134 / 375
連載
呼び出し
しおりを挟む
食事が終わった後、ニール先生が「聖獣様のお話を是非聞かせてもらいたいなぁ~」と興味津々で近づいてきた。
食事中も白虎様や朱雀様に話しかけていたり、黒銀や真白に質問していたけれど、素気無くされていたのに……ニール先生ってメンタル強いわ~。
だけど、ニール先生に付き合っていたら際限なさそうだし、白虎様にあとで呼び出されてのでお断りだわ。
「申し訳ありませんが、明日のこともありますから早めに休みますわ」
「ええ~、そうかい? うーん、まあ今日のところはしかたないか。また後日ゆっくり話を聞かせてね!」
「ええ、機会があれば……では失礼いたしますわ」
私はめげずに次の約束をしようとするニール先生に笑ってごまかしつつ自室に戻った。
「はあ……食事をしただけなのに疲れちゃった」
ため息をつきつつ、ぽすんとソファに腰掛けると、私の隣に真白が、対面に黒銀が座った。
「久々にまずいメシを食うたわ……いや、あのようなものは食ったうちに入らぬな」
「だよね。ねぇ、くりすてあ。くりすてあのおいしいごはんたべたいな?」
「うむ。主の極上のメシを喰わねばおさまらぬ」
「はいはい。頑張って食べてはみたけれど完食できなかったし、私も少し食べちゃおうかな……」
私は二人のためにインベントリからオーク汁とおにぎりを出し、私はオーク汁だけいただくことにした。
「はあ……これよこれ。やっぱり具沢山のオーク汁は正義だわぁ」
食べなれた味にほっとしていると、黒銀と真白も満面の笑顔で食べていた。
「そうだな。オーク汁もだが、主の料理を食べると力が湧く」
「うん。くりすてあのごはんがいちばん!」
「うふふ、ありがとう。……でもこれからどうしようかなぁ。毎日あの食事をして、また今みたいに追加で食べるのはちょっと、ねぇ……」
そんなことしていたら、おでぶ街道まっしぐらだ。それに、毎回残すのは気が引けるもの。
かと言って、寮の食堂の料理を改善なんて新入生の私が口出しなんてできないし……
インベントリには大量にストックしているから食べ物には困らないけれど、寮の食事をまったく食べないってわけにはいかないよねぇ……
「ふむ。この部屋で摂るので食事は不要と言えばよいのではないか?」
「くりすてあがごはんつくれたらいいのに……」
「そうできたら一番いいのだけれど、さすがに家じゃないから、貴族の私が寮で料理するわけにはいかないわよ」
今でこそ何も言われないけれど、はじめの頃はお母様に散々叱られたもの。
「れしぴをうってるんだし、いいんじゃない?」
「我らが主の料理でなければ喰わぬと申し立てれば許可が降りるのではないか?」
「ええ……? そうかなぁ……?」
まあ、実際レシピの件はニール先生にも知られていたけれど、私が日常的に料理をしているとは思ってないだろうし、許可なんて降りるのかしら。
ダメ元で聞いてみるとして、まずは明日の学園長との面会をどうにかしないとだよね……
「主、そろそろ談話室に行くのではないか? 白虎が待っているのだろう?」
「あ、そうだったわね。行きましょう」
いけないいけない、白虎様に呼び出されているんだった。
私たちはそうっと部屋を出て、談話室に向かった。
静かに談話室の扉を開けると、中には白虎様だけではなく、セイと朱雀様もいた。
するりと中へ入り込み扉を閉めると、白虎様が結界を展開したのがわかった。
「よう、元気そうで何より……イテッ!」
白虎様が朗らかに声を掛けたのを、セイがベシッと叩いた。
「まったくおぬしは……クリステア嬢、いきなり呼び出してすまないな」
叩かれた頭をさする白虎様を横目に、セイがソファから立ち上がり深く頭を下げて謝罪した。
「気にしないで、セイ。私も気になっていたから色々聞きたくて来たんだもの」
私はセイたちの対面のソファに座った。
「ああ、今日は色々あって驚いただろう。それについても謝ろうと思っていた」
「え?」
「クリステア嬢の聖獣契約が露見したのはきっと俺たちが原因だ」
「ええっ?」
どういうこと?
困惑する私に、セイがすまなそうに説明し始めた。
「先日、俺は普通に入寮に入るつもりで男子寮に向かったんだが、従者として白虎と朱雀を連れていたんだ。そこへニール先生があの猿を連れて駆け寄って来て……」
「猿って、あのディミッドモンキー?」
私は門でニール先生が連れていたお猿さんを思い出した。
「そーなんだよ! あのキーキーとうるせぇ猿がさあ、俺らのことを察知しやがって。そんでセイが契約者ってバレちまったんだ」
白虎様がぶーたれた様子で説明を続けた。
「あいつ、キーキー喚き立てる猿を引っ掴んで駆け寄ってきやがった。俺らに近づくにつれて悲鳴が大きくなるもんだから、すぐにバレちまってよぉ」
それからは、私たちと同様に「ちょっと話があるからついて来てくれるかな?」と特別寮に連れて行かれ、聖獣契約のことが明るみになってしまったらしい。
小さくて弱い魔物をペットにする貴族も中にはいるそうで、こっそり持ち込もうとする生徒もいるから、そういうのをニール先生が各寮をチェックして家に帰すように指導するか、ニール先生に預けなくてはいけないらしい。大抵は家に帰されるそうだけど。
ニール先生に預けるのは不安しかないから気持ちはわからないでもない。
それと、青龍様と玄武様がいないのは、従者としてたまたま顕現していなかったから今も秘密にしているからなんだって。
「……で、俺たちは特別寮に転寮することが決まったんだ。その時、魔物の持ち込みチェックを強化すべきか各寮の寮監と話し合っていた」
「ああ、それで……」
ニール先生が入寮する生徒をチェックしようと門に控えていたってことなのね。
「すまない、俺たちのせいでクリステア嬢にも迷惑をかけた」
「セイたちのせいじゃないわ。たまたま運が悪かったのよ。それに、あのお猿さんがいる以上、私たちだって遅かれ早かれ見つかっていただろうし……」
あれだけ騒がれたらもう誤魔化しようがないものね。
「セイと同じ寮になれたのは不幸中の幸いだと思いましょう。そうだ、お腹は空いてない? さっき、あまり食べていなかったのではないの? 何か食べる?」
「さっすがお嬢! もーあんなメシ食ってられっかってんだよなぁ! なんか食わせてくれ!」
「ああ! クリステア様ったら、なんてお優しいのかしら! ありがとうございます!」
「お前たちは少しは自重せんか!」
セイが二人を叱るのを見て、苦笑しながらインベントリから料理を出したのだった。
食事中も白虎様や朱雀様に話しかけていたり、黒銀や真白に質問していたけれど、素気無くされていたのに……ニール先生ってメンタル強いわ~。
だけど、ニール先生に付き合っていたら際限なさそうだし、白虎様にあとで呼び出されてのでお断りだわ。
「申し訳ありませんが、明日のこともありますから早めに休みますわ」
「ええ~、そうかい? うーん、まあ今日のところはしかたないか。また後日ゆっくり話を聞かせてね!」
「ええ、機会があれば……では失礼いたしますわ」
私はめげずに次の約束をしようとするニール先生に笑ってごまかしつつ自室に戻った。
「はあ……食事をしただけなのに疲れちゃった」
ため息をつきつつ、ぽすんとソファに腰掛けると、私の隣に真白が、対面に黒銀が座った。
「久々にまずいメシを食うたわ……いや、あのようなものは食ったうちに入らぬな」
「だよね。ねぇ、くりすてあ。くりすてあのおいしいごはんたべたいな?」
「うむ。主の極上のメシを喰わねばおさまらぬ」
「はいはい。頑張って食べてはみたけれど完食できなかったし、私も少し食べちゃおうかな……」
私は二人のためにインベントリからオーク汁とおにぎりを出し、私はオーク汁だけいただくことにした。
「はあ……これよこれ。やっぱり具沢山のオーク汁は正義だわぁ」
食べなれた味にほっとしていると、黒銀と真白も満面の笑顔で食べていた。
「そうだな。オーク汁もだが、主の料理を食べると力が湧く」
「うん。くりすてあのごはんがいちばん!」
「うふふ、ありがとう。……でもこれからどうしようかなぁ。毎日あの食事をして、また今みたいに追加で食べるのはちょっと、ねぇ……」
そんなことしていたら、おでぶ街道まっしぐらだ。それに、毎回残すのは気が引けるもの。
かと言って、寮の食堂の料理を改善なんて新入生の私が口出しなんてできないし……
インベントリには大量にストックしているから食べ物には困らないけれど、寮の食事をまったく食べないってわけにはいかないよねぇ……
「ふむ。この部屋で摂るので食事は不要と言えばよいのではないか?」
「くりすてあがごはんつくれたらいいのに……」
「そうできたら一番いいのだけれど、さすがに家じゃないから、貴族の私が寮で料理するわけにはいかないわよ」
今でこそ何も言われないけれど、はじめの頃はお母様に散々叱られたもの。
「れしぴをうってるんだし、いいんじゃない?」
「我らが主の料理でなければ喰わぬと申し立てれば許可が降りるのではないか?」
「ええ……? そうかなぁ……?」
まあ、実際レシピの件はニール先生にも知られていたけれど、私が日常的に料理をしているとは思ってないだろうし、許可なんて降りるのかしら。
ダメ元で聞いてみるとして、まずは明日の学園長との面会をどうにかしないとだよね……
「主、そろそろ談話室に行くのではないか? 白虎が待っているのだろう?」
「あ、そうだったわね。行きましょう」
いけないいけない、白虎様に呼び出されているんだった。
私たちはそうっと部屋を出て、談話室に向かった。
静かに談話室の扉を開けると、中には白虎様だけではなく、セイと朱雀様もいた。
するりと中へ入り込み扉を閉めると、白虎様が結界を展開したのがわかった。
「よう、元気そうで何より……イテッ!」
白虎様が朗らかに声を掛けたのを、セイがベシッと叩いた。
「まったくおぬしは……クリステア嬢、いきなり呼び出してすまないな」
叩かれた頭をさする白虎様を横目に、セイがソファから立ち上がり深く頭を下げて謝罪した。
「気にしないで、セイ。私も気になっていたから色々聞きたくて来たんだもの」
私はセイたちの対面のソファに座った。
「ああ、今日は色々あって驚いただろう。それについても謝ろうと思っていた」
「え?」
「クリステア嬢の聖獣契約が露見したのはきっと俺たちが原因だ」
「ええっ?」
どういうこと?
困惑する私に、セイがすまなそうに説明し始めた。
「先日、俺は普通に入寮に入るつもりで男子寮に向かったんだが、従者として白虎と朱雀を連れていたんだ。そこへニール先生があの猿を連れて駆け寄って来て……」
「猿って、あのディミッドモンキー?」
私は門でニール先生が連れていたお猿さんを思い出した。
「そーなんだよ! あのキーキーとうるせぇ猿がさあ、俺らのことを察知しやがって。そんでセイが契約者ってバレちまったんだ」
白虎様がぶーたれた様子で説明を続けた。
「あいつ、キーキー喚き立てる猿を引っ掴んで駆け寄ってきやがった。俺らに近づくにつれて悲鳴が大きくなるもんだから、すぐにバレちまってよぉ」
それからは、私たちと同様に「ちょっと話があるからついて来てくれるかな?」と特別寮に連れて行かれ、聖獣契約のことが明るみになってしまったらしい。
小さくて弱い魔物をペットにする貴族も中にはいるそうで、こっそり持ち込もうとする生徒もいるから、そういうのをニール先生が各寮をチェックして家に帰すように指導するか、ニール先生に預けなくてはいけないらしい。大抵は家に帰されるそうだけど。
ニール先生に預けるのは不安しかないから気持ちはわからないでもない。
それと、青龍様と玄武様がいないのは、従者としてたまたま顕現していなかったから今も秘密にしているからなんだって。
「……で、俺たちは特別寮に転寮することが決まったんだ。その時、魔物の持ち込みチェックを強化すべきか各寮の寮監と話し合っていた」
「ああ、それで……」
ニール先生が入寮する生徒をチェックしようと門に控えていたってことなのね。
「すまない、俺たちのせいでクリステア嬢にも迷惑をかけた」
「セイたちのせいじゃないわ。たまたま運が悪かったのよ。それに、あのお猿さんがいる以上、私たちだって遅かれ早かれ見つかっていただろうし……」
あれだけ騒がれたらもう誤魔化しようがないものね。
「セイと同じ寮になれたのは不幸中の幸いだと思いましょう。そうだ、お腹は空いてない? さっき、あまり食べていなかったのではないの? 何か食べる?」
「さっすがお嬢! もーあんなメシ食ってられっかってんだよなぁ! なんか食わせてくれ!」
「ああ! クリステア様ったら、なんてお優しいのかしら! ありがとうございます!」
「お前たちは少しは自重せんか!」
セイが二人を叱るのを見て、苦笑しながらインベントリから料理を出したのだった。
111
お気に入りに追加
14,014
あなたにおすすめの小説
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。