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聞いてないよ⁉︎
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翌朝、私はいつもの日課の朝ヨガを終えて朝食の準備をしようと階下へ向かった。
黒銀と真白はセイたちの朝の鍛錬に付き合うからと言って先に自室を出ていた。
セイとの鍛錬は口実で、白虎様と相談するつもりなんだろうな。
「はあ……」
『何だい、朝から辛気臭いね』
私の前を歩いていた輝夜がスピードを落として私の隣につき、尻尾でパシッと叩いてきた。
いや……それ私的にはご褒美だからね?
朱雀様の希望で散々着せ替えごっこに付き合わされた輝夜は、その時にかなり厳しく言い聞かされていたようで、毎回ではないものの、気まぐれに食堂に顔を出すようになった。よきかな。
ごはんはできるだけ皆で食べたいものね。
『アイツらがそれでいいって言ってんだからパッと見せてさっさと帰ってくりゃいいじゃないか』
輝夜さん、そんな簡単そうに言うけどさぁ……
「うー……やっぱり皆が見世物みたいになるのは嫌だなぁと思って……」
私が他の生徒の立場だったら……と考えたら、きっと久々に現れた聖獣契約者と聖獣がこの学園にいるのならば、ぜひこの目で見てみたいと思うだろう。
その気持ちはよくわかるからきっぱりと嫌だって言えないのよね。
だからって黒銀や真白が見世物になっていいわけじゃないとも思ってしまって……
はあ……どっちつかず。こんな自分が嫌になる。
『ンなこと気にしてたのかい。アイツらはアンタと契約してここについてくると決めたんだから、そのくらい覚悟の上だろ。思ったより規模が大きいってだけさ』
「輝夜……」
励ましてくれてるの?
嬉しくて思わず抱き上げようとしたら、するりとすり抜けて、テテッと先に行ってしまった。
ぐぬぅ、ツンデレめぇ。
『ほら、アタシは早くメシにしたいんだからさっさといくよ!』
「はいはい。ねえ輝夜、その理屈で言えば輝夜も契約獣として皆に紹介してもいいってこと?」
『は? アタシはごめんだね!』
ええ~? 矛盾してない?
『ただの黒猫にしか見えないアタシを魔獣だと紹介したところで、アンタの正気を疑われるだけだろうに。するだけ無駄!』
「私としては、政治的な問題さえなければうちの子たちがどれだけ可愛いか全世界に発信したいところなんだけどなぁ」
『は? ばっかじゃないの? ほら、早く来な!』
「はぁい」
このツンデレさんめ。
私は輝夜のピンと立ったしっぽをニヤニヤと眺めながら後をついていったのだった。
朝食を終えた私とセイは制服に着替えるため自室に戻ったけれど、白虎様や黒銀たちはまだ起きてこないニール先生に用があるからとそのまま食堂に残っていた。
ニール先生に何を言うつもりなのか気になったけれど、遅刻するわけにもいかなかったので私たちは仕方なく自室に戻った。
あとで何を話したのか聞かなくちゃ。
私は手早く着替えて姿見でチェックしてから急いで階下へ向かうと、ちょうどニール先生が寮を出るところだった。
「ニール先生、おはようございます」
「やあ、おはよう。クリステア嬢はいつも早いね」
私が駆け寄るとニール先生はにこやかに挨拶を返してくれた。
あれ? なんだか機嫌がいい……皆に脅されたりしなかったのかな?
「あの、お披露目のことなんですけど……」
「ああ、今から学園長に話に行くところさ! いやあ、楽しみにしてるよ! じゃ、また後で!」
「え? あの、ニール先生⁉︎」
……行ってしまった。
閉まりかけた扉の隙間から見えたニール先生は今にもスキップしそうだったけど……え、何? 楽しみにしてるってどういうこと?
ぼかんとその場に立ち尽くしていると、白虎様たちが食堂からぞろぞろとやってきた。
「お? お嬢もう支度できたのか?」
「あらまあ、主はまだ降りてきていないのですね。私、呼んでまいりますわ」
朱雀様がサッと動いてセイを呼びに向かった。
「あの、先ほどニール先生にお会いしたのですけど……どんなお話だったのですか?」
私は玄関ホールに残った白虎様に聞いてみることにした。
「ああ、アイツか。ちょっと条件について話し合っただけだから心配すんな」
いやいや。白虎様のやることだから心配しかないでしょうが。
「条件って、どうなったんですか?」
「それを今からアイツに交渉させるんだ。まあ張り切ってたから大丈夫だろ」
いやいやいや。ニール先生が張り切るとか、さらなる不安要素でしかないんですけど⁉︎
「まー気にすんなって。セイも降りてきたからお前らは頑張ってお勉強してきな」
白虎様に言われて階段のほうを見ると、セイが降りてくるところだった。
「トラ、お前どんな交渉をした?」
「んな心配しなくても悪いようにはしねえって。ちゃんとお披露目には出るから、そら、もう出る時間だ。いってきな」
ホールにある時計を見れば、もう出る時間だったので私たちは渋々寮を出たのだった。
「ホールでニール先生にお会いしたのだけど、とても機嫌がよかったから何を話したのかすごく気になるのよね……セイは何か知ってる?」
「ニール先生が? 昨夜白虎が何やら交渉すると言ってたが……内容までは教えてくれなかったんだ」
セイも知らないのか……あれだけ上機嫌だったんだから、ニール先生の得になるような条件なのだろう。
ニール先生の得……まさか、実験体になるとかじゃないだろうし。
うう、今のニール先生からしてみれば、聖獣に関することならなんだってご褒美なんだろうから予想がつかない。
「トラのやることは見当もつかないが、俺たちが不利になるようなことはしないだろうからそれを信じるしかないな。昼に寮に帰ったら問い詰めることにするよ」
「そうね。私も二人に聞いてみるわ」
とりあえず午前中の授業に集中しなきゃってことで話がまとまったところでマリエルちゃんの姿が見えた。
「クリステアさん、セイさん、おはようございます!」
「おはよう、マリエル嬢」
「マリエルさん、おはようございます。昨日はごめんなさいね、それと……」
昨日一緒に勉強できなかったことを謝って、同じクラスになることを話そうと思った矢先にマリエルちゃんが顔の前でにこやかに手を振りながら言った。
「いえ、お気になさらないでください。そうそう、聞きましたよ! 今日の午後、聖獣様のお披露目をするんでしょう? 昨日の夕食の時間、食堂ではその噂で持ち切りでしたよ!」
マリエルちゃんの言葉に、私とセイはピシリと固まった。
「……は?」
「え……? 今日の、午後……?」
「ええ、皆そう言って、絶対見に行くって……違うんですか?」
「「えええええ⁉︎」」
昨日の今日だなんて、聞いてないよ⁉︎
---------------------------
今週7/8(木)にコミカライズ版更新予定!
よろしくお願いします!
黒銀と真白はセイたちの朝の鍛錬に付き合うからと言って先に自室を出ていた。
セイとの鍛錬は口実で、白虎様と相談するつもりなんだろうな。
「はあ……」
『何だい、朝から辛気臭いね』
私の前を歩いていた輝夜がスピードを落として私の隣につき、尻尾でパシッと叩いてきた。
いや……それ私的にはご褒美だからね?
朱雀様の希望で散々着せ替えごっこに付き合わされた輝夜は、その時にかなり厳しく言い聞かされていたようで、毎回ではないものの、気まぐれに食堂に顔を出すようになった。よきかな。
ごはんはできるだけ皆で食べたいものね。
『アイツらがそれでいいって言ってんだからパッと見せてさっさと帰ってくりゃいいじゃないか』
輝夜さん、そんな簡単そうに言うけどさぁ……
「うー……やっぱり皆が見世物みたいになるのは嫌だなぁと思って……」
私が他の生徒の立場だったら……と考えたら、きっと久々に現れた聖獣契約者と聖獣がこの学園にいるのならば、ぜひこの目で見てみたいと思うだろう。
その気持ちはよくわかるからきっぱりと嫌だって言えないのよね。
だからって黒銀や真白が見世物になっていいわけじゃないとも思ってしまって……
はあ……どっちつかず。こんな自分が嫌になる。
『ンなこと気にしてたのかい。アイツらはアンタと契約してここについてくると決めたんだから、そのくらい覚悟の上だろ。思ったより規模が大きいってだけさ』
「輝夜……」
励ましてくれてるの?
嬉しくて思わず抱き上げようとしたら、するりとすり抜けて、テテッと先に行ってしまった。
ぐぬぅ、ツンデレめぇ。
『ほら、アタシは早くメシにしたいんだからさっさといくよ!』
「はいはい。ねえ輝夜、その理屈で言えば輝夜も契約獣として皆に紹介してもいいってこと?」
『は? アタシはごめんだね!』
ええ~? 矛盾してない?
『ただの黒猫にしか見えないアタシを魔獣だと紹介したところで、アンタの正気を疑われるだけだろうに。するだけ無駄!』
「私としては、政治的な問題さえなければうちの子たちがどれだけ可愛いか全世界に発信したいところなんだけどなぁ」
『は? ばっかじゃないの? ほら、早く来な!』
「はぁい」
このツンデレさんめ。
私は輝夜のピンと立ったしっぽをニヤニヤと眺めながら後をついていったのだった。
朝食を終えた私とセイは制服に着替えるため自室に戻ったけれど、白虎様や黒銀たちはまだ起きてこないニール先生に用があるからとそのまま食堂に残っていた。
ニール先生に何を言うつもりなのか気になったけれど、遅刻するわけにもいかなかったので私たちは仕方なく自室に戻った。
あとで何を話したのか聞かなくちゃ。
私は手早く着替えて姿見でチェックしてから急いで階下へ向かうと、ちょうどニール先生が寮を出るところだった。
「ニール先生、おはようございます」
「やあ、おはよう。クリステア嬢はいつも早いね」
私が駆け寄るとニール先生はにこやかに挨拶を返してくれた。
あれ? なんだか機嫌がいい……皆に脅されたりしなかったのかな?
「あの、お披露目のことなんですけど……」
「ああ、今から学園長に話に行くところさ! いやあ、楽しみにしてるよ! じゃ、また後で!」
「え? あの、ニール先生⁉︎」
……行ってしまった。
閉まりかけた扉の隙間から見えたニール先生は今にもスキップしそうだったけど……え、何? 楽しみにしてるってどういうこと?
ぼかんとその場に立ち尽くしていると、白虎様たちが食堂からぞろぞろとやってきた。
「お? お嬢もう支度できたのか?」
「あらまあ、主はまだ降りてきていないのですね。私、呼んでまいりますわ」
朱雀様がサッと動いてセイを呼びに向かった。
「あの、先ほどニール先生にお会いしたのですけど……どんなお話だったのですか?」
私は玄関ホールに残った白虎様に聞いてみることにした。
「ああ、アイツか。ちょっと条件について話し合っただけだから心配すんな」
いやいや。白虎様のやることだから心配しかないでしょうが。
「条件って、どうなったんですか?」
「それを今からアイツに交渉させるんだ。まあ張り切ってたから大丈夫だろ」
いやいやいや。ニール先生が張り切るとか、さらなる不安要素でしかないんですけど⁉︎
「まー気にすんなって。セイも降りてきたからお前らは頑張ってお勉強してきな」
白虎様に言われて階段のほうを見ると、セイが降りてくるところだった。
「トラ、お前どんな交渉をした?」
「んな心配しなくても悪いようにはしねえって。ちゃんとお披露目には出るから、そら、もう出る時間だ。いってきな」
ホールにある時計を見れば、もう出る時間だったので私たちは渋々寮を出たのだった。
「ホールでニール先生にお会いしたのだけど、とても機嫌がよかったから何を話したのかすごく気になるのよね……セイは何か知ってる?」
「ニール先生が? 昨夜白虎が何やら交渉すると言ってたが……内容までは教えてくれなかったんだ」
セイも知らないのか……あれだけ上機嫌だったんだから、ニール先生の得になるような条件なのだろう。
ニール先生の得……まさか、実験体になるとかじゃないだろうし。
うう、今のニール先生からしてみれば、聖獣に関することならなんだってご褒美なんだろうから予想がつかない。
「トラのやることは見当もつかないが、俺たちが不利になるようなことはしないだろうからそれを信じるしかないな。昼に寮に帰ったら問い詰めることにするよ」
「そうね。私も二人に聞いてみるわ」
とりあえず午前中の授業に集中しなきゃってことで話がまとまったところでマリエルちゃんの姿が見えた。
「クリステアさん、セイさん、おはようございます!」
「おはよう、マリエル嬢」
「マリエルさん、おはようございます。昨日はごめんなさいね、それと……」
昨日一緒に勉強できなかったことを謝って、同じクラスになることを話そうと思った矢先にマリエルちゃんが顔の前でにこやかに手を振りながら言った。
「いえ、お気になさらないでください。そうそう、聞きましたよ! 今日の午後、聖獣様のお披露目をするんでしょう? 昨日の夕食の時間、食堂ではその噂で持ち切りでしたよ!」
マリエルちゃんの言葉に、私とセイはピシリと固まった。
「……は?」
「え……? 今日の、午後……?」
「ええ、皆そう言って、絶対見に行くって……違うんですか?」
「「えええええ⁉︎」」
昨日の今日だなんて、聞いてないよ⁉︎
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今週7/8(木)にコミカライズ版更新予定!
よろしくお願いします!
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