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学園へ向かいましょう!
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「ついにこの日がきてしまったのか……クリステア、其方今からでも遅くはないぞ、通いにしてはどうだ?」
「あなた、娘の門出の日に水を差すようなことをおっしゃらないでくださいな。それに、我が家から通学だなんて時間のムダですわ。さ、クリステア。遅れてはなりませんよ。ノーマン、貴方がきちんとクリステアを監視して頂戴ね」
お父様が今にも泣いてしまいそうな悲しげな表情を浮かべるのに対して、お母様は冷静にお父様の提案を却下した。お母様、監視ってひどくないですか……?
「はい、いってまいります。さあクリステア、お手をどうぞ」
「はい、お兄様。お父様、お母様、いってまいります」
私はお兄様のエスコートで馬車に乗り込んだ。続いてお兄様、そして黒銀と真白が乗り込んだ。
「学園生活が辛くなったら、いつでも帰ってくるのだぞ!」
「あなたったら……さあお行きなさい。体に気をつけてね」
お母様はお父様に寄り添いながら、御者に発車を促しだのだった。
「はあ……行ってしまったか。クリステアが生まれたのがほんの少し前のことに思えるが……子の成長は早いものだな」
私達の乗った馬車が門へ向かって走り去っていくのを見つめながら、お父様はため息をついた。
「ええ、本当に……ところであなた? 久しぶりの夫婦水入らずですけれど、楽しみにしていたのは私だけなのかしら?」
「……む、そうだったな。ではアンリエッタ、庭の花が咲き始めたそうだが、共に散策でもいかがかな?」
「……ええ。喜んで」
はにかむお母様の手を取り、庭園へとエスコートするお父様の姿を車窓から見ていた私は、やれやれと座席に座りなおした。
まったくもう、お父様ったらまだ諦めていなかっただなんて。
私は軽くため息を吐いた。
魔力を持つ者が集う学び舎であるアデリア学園は、特例でもない限り通いは認められていない全寮制だ。
これから数年間、貴族も平民も関係なく同じ学生として学んでいくのだ。
いくら娘馬鹿なお父様だって元卒業生なんだから分かっているでしょうに。
「ふふ。父上が心配するのも無理はないよ。クリステアのことが心配でたまらないんだから」
「お兄様ったら。私だっていつまでも子供じゃありませんからね」
まあ、十歳なんてまだまだ子供だけどね。とはいえ、この世界では十五歳で成人だから、あと五年と考えたらいつまでも子供じゃいられないのは確かだ。
平民で大した魔力も持たない子供は成人を待たずに見習いとして働き出したりしているのだ。それに、これから入学するアデリア学園でも初等部にあたる一年生から三年生まで履修した後は専門分野に分かれて進級するのだけど、特に際立った才能がなければそのまま卒業していく人もいる。
貴族の子女はお嫁に行くための花嫁修行をしたり、平民は就職したりする。
アデリア学園ではマナーもしっかり鍛えられるので、平民の子は卒業後の就職先も良いところを斡旋されるので心配はない。
それなりに才能がある学生は専門の科に進み、得意な分野で活躍するために学んでいくのだ。
お兄様やレイモンド殿下は魔法を極めるために専科へ進級したのだ。
「はあ……それにしてもこれから大丈夫なのかしら。色々と不安しかないのですけれど……」
「それはまあ、なるようにしかならないんじゃないかな」
お兄様は苦笑しながら言うけれど、そこは大丈夫だよって言って欲しかった!
確かになるようにしかならないのは事実だけど!
「一番の心配は真白と黒銀のことですわ」
「ああ、そうだね……」
結局、いつかバレるからと言われただけで対策をしていないんだよね。こんなに行き当たりばったりでいいのかしら。
「問題ない。我らの人化は完璧だからな」「そうだよ。ひとがおれたちのこと、わかるわけないよ?」
黒銀と真白は、自分達の人型の姿に自信を持っているけれど、それはそれで問題なんだよね。
今日のところは私達の護衛としてついてきているのだけど、男性の姿では女子寮には入れないのだ。
今まで毎日毎晩べったりだったのに、我慢できるのだろうか……
私もモフモフ不足で禁断症状が出ないか心配だわ……
私の心配をよそに、馬車は商人街に入ると、中央広場をぐるりと回りはじめた。
どうやらここは前世でいうところのロータリーみたいな場所なのかしら。
「お兄様、あそこに馬車がたくさん停まっていますね」
中央広場の一角に馬車がたくさん停まっていて、大勢の人が乗り降りしていた。
「ああ、あそこは乗合馬車の停留所だね」
なるほど、バスターミナルみたいなところかな?
「あっ、制服を着た子がいますね」
「平民の学生だろうね。学園行きの乗合馬車があるから、それに乗るんだろう」
「そうなのですね」
あの中に同級生になる子や先輩がいるってことなのね。
車窓から学生たちを眺めながら、馬車は学園の方向へ駆け出したのだった。
---------------------------
あけましておめでとうございます!
やっと学園編がスタートです。
自分なりのペースで頑張りますので
よろしくお願いいたします( ´ ▽ ` )
「あなた、娘の門出の日に水を差すようなことをおっしゃらないでくださいな。それに、我が家から通学だなんて時間のムダですわ。さ、クリステア。遅れてはなりませんよ。ノーマン、貴方がきちんとクリステアを監視して頂戴ね」
お父様が今にも泣いてしまいそうな悲しげな表情を浮かべるのに対して、お母様は冷静にお父様の提案を却下した。お母様、監視ってひどくないですか……?
「はい、いってまいります。さあクリステア、お手をどうぞ」
「はい、お兄様。お父様、お母様、いってまいります」
私はお兄様のエスコートで馬車に乗り込んだ。続いてお兄様、そして黒銀と真白が乗り込んだ。
「学園生活が辛くなったら、いつでも帰ってくるのだぞ!」
「あなたったら……さあお行きなさい。体に気をつけてね」
お母様はお父様に寄り添いながら、御者に発車を促しだのだった。
「はあ……行ってしまったか。クリステアが生まれたのがほんの少し前のことに思えるが……子の成長は早いものだな」
私達の乗った馬車が門へ向かって走り去っていくのを見つめながら、お父様はため息をついた。
「ええ、本当に……ところであなた? 久しぶりの夫婦水入らずですけれど、楽しみにしていたのは私だけなのかしら?」
「……む、そうだったな。ではアンリエッタ、庭の花が咲き始めたそうだが、共に散策でもいかがかな?」
「……ええ。喜んで」
はにかむお母様の手を取り、庭園へとエスコートするお父様の姿を車窓から見ていた私は、やれやれと座席に座りなおした。
まったくもう、お父様ったらまだ諦めていなかっただなんて。
私は軽くため息を吐いた。
魔力を持つ者が集う学び舎であるアデリア学園は、特例でもない限り通いは認められていない全寮制だ。
これから数年間、貴族も平民も関係なく同じ学生として学んでいくのだ。
いくら娘馬鹿なお父様だって元卒業生なんだから分かっているでしょうに。
「ふふ。父上が心配するのも無理はないよ。クリステアのことが心配でたまらないんだから」
「お兄様ったら。私だっていつまでも子供じゃありませんからね」
まあ、十歳なんてまだまだ子供だけどね。とはいえ、この世界では十五歳で成人だから、あと五年と考えたらいつまでも子供じゃいられないのは確かだ。
平民で大した魔力も持たない子供は成人を待たずに見習いとして働き出したりしているのだ。それに、これから入学するアデリア学園でも初等部にあたる一年生から三年生まで履修した後は専門分野に分かれて進級するのだけど、特に際立った才能がなければそのまま卒業していく人もいる。
貴族の子女はお嫁に行くための花嫁修行をしたり、平民は就職したりする。
アデリア学園ではマナーもしっかり鍛えられるので、平民の子は卒業後の就職先も良いところを斡旋されるので心配はない。
それなりに才能がある学生は専門の科に進み、得意な分野で活躍するために学んでいくのだ。
お兄様やレイモンド殿下は魔法を極めるために専科へ進級したのだ。
「はあ……それにしてもこれから大丈夫なのかしら。色々と不安しかないのですけれど……」
「それはまあ、なるようにしかならないんじゃないかな」
お兄様は苦笑しながら言うけれど、そこは大丈夫だよって言って欲しかった!
確かになるようにしかならないのは事実だけど!
「一番の心配は真白と黒銀のことですわ」
「ああ、そうだね……」
結局、いつかバレるからと言われただけで対策をしていないんだよね。こんなに行き当たりばったりでいいのかしら。
「問題ない。我らの人化は完璧だからな」「そうだよ。ひとがおれたちのこと、わかるわけないよ?」
黒銀と真白は、自分達の人型の姿に自信を持っているけれど、それはそれで問題なんだよね。
今日のところは私達の護衛としてついてきているのだけど、男性の姿では女子寮には入れないのだ。
今まで毎日毎晩べったりだったのに、我慢できるのだろうか……
私もモフモフ不足で禁断症状が出ないか心配だわ……
私の心配をよそに、馬車は商人街に入ると、中央広場をぐるりと回りはじめた。
どうやらここは前世でいうところのロータリーみたいな場所なのかしら。
「お兄様、あそこに馬車がたくさん停まっていますね」
中央広場の一角に馬車がたくさん停まっていて、大勢の人が乗り降りしていた。
「ああ、あそこは乗合馬車の停留所だね」
なるほど、バスターミナルみたいなところかな?
「あっ、制服を着た子がいますね」
「平民の学生だろうね。学園行きの乗合馬車があるから、それに乗るんだろう」
「そうなのですね」
あの中に同級生になる子や先輩がいるってことなのね。
車窓から学生たちを眺めながら、馬車は学園の方向へ駆け出したのだった。
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あけましておめでとうございます!
やっと学園編がスタートです。
自分なりのペースで頑張りますので
よろしくお願いいたします( ´ ▽ ` )
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