転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

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着信あり……?

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魔導電話の魔石がチカチカと光っている。
「えっと、こっちは……ニール先生から?」
近寄って確認すると、どうやらニール先生がかけている模様。
「え……なんだろ?」
どうしよう、着信拒否したい。
……じゃなくて。
出なきゃだめだよね、これ……?
今度こそ真白ましろ達のことで質問攻めになるんじゃないかと警戒しながら、恐る恐る魔導電話の魔石に触れた。
「……はい、なんでしょう?」
『あっよかった~出てくれた。ミセス・ドーラから使い方の説明を受けてたんだね』
「ええ、簡単にですけれど……何かご用ですか?」
ニール先生ののほほんとした様子に拍子抜けしつつ用件を尋ねた。
『ああ、うん。料理が届いたんだ。せっかくだから、特別寮の皆で親睦も兼ねて一緒に食べないかなって思ってね』
そういえば、食事を運ばせるって言ってたっけ。
ええ~……ニール先生と?
食事中質問攻めになりそうだし、できれば遠慮したい……あ、でも皆でってことは、セイ達も一緒ってことよね?
「……わかりました。階下に向かえばよろしいでしょうか?」
『うん、談話室の隣の部屋にいるからね~』
ニール先生はそう言って通信を切った。
真白ましろ黒銀くろがね。聞こえたと思うけど、皆で食事を摂ることになったから」
「いいのか? 彼奴とはあまり関わりたくないのではないか?」
「うん、まあそれはそうなんだけど……一応先生だし、これからお世話になるのだから少しは交流しないといけないだろうし……それに、セイ達も一緒みたいだから」
「くりすてあがいいならおれたちはいいけど……あいつ、うっとおしそう」
私も真白ましろに同意するわ。
でもあの手のタイプは放置しているとエスカレートしそうだから、ある程度知識欲を満たしてから釘を刺しておくほうがいいんじゃないかなって思うのよね。
私が二人にそう説明すると、気が向かないようだけど渋々承諾してくれた。
ティーセットを片付けてから、玄関を出ると階下にセイ達がいた。
「あ、セイ……様」
「クリステア嬢もニール先生に呼ばれたのかな? 僕たちは昨日もニール先生と食事をしたんだけど……多分、質問攻めにあったから覚悟しておいたほうがいいよ」
うわあ……やっぱり。
セイのうんざりとした表情を見るに、かなりしつこかったんじゃなかろうか。
「僕は国のことがあるから、参考にはならないし詳しくは話せない、でなんとか押し切ったけれど、クリステア嬢は苦労するかもしれないな」
えええ……食事中に根掘り葉掘り質問されてうんざりするのが目に浮かぶようだわ。
恐らく聖獣契約に至ったきっかけとかそういうことを聞かれるんだろうけど……セイの契約獣である白虎様からの紹介です、なんて言えるわけがない。
ましてや、私が作る魔力のこもった料理が気に入って契約を決めた、だなんて言ったところで参考にもならないと思うんだけど。
うーんうーんと悩む私を挟むように、真白ましろ黒銀くろがねが両脇に立った。
「主が気に止むことはない。思うようにするといい」
「そうだよ。いざとなったらおれたちがだまらせるからね」
いやいや真白ましろさん⁉︎
どうやって黙らせる気かな?
物理とかはやめようね⁉︎
「……ありがと。適当に相手することにするわ」
「それがよかろう」
「くりすてあ、いつでもたよってね」
「え、ええ……」
真白ましろの不穏な発言にたじたじになっていると、談話室の隣の扉が開いた。
「あっ来たね! こっちこっち!」
ニール先生の手招きに従い部屋に入ると、真ん中に大きなダイニングテーブルがあり、料理がセットされていた。
「ここは会議室なんだけど、長年契約者がいなかったんだよねぇ。これからは食堂として使うのもいいかもしれないね!」
ニール先生はにっこりと笑顔で言うけれど、いやいや、たまにならいいかもしれないけれど、先生と同席しての食事とか落ちちかないから遠慮します!
「何がいいかわからないからとりあえず同じメニューにしてもらったけどよかったかな? さ、皆座って食べようじゃないか」
ニール先生がいわゆるお誕生日席に座り、私達はセイ達と向かい合うように着席した。

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いつも庶民の味をお読みいただき、ありがとうございます。
拙作原作のコミカライズ版一巻(作画:住吉文子先生)がいよいよ3月31日に発売です!
都心部では早売りの書店では既に入荷しているようですが、皆様のお手元に届くのは大体31日頃になりそうです。
それに伴いWEBで連載していた分は1話のみ無料公開となっております。
幼女なのに割烹着の似合う転生令嬢の活躍を是非お楽しみくださいね!( ´ ▽ ` )

そして! 4月7日頃、文庫版の一巻が発売になります!
内容は書籍版と同じですが、こちらには書き下ろしの番外編が収録されております。
クリステアの侍女ミリア視点のお話です。ミセス・ドーラも出ていたり……(小声)
書店で見かけた際はよろしくお願いします~( ´ ▽ ` )
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