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き、気まずい……!
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皆が笑ったことで今までの重い空気が少し軽くなったような気がする。
ああ、よかった。
実の兄妹じゃないって聞かされてすごく驚いたけれど、実際には従兄だったわけだし……
これからも私のお兄様だってことは変わらないわよね。うん。
そう納得した私は、緊張でカラカラに乾いたのどを潤そうと、紅茶の入ったカップに口をつけた。
あらら、すっかりぬるくなっちゃってる。
私はのどが乾いていたから、これくらいのほうがごくごく飲みやすいからいいけど、皆の分はメイドを呼んで淹れなおしてもらわないと……
ほっとした私がのんびりそんなことを考えていると、お兄様が表情を引き締めて皆を見た。
「……そういうわけで、クリステアと僕は実の兄妹じゃない。僕の実の両親のことや僕が公爵家の養子になった経緯は貴族の間でかなり噂になったそうだから、特に秘密にしようとしていたわけじゃないんだ」
確かに、新興貴族のマリエルちゃんが知っていたくらいだから、叔母様の駆け落ち騒動や事故については、おそらく貴族の間で醜聞として瞬く間に広まってしまったのだろう。
人の口に戸は立てられぬと言うし、秘密にしたくてもできなかっただろうな……
今ではわかりきったことだし、敢えて口に出す人がいなかったってだけのことだろう。
その点については納得できる話だから、お兄様やお父様たちを恨むつもりはない。
「クリステアは魔力量過多で制御ができない危険から、王都を離れ長く領地にこもることになったこともあって、僕たちは家族なのだからわざわざいらぬことを伝える必要はないと思っていたんだ。それに、使用人たちもそういう無駄口を叩く者はいなかったから、これまでクリステアが知る機会はなかったんだ。だけど、こんな形で知ることになって……驚かせてしまってすまなかった。もっと早くに伝えるべきだったのに……」
「わ、私が悪いんです! 迂闊な発言をしてしまったのは私です、申し訳ございませんでした……!」
お兄様とマリエルちゃんが頭を下げるのを、私は慌てて止めた。
「お兄様、頭を上げてくださいませ! マリエルさんも! 確かにびっくりしましたけれど、お兄様が私のお兄様であることは変わりませんもの。ね? 今までどおりですわ」
私は二人の心の負担にならないよう、にこやかに言った。
「今までどおり……」
え? お兄様、喜んでくださると思ったのに、どうしてそんな複雑そうなお顔をなさるの?
「……そうか。そうだね、うん。今までどおりか……」
「クリステア様……」
え? マリエルちゃんまでなんでそんな残念そうな目で私を見るの?
殿下とセイはなんとも言えない表情で黙り込んでお兄様と私を交互に見ているし……え、なんなの? 私変なこと言った⁉︎
すごく気まずいんですけど⁉︎
「あ、あの! そろそろ皆様お腹が空きませんか? 料理をお出ししても?」
微妙な空気に耐えられず、昼食を摂ることを提案した。
やっぱり場を和ませるのはごはんだもんね!
お腹が空いてたらろくなこと考えないだろうし。
「ああ、うん……」
「そ、そうですね! そうしましょう!」
マリエルちゃんが嬉しそうに目を輝かせて答えたのをきっかけに、皆が気を取り直したように感じ、私は変な空気が戻らないようインベントリに収納していたからあげ、ポテトサラダ、卵焼き、コンソメスープ、おにぎりを手早く取り出した。
ピクニックに行くときにサッと詰められるようたくさん作ってストックしてあったそれらを大皿に盛ったまま、テーブルにどどん! と並べた。
各自取り皿に取り分けるビュッフェスタイルだ。
どれも若者に人気の定番メニューだ。食べられないことはないだろう。
重い空気を払拭するためにも、同じ皿から取るスタイルのほうがきっと賑やかに食べられるはずだ。
私はコンソメスープをスープカップに注ぐと、マリエルちゃんが皆に配って回った。
「殿下、取り分けましょうか? 毒見は?」
お兄様が殿下にうやうやしく尋ねると、殿下は不貞腐れたように自ら皿とお箸を手にした。
「バカにするな。ここでは俺も同じ立場なんだからな。それに、クリステア嬢の作った料理に毒なんて入ってるわけがないだろう」
そう言って殿下は手にした箸で器用にからあげをひょいっと取った。
「まあ殿下、お箸の使い方がお上手ですね」
我が領地で使い方を教えたことがあるけれど、あれから随分経っているから使い方を忘れているだろうと思って、殿下用にフォークも出していたのに、迷わずお箸を手にしたのは意外だった。
それに、使い方も前より上達しているような……
「ああ、視察から戻ってからノーマンと時々練習していたからな。皆、俺たちが何をしてるのかとびっくりしてたぞ」
殿下はニヤッと笑った。
そりゃそうよね。
お箸文化のないこの国でお箸使っていたら、何をしてるんだろうと面食らうに違いないもの。
お兄様も箸使いが上達していると思っていたけれど、まさか殿下と一緒に練習していたとは……
「またクリステア嬢と食事をする時に驚かせようと思ってな」
「ええ、お上手になっていて驚きました」
「だろう?」
殿下はドヤ顔でからあげを次々と取り皿に入れるのをお兄様が止めた。
「殿下、他のおかずも取ってください。からあげばかりではないですか」
「い、今から取ろうと思ってたんだ」
お兄様に指摘された殿下はそそくさと他のおかずも取りはじめた。
まあ、男の子は肉好きだもんねぇ。
殿下が取り終えると、お兄様、セイ、マリエルちゃんの順におかずを取り、私もおかずを取り終えたところで食べ始めた。
「……うんまっ。このからあげ美味いな!」
「うん、やっぱりからあげは美味しいね」
「何⁉︎ お前、まさか屋敷でからあげを食べてたのか! こんな美味いものを食べてたなんてずるいぞ!」
「兄の僕がクリステアの愛情こもった手料理をいただくのは当然でしょう。ね? クリステア」
「え? は、はい」
ほっ、お兄様楽しそうでよかった……
「クリステア様、ポテトサラダ美味しいです……! やはり、マヨは正義……!」
「そ、それはよかったわね……」
マリエルちゃん……悪いことは言わない、ポテトサラダを山盛りにするのはやめよう?
目が潤んでとても可愛らしい見た目なのに、皿の上にそびえ立つポテサラマウンテンで台無しだよ⁉︎
「うん、どれも美味しい。卵焼きも絶品だ」
「セイ様、ありがとうございます」
セイはさすが綺麗な箸使いだね。
綺麗な所作なのに次々とおかずが消えていくのは、さすが男の子ってところかしら。
思わぬハプニングがあったけれど、ランチタイムは概ね楽しく過ごすことができたのだった。
---------------------------
2月11日に更新されたコミカライズ版「転生令嬢は庶民の味に飢えている」、本編とチラッと内容がリンクしております。
お楽しみいただけましたでしょうか?
待望のコミックス二巻は三月下旬発売予定!
二巻では、原作で確認できなかったキャラクターの姿が……!
ぜひコミックスでご確認くださいね( ´ ▽ ` )
ああ、よかった。
実の兄妹じゃないって聞かされてすごく驚いたけれど、実際には従兄だったわけだし……
これからも私のお兄様だってことは変わらないわよね。うん。
そう納得した私は、緊張でカラカラに乾いたのどを潤そうと、紅茶の入ったカップに口をつけた。
あらら、すっかりぬるくなっちゃってる。
私はのどが乾いていたから、これくらいのほうがごくごく飲みやすいからいいけど、皆の分はメイドを呼んで淹れなおしてもらわないと……
ほっとした私がのんびりそんなことを考えていると、お兄様が表情を引き締めて皆を見た。
「……そういうわけで、クリステアと僕は実の兄妹じゃない。僕の実の両親のことや僕が公爵家の養子になった経緯は貴族の間でかなり噂になったそうだから、特に秘密にしようとしていたわけじゃないんだ」
確かに、新興貴族のマリエルちゃんが知っていたくらいだから、叔母様の駆け落ち騒動や事故については、おそらく貴族の間で醜聞として瞬く間に広まってしまったのだろう。
人の口に戸は立てられぬと言うし、秘密にしたくてもできなかっただろうな……
今ではわかりきったことだし、敢えて口に出す人がいなかったってだけのことだろう。
その点については納得できる話だから、お兄様やお父様たちを恨むつもりはない。
「クリステアは魔力量過多で制御ができない危険から、王都を離れ長く領地にこもることになったこともあって、僕たちは家族なのだからわざわざいらぬことを伝える必要はないと思っていたんだ。それに、使用人たちもそういう無駄口を叩く者はいなかったから、これまでクリステアが知る機会はなかったんだ。だけど、こんな形で知ることになって……驚かせてしまってすまなかった。もっと早くに伝えるべきだったのに……」
「わ、私が悪いんです! 迂闊な発言をしてしまったのは私です、申し訳ございませんでした……!」
お兄様とマリエルちゃんが頭を下げるのを、私は慌てて止めた。
「お兄様、頭を上げてくださいませ! マリエルさんも! 確かにびっくりしましたけれど、お兄様が私のお兄様であることは変わりませんもの。ね? 今までどおりですわ」
私は二人の心の負担にならないよう、にこやかに言った。
「今までどおり……」
え? お兄様、喜んでくださると思ったのに、どうしてそんな複雑そうなお顔をなさるの?
「……そうか。そうだね、うん。今までどおりか……」
「クリステア様……」
え? マリエルちゃんまでなんでそんな残念そうな目で私を見るの?
殿下とセイはなんとも言えない表情で黙り込んでお兄様と私を交互に見ているし……え、なんなの? 私変なこと言った⁉︎
すごく気まずいんですけど⁉︎
「あ、あの! そろそろ皆様お腹が空きませんか? 料理をお出ししても?」
微妙な空気に耐えられず、昼食を摂ることを提案した。
やっぱり場を和ませるのはごはんだもんね!
お腹が空いてたらろくなこと考えないだろうし。
「ああ、うん……」
「そ、そうですね! そうしましょう!」
マリエルちゃんが嬉しそうに目を輝かせて答えたのをきっかけに、皆が気を取り直したように感じ、私は変な空気が戻らないようインベントリに収納していたからあげ、ポテトサラダ、卵焼き、コンソメスープ、おにぎりを手早く取り出した。
ピクニックに行くときにサッと詰められるようたくさん作ってストックしてあったそれらを大皿に盛ったまま、テーブルにどどん! と並べた。
各自取り皿に取り分けるビュッフェスタイルだ。
どれも若者に人気の定番メニューだ。食べられないことはないだろう。
重い空気を払拭するためにも、同じ皿から取るスタイルのほうがきっと賑やかに食べられるはずだ。
私はコンソメスープをスープカップに注ぐと、マリエルちゃんが皆に配って回った。
「殿下、取り分けましょうか? 毒見は?」
お兄様が殿下にうやうやしく尋ねると、殿下は不貞腐れたように自ら皿とお箸を手にした。
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殿下はニヤッと笑った。
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お兄様も箸使いが上達していると思っていたけれど、まさか殿下と一緒に練習していたとは……
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まあ、男の子は肉好きだもんねぇ。
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「……うんまっ。このからあげ美味いな!」
「うん、やっぱりからあげは美味しいね」
「何⁉︎ お前、まさか屋敷でからあげを食べてたのか! こんな美味いものを食べてたなんてずるいぞ!」
「兄の僕がクリステアの愛情こもった手料理をいただくのは当然でしょう。ね? クリステア」
「え? は、はい」
ほっ、お兄様楽しそうでよかった……
「クリステア様、ポテトサラダ美味しいです……! やはり、マヨは正義……!」
「そ、それはよかったわね……」
マリエルちゃん……悪いことは言わない、ポテトサラダを山盛りにするのはやめよう?
目が潤んでとても可愛らしい見た目なのに、皿の上にそびえ立つポテサラマウンテンで台無しだよ⁉︎
「うん、どれも美味しい。卵焼きも絶品だ」
「セイ様、ありがとうございます」
セイはさすが綺麗な箸使いだね。
綺麗な所作なのに次々とおかずが消えていくのは、さすが男の子ってところかしら。
思わぬハプニングがあったけれど、ランチタイムは概ね楽しく過ごすことができたのだった。
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2月11日に更新されたコミカライズ版「転生令嬢は庶民の味に飢えている」、本編とチラッと内容がリンクしております。
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