転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

文字の大きさ
上 下
197 / 386
連載

モテる女はつらいよ

しおりを挟む
自室に戻った私はさっそく皆にクラス分けのことを話した。
「ほう、あの娘が同じ組? それは重畳」
「そっかぁ、まりえるといっしょでよかったね!」
「セイ様やマリエル様とご一緒でしたら安心ですね!」
皆も嬉しそうだ。
「ええ、本当によかったわ。皆と違うクラスになったらさみしいもの」
聖獣契約者ということもあって、セイとは同じクラスになるんだろうなと予想していたけど、マリエルちゃんも一緒になるとは思わなかったからすっごく嬉しい!
ニール先生はSクラスは他のクラスより人数が少ないって言っていたから、その人たちともできれば仲良くしたいなぁ。
成績優秀者ばかりらしいから「ライバルと仲良くできるか!」なんて敵対心持たれなきゃいいけど……
「それで、我らの要望に関してはどうなったのだ?」
黒銀くろがねに聞かれて、浮かれて失念したまま部屋に戻らなくて本当によかったとセイに心の中で感謝した。
「ええと、そのことなんだけど、学園内を自由に移動することに関しては問題なさそうなの。でも、もう一つの危害を加えてもお咎めなしっていうのは難しいんじゃないかって、ニール先生が……明日、学園長に相談してみるそうよ」
「そうか」
「へーんなの。おれたちにてをだそうとするやつらがわるいのに、やっつけたらおれたちがおこられるの?」
う……真白ましろの疑問もごもっとも。
真白ましろたちからしてみればまとわりつく虫を払う程度の感覚なのだろうけれど、きっと払われたは払われただけでとんでもない目にあうかもしれないからね……
そうなると、いくら聖獣といえども契約者がいる以上、学園内での私闘で相手に危害を加えたとして処罰の対象になりかねない。
もちろん、契約獣に手を出そうものならその加害者だって処罰は免れないだろうけど。
問題は、契約獣だけじゃなく契約者である私も処罰の対象になることよね。
きっとこの二人のことだから、私に非がないのに処罰されるとなると黙っていないはず。
最終的には私に迷惑をかけたと落ち込むのまで目に見えている。
どう説明したものかと悩んでいると、ミリアがおずおずと前に出た。
真白ましろ様……あの、もし何かあれば叱られるのは聖獣の皆様ではなく、クリステア様やセイ様になると思います」
「ミリア⁉︎」
いつもなら静かに様子を見ているだけのことが多いのに。
「……どうして? おれたちがわるいやつをやっつけてどうしてくりすてあがしかられるの? もんくがあるならおれにいえばいい!」
真白ましろがガタッと立ち上がり、ゆらりと殺気をまとわせはじめたところを黒銀くろがねが抑えた。
「落ち着け真白ましろ。以前主が言っておっただろう。我らが何かしでかせば契約主である主が処罰されると」
黒銀くろがねはハッとした様子の真白ましろの肩を掴んでソファに座らせた。
「だって……だって、くりすてあもおれたちもわるくなくても? それでもくりすてあがしかられちゃうなんておかしいよ!」
「そうだ。だから我らが反撃しても我らに非はないものとして、主が処罰されぬようにせねばならんのだ」
え……お咎めなしって条件は私のためなの?
黒銀くろがねの言葉に真白ましろは口を尖らせた。
「でも、むずかしいんだよね?」
「どうであろうな。明日、ニールの交渉次第になるだろうが……」
「……おれ、いまからあいつのとこにいってぜったいこうしょうせいこうさせろっていってくる!」
真白ましろが再び立ち上がろうとするのを黒銀くろがねが頭を掴んで押さえつけた。
「まあ待つがいい。白虎の奴が言い出したことだ、何か考えがあるのだろう。出方を待とうではないか」
「ええー? びゃっこはばかだからかんがえてないとおもうけど?」
……私も真白ましろの意見に賛成だわ。
万が一、何か考えていたとしても、ろくでもないことだったりする可能性のほうが高い気がするもの。
「……その点については否定できぬが、我らだけで暴走してもよいことにはならん。この時ばかりは結束すべきだろうよ。明日、彼奴らと話し合うことにしようぞ」
「むうぅ……」
ほおを膨らませて黙り込む真白ましろ
ああ、美少年のふくれっつらって可愛い……
黒銀くろがね真白ましろの頭を押さえたままだった手をポンポンしてる……あっ払われた。
なんだかんだ言っててもこの二人、結構仲良くなってる気がするなぁ。
私が微笑ましく二人を見つめていると、真白ましろがポンッと聖獣化して私のところへ駆け寄ってきた。
『くりすてあーくろがねがいじめるー』
「誰もいじめてなどおらぬだろうが!」
私は焦る黒銀くろがねを見て笑いながら真白ましろを抱き上げた。
「あらあら。黒銀くろがねは皆のことを思って言ってくれたのだからいじめてなんてないでしょう?」
『んーん、あたまぽんぽんたたいた!』
真白ましろは小首を傾げてそのまま私を見つめながらもたれかかった。
くっ……あざとい!
真白ましろったら、どこでそんなあざとい仕草を覚えてくるの⁉︎
「そ、そう……じゃあ、痛いの痛いの飛んでいけー」
私が内心悶えながらも、頭を魔力を込めながら撫でると、真白ましろは気持ちよさそうに目を閉じた。
『えへへ、きもちいー』
「ふふふ、よかった」
「む……謀ったな、真白ましろ!」
私たちの様子を見ていた黒銀くろがねまで聖獣の姿になって私にまとわりついてきた。
『くろがね、じゃま!』
真白ましろがそう言って黒銀くろがねをゲシゲシと蹴った。
これこれ、やめなさいってば。
私は慌てて真白ましろ黒銀くろがねから離す。
『主、真白ましろの奴に蹴られた。我にも今のをやってくれ』
黒銀くろがねはそう言って頭をぐいっと私のほうに向ける。
「え?」
えーと……痛いの痛いの飛んでけーって、あれ?
『くろがねはいしあたまだから、やるひつよう、ない!』
真白ましろは更に蹴りを繰り出そうとするので、黒銀くろがねからできるだけ離しつつ、魔力を込めながら黒銀くろがねにもおまじないをしてあげた。
『うむ。これはいい。主のお陰でよくなった』
「そう、よかったわね」
『くりすてあー、おれにもっとやって?』
真白ましろ……もう痛くないでしょ?」
『いたくないけど……もっと!』
そう言って頭をぐりぐりしてくる真白ましろの可愛さよ……あざと可愛いすぎぃ!
『ぬう。ならば我もだ!』
黒銀くろがねまで身体を押しつけてきた。
黒銀くろがね、お前もか!
はー(聖獣に)モテる女はつらいわね……
私はしばらくの間、二人を撫でまくるハメになったのだった。
しおりを挟む
感想 3,380

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

生前SEやってた俺は異世界で…

大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん
ファンタジー
旧タイトル 前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~ ※書籍化に伴い、タイトル変更しました。 書籍化情報 イラストレーター SamuraiG さん 第一巻発売日 2017/02/21 ※場所によっては2、3日のずれがあるそうです。  職業・SE(システム・エンジニア)。年齢38歳。独身。 死因、過労と不摂生による急性心不全…… そうあの日、俺は確かに会社で倒れて死んだはずだった…… なのに、気が付けば何故か中世ヨーロッパ風の異世界で文字通り第二の人生を歩んでいた。 俺は一念発起し、あくせく働く事の無い今度こそゆったりした人生を生きるのだと決意した!! 忙しさのあまり過労死してしまったおっさんの、異世界まったりライフファンタジーです。 ※2017/02/06  書籍化に伴い、該当部分(プロローグから17話まで)の掲載を取り下げました。  該当部分に関しましては、後日ダイジェストという形で再掲載を予定しています。 2017/02/07  書籍一巻該当部分のダイジェストを公開しました。 2017/03/18  「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」の原文を撤去。  新しく別ページにて管理しています。http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/258103414/  気になる方がいましたら、作者のwebコンテンツからどうぞ。 読んで下っている方々にはご迷惑を掛けると思いますが、ご了承下さい。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました

あさひな
ファンタジー
二児の子供がいるワーキングマザーの私。仕事、家事、育児に忙殺され、すっかりくたびれた中年女になり果てていた私は、ある日事故により異世界転生を果たす。 転生先は、前世とは縁遠い公爵令嬢「イザベル・フォン・アルノー」だったが……まさかの乙女ゲームの悪役令嬢!? しかも乙女ゲームの内容が全く思い出せないなんて、あんまりでしょ!! 破滅フラグ(攻略対象者)から逃げるために修道院に逃げ込んだら、子供達の扱いに慣れているからと孤児達の世話役を任命されました。 そりゃあ、前世は二児の母親だったので、育児は身に染み付いてますが、まさかそれがチートになるなんて! しかも育児知識をフル活用していたら、なんだか王太子に気に入られて婚約者に選ばれてしまいました。 攻略対象者から逃げるはずが、こんな事になるなんて……! 「貴女の心は、美しい」 「ベルは、僕だけの義妹」 「この力を、君に捧げる」 王太子や他の攻略対象者から執着されたり溺愛されながら、私は現世の運命に飲み込まれて行くーー。 ※なろう(現在非公開)とカクヨムで一部掲載中

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。