
さすがお嬢様だ、と驚き、感心するトッド。
「でも、クリステア様に荷物運びをさせるなんて…」
申し訳なさそうにミリアは言うが、これでいいのだ。
「いいの、いいの。さあ、行きましょう!」
調理場に野菜を届け、あれこれと指示をして立ち去る。
---------------------------
「クリステア様、喉が乾いたでしょう。」
自室に戻ったクリステアに、すかさずどうぞ、と水出しの紅茶を出してくれた。本当にミリアはよくできる侍女だ。うん、美味しい。良い茶葉だから水出しで美味しくいただける。
「あっ、いけない!シンに新しいドレッシングのレシピを渡してなかったわ!」
ガタッと立ち上がりポケットに入れていたレシピのメモを取り出し、あちゃーと顔をしかめる。
「まあ…では私が届けますわ。」
「悪いけれど、お願いできるかしら。」
よろしくね、とクリステアからメモを受け取り部屋を出たミリアは、廊下に出たところで、もうじきマナー学の時間だと思い至る。
してやられるところだった!と、慌てて引き返した。
メモはレティアにクリステアを引き渡してからでも十分間に合うはずだ。
「クリステア様!そろそろマナー学のお時間です、よ…?」
キョロキョロと部屋を見渡すが、クリステアがいない。
「クリステア様…?」
寝室だろうか?と移動するも、クリステアの姿はない。
「クリステア…さま…?」
クリステアが、忽然と消えてしまった。
169
お気に入りに追加
14,175
あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ
青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。
今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。
婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。
その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。
実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?
西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね?
7話完結のショートストーリー。
1日1話。1週間で完結する予定です。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。