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お仲間

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「仲間……ですか?」
セイがニール先生に呼ばれて談話室に入ってくると、朱雀様と白虎様が後に続いて入室してきた。
セイはドリスタンで一般的に着られているシャツにトラウザーズで、髪を飾り紐で一つにまとめていた。
白虎様と朱雀様も同様に普通のシャツにトラウザーズを身にまとっていた。
朱雀様はここでもその格好なんですね?
男装の麗人みたいでかっこいいけれど、思春期の少年達には目の毒だと思うんですけど……?
それにしても……うわぁ、こんなに早く対面することになるとは。
「そうなんだよ! ここにいる彼女も君と同じ聖獣契約者なんだ! はあぁ……この寮に聖獣様がこんなに集まるだなんて、夢みたいだ……」
ニール先生はセイに向かって興奮したように言うと、私達……正確には真白ましろ黒銀くろがね、そして白虎様達を交互に見てうっとりしていた。
……おーい、先生?
だめだ。蕩然としてて、私達契約者のことは眼中にないみたい。しかたないなぁ。
私はすっと立ち上がり、セイに挨拶をした。
「改めて自己紹介いたしますわね。クリステア・エリスフィードですわ。先日バステア商会では美味しいお茶をありがとうございました。貴方も聖獣契約者でしたのね。すごい偶然だわ」
先手必勝、実は顔見知りだったと印象づけるには今のタイミングしかないよね!
「ええ、バステア商会でお会いした時も今年学園に入学すると伺って驚きましたが、まさか同じ契約者だったなんてすごい偶然ですね。これからは同級生としてよろしくお願いします」
呆れたようにニール先生を見ていたセイはすぐに私の意図を理解したらしく、私に向き直ってにこやかに応えた。
「……失礼だが、クリステアと面識が?」
お兄様が警戒心も露わに前に歩み出た。
「お兄様、セイ様とは先日バステア商会で知り合いましたの。ヤハトゥールから留学しにいらしたんですって。ヤハトゥールのお茶を淹れるのがとてもお上手なんです」
「……セイ様? それは領地の商会にいた友人の名ではなかった?」
やば。そういえばお兄様は「おセイちゃん」の時のセイを知ってるんだった!
私もついつい現世でできた初の女友達だと思って、浮かれてお兄様にも話してたからなぁ……実際は友達ではなかったわけだけど。
「……ああ、それは僕の従兄妹いとこでしょう。僕はセイノシン・シキシマと言います。ヤハトゥールでは親族で同じ字を使って名前をつける習慣があるものですから、愛称も似てしまうのです」
「……セイノシン?」
え、セイってセイノシンって名前だったの? 初耳なんだけど⁉︎
「セイノゥンシーン? シキシィマ?」
お兄様はヤハトゥール独特の、聞き慣れない発音の名前に戸惑いながら聞き返した。
「セイノシン・シキシマです。発音しづらいので、セイと呼んでください。従兄妹も同じように考え、セイと名乗ったのでしょう。ええと、先輩はクリステアさんのお兄様でいらっしゃいますか?」
セイがにこやかに言うと、お兄様は名乗っていなかったことに気づいたようで、ばつが悪そうに答えた。
「……失礼した。僕はクリステアの兄で、ノーマン・エリスフィードだ」
「ノーマン先輩、僕はヤハトゥールからきたばかりでドリスタン王国の習慣に詳しくないので、色々と教えていただけますか?」
「ああ、僕でよければ力になろう」
「よろしくお願いします」
そう言って二人は握手した。
良かった、なんとかごまかせたみたい。
それにしても、セイったら。本名がセイノシンだなんて知らなかったんだけど?
……どんな字なのかな、後で聞こうっと。
「ところでニール先生、寮の前に荷物を載せた馬車が待機しているようなのですが」
セイが思い出したように言うと、ミセス・ドーラが慌てて立ち上がった。
「まあ。きっとクリステアさんの荷物だわ。ああ、荷物を部屋まで運ばせるので鍵を借りますわね。皆さんはここでしばらくお話なさっててくださいな。クリステアさん、届いた荷物の整理は後で自分でおやりなさいね」
ミセス・ドーラはスタスタとしっかりした足取りで談話室を出ていった。
「あの、私はついて行かなくてよいのでしょうか?」
私の荷物のことなのに、すっかり置いてきぼりにされてしまい、どうしたものかとニール先生に聞いてみた。
「ああ、入学前から聖獣契約のことであれこれ騒ぎ立てられると面倒だからね。今は使用人達に顔を見せないほうがいいだろう」
「そうですか……」
確かに、ここにいる人は確実に聖獣か魔獣の契約者なわけだから、ここで私が出てきたら契約者ですと自己紹介してるようなものだものね。
でも、女子寮に届いていた私の荷物をここに運びこんだ時点でバレバレじゃないの?
「入学式が済めば君達のことは学園内に知れ渡ると思うけど、それまでは寮内で大人しくしておくほうがいいかもね。好奇心で探りにくる生徒もいるだろうけど、ここは許可された者以外は基本的に立ち入り禁止だから」
おおう、入学式まで引きこもれと……?
お兄様に学園内を案内してもらおうと思っていたのに。
「使用人といえば、この特別寮には今まで僕一人しかいなかったこともあって決まったメイドがいないんだよね」
ニール先生はそう言って肩をすくめた。
学生寮では、基本的に自分のことは自分ですることとされているけれど、貴族のボンボ……もとい、大切に育てられてきた子女は身の回りのことすらできない子も多い。
故にハウスメイド的なことをするために雇われている人や、平民で在学中にアルバイトとしてちょっとした小間使い的なことをする生徒がいるそうだ。
学園外でのアルバイトは禁止されている分、ちょっとしたお手伝いで小金を稼ぐのは黙認されているってことね。
特別寮にはそういう人が一切いないってことか……え、どうするの?
「洗濯はシーツを剥がしてまとめておけばやってもらえるんだけど、ベッドメイキングは自分でやることになるかな。それから、食事は男子寮と女子寮の間にあるサロン棟の一階が食堂になっているからそこで食べることになるね。今日のところはミセス・ドーラにお願いして、こちらに運んでもらうよ」
なるほど、食事については問題無し、と。
「でも聖獣様のための食事は各自で用意しないといけないんだけど、それは大丈夫かな?」
「え?」
「ああ、用意と言っても必要なものを申請しさえすれば学園で支給するから大丈夫さ。ほら、個体によって食べる素材が違うだろう? 何を食べるのか申請さえすれば手配してもらえるよ。牧草だろうが血の滴る生肉だろうが、何でもね。ああ、あまりに特殊なものなら自分で手配が必要だけど」
「……僕の聖獣達はこの通り人化できるし、食べるものも特別に準備する必要はないから僕が食べるのと同じものでいいと申請したんだけど……クリステア嬢の聖獣様達も同じで大丈夫なんじゃないかな?」
ニール先生が説明すると、セイが補足してくれた。
そっか、聖獣と魔獣という違いもあるし、草食と肉食では食べるものが違うものね。真白ましろ黒銀くろがねも、白虎様達も普通に私の作ったご飯を食べていたから失念してたわ。
入学してからもインベントリのストックを出して、定期的に屋敷でストックを補充すればいいかと思っていたし。
各自で用意……か。それなら……
「そうですね。食事は基本的に私と同じもので問題ありませんが……あの、この寮に調理ができる場所ってあるのでしょうか?」
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