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いざ本命に着手しますよ!
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「あ? オークの肝は魔法薬の素材になるに決まってんだろ?」
翌日、調理場でシンを捕まえてレバーが素材だってことを知らなかったのかと問い詰めたところ、逆に何言ってるんだという顔をされた。解せぬ。
それって、冒険者の常識なんじゃないの?
普通そんなの知らないよ……
「だって、内臓は処分するから貧民街の人達が引き取ってるって……」
「そりゃ、素材を取った後の捨てる分の話だろ? 心臓や肝臓なんかは魔法薬の素材として売れるんだから捨てるわけないだろ。あれ、冒険者ギルドじゃ高値になるんだぜ?」
「えっ、そうなの?」
「ああ。ま、解体の職人と違って俺程度のやつが解体したやつじゃ状態によっては買い叩かれるだろうけどな。昨日は保存するための薬液もなかったし、冒険者ギルドに運び込むまでには鮮度も落ちるだろうから捨てるしかないかと思ってたんだ。だけどお嬢からどの部位を使うか聞いてなかったんで、とりあえず全部取っといたんだよ」
ああ、そっか。私が直接選んで説明したらいいと思ってたから詳しく説明してなかったんだよね。
「それに、黒銀様がいらないんなら後で自分が食べると言ってたし」
「えっ? 黒銀が?」
「ああ、滋養があるからとか言ってたな」
ええー……思わず黒銀が生のレバーを食べてるホラーな姿を想像してしまったよ……
「でもまさか、お嬢が薬にもなる肝を食材にするとは思わなかったぜ」
だから、あの時シンは貧民街では食べないって言ってたのね。
てっきり調理法のことかと思ってたわ……
「オークの肝臓が素材だなんて、知らなかったのよ」
「あー……なるほど。貴族のお嬢様は魔法薬を使っててもそれに使う素材まではさすがに知らねぇのか」
いやいや。学園に入学すれば、魔法薬学の授業で習うことだし、私が知らなかっただけだから。
「ま、お嬢は薬草を料理に使うんだから今更か」
……シンさんや、ため息混じりに言わないでいただけますかね?
まるで私が非常識みたいじゃないか。
私はただ、前世の知識を活用しただけなんだから。
前世の食材に似たものを使ったら、それが薬だっただけだもの。不可抗力よ、うん。
「クリステアさん。前世の常識、この世界の非常識……ですよ?」ってマリエルちゃんのツッコミが脳内で聞こえる気がするけど、気にしない。美味しいご飯のためだもの、気にしないったら、気にしない!
「ま、まあいいわ。今日は本命のレシピに取り掛かりましょう!」
今日こそソーセージを完成させるんだ!
お父様には材料を説明して問題ないことは確認済みだし。
シンに必要な材料を揃えてもらい、いざ調理開始!
まず、塩漬けにしておいたケージング……腸を水に漬けて塩抜きしておく。
それから、タネ作り。オーク肉を叩いてミンチに。玉ねぎのすりおろしを加え、砂糖、塩、黒コショウ、セージやナツメグなどのハーブやスパイスを入れて混ぜる。黒コショウなどハーブを入れるタイミングは人によっては後入れの場合もあるけれど、私は一緒に混ぜてしまう派だ。
そして、この混ぜる時には注意が必要。
手の熱で肉がダレないようにしないといけない。
私は氷魔法で別のボウルに氷を出して氷水を作り、材料を入れたボウルを重ね、出力を抑えながら手の平に冷気をまといつつお肉を捏ねる。
私みたいに氷魔法が使えない場合は氷水に手を浸して手を冷やしつつ氷水を少しずつ入れながら捏ねたりしないといけないから大変だよね。
「……よし。こんなもんかな?」
3~4分程度混ぜて、肉に粘りが出たらOK。
いつか作る日がきた時のためにと以前ガルバノおじさまに作ってもらっておいた専用の口金を絞り袋にセットして、塩抜きした腸を口金の先に被せてたくし込みながらセット。そして絞り袋にタネを詰める。タネは何分割かにしたそれをボウルに叩きつけるようにして空気を抜き、袋に詰めるを繰り返す、と。そして少しだけニュルッとお肉を絞り出してから切り取る。そして腸を少しだけ引っ張り出して先端を結んで……
「よおーし、ここからが肝心よ! シン、手伝って!」
「……俺はお前が何をしたいのかさっぱりだよ」
私の傍らでミンチにしたりボウルを支えたりと助手として手伝いながらメモを取っていたシンは、ウキウキと口金に腸をセットしている私に怪訝な表情を浮かべ、絞り袋を差し出す私を胡乱な目で見つめた。
「ええとね、シンはこの絞り袋から一定の力でタネ……お肉を絞り出してほしいの。あっ、合図したら止めてね」
「そういうことじゃなくて……はあ、まあいいや。これを一定の力で?」
「そう。一気に絞り出したら破れちゃうからはじめは慎重にね」
シンに絞り袋を渡すと、私は口金の腸の部分に手を添えてスタンバイした。
「えーと……こうか? おっ?」
口金からニュルリとタネが絞り出され腸を押し出していく。
「そうそうそのまま絞り出していってね。……はい、止めて!」
腸の残りが5センチ程度になったところでシンに待ったをかけた私は素早く腸を口金から外し、一定間隔で捻りを加えていった。右巻きにしたら次は左巻きと交互に巻くのがポイントだ。それから、二本が輪になるように合わせて捻ってまとめる。これを四半刻程度乾かす、と。
「これを燻製にしてもいいんだけれど、今回はシンプルに茹でてから焼きましょう」
「へえ……面白いな」
そうなのよ、ソーセージ作りって、この作業が楽しいのよねー!
うはー! 前世ぶりのソーセージちゃん!
食べるのが楽しみっ!
翌日、調理場でシンを捕まえてレバーが素材だってことを知らなかったのかと問い詰めたところ、逆に何言ってるんだという顔をされた。解せぬ。
それって、冒険者の常識なんじゃないの?
普通そんなの知らないよ……
「だって、内臓は処分するから貧民街の人達が引き取ってるって……」
「そりゃ、素材を取った後の捨てる分の話だろ? 心臓や肝臓なんかは魔法薬の素材として売れるんだから捨てるわけないだろ。あれ、冒険者ギルドじゃ高値になるんだぜ?」
「えっ、そうなの?」
「ああ。ま、解体の職人と違って俺程度のやつが解体したやつじゃ状態によっては買い叩かれるだろうけどな。昨日は保存するための薬液もなかったし、冒険者ギルドに運び込むまでには鮮度も落ちるだろうから捨てるしかないかと思ってたんだ。だけどお嬢からどの部位を使うか聞いてなかったんで、とりあえず全部取っといたんだよ」
ああ、そっか。私が直接選んで説明したらいいと思ってたから詳しく説明してなかったんだよね。
「それに、黒銀様がいらないんなら後で自分が食べると言ってたし」
「えっ? 黒銀が?」
「ああ、滋養があるからとか言ってたな」
ええー……思わず黒銀が生のレバーを食べてるホラーな姿を想像してしまったよ……
「でもまさか、お嬢が薬にもなる肝を食材にするとは思わなかったぜ」
だから、あの時シンは貧民街では食べないって言ってたのね。
てっきり調理法のことかと思ってたわ……
「オークの肝臓が素材だなんて、知らなかったのよ」
「あー……なるほど。貴族のお嬢様は魔法薬を使っててもそれに使う素材まではさすがに知らねぇのか」
いやいや。学園に入学すれば、魔法薬学の授業で習うことだし、私が知らなかっただけだから。
「ま、お嬢は薬草を料理に使うんだから今更か」
……シンさんや、ため息混じりに言わないでいただけますかね?
まるで私が非常識みたいじゃないか。
私はただ、前世の知識を活用しただけなんだから。
前世の食材に似たものを使ったら、それが薬だっただけだもの。不可抗力よ、うん。
「クリステアさん。前世の常識、この世界の非常識……ですよ?」ってマリエルちゃんのツッコミが脳内で聞こえる気がするけど、気にしない。美味しいご飯のためだもの、気にしないったら、気にしない!
「ま、まあいいわ。今日は本命のレシピに取り掛かりましょう!」
今日こそソーセージを完成させるんだ!
お父様には材料を説明して問題ないことは確認済みだし。
シンに必要な材料を揃えてもらい、いざ調理開始!
まず、塩漬けにしておいたケージング……腸を水に漬けて塩抜きしておく。
それから、タネ作り。オーク肉を叩いてミンチに。玉ねぎのすりおろしを加え、砂糖、塩、黒コショウ、セージやナツメグなどのハーブやスパイスを入れて混ぜる。黒コショウなどハーブを入れるタイミングは人によっては後入れの場合もあるけれど、私は一緒に混ぜてしまう派だ。
そして、この混ぜる時には注意が必要。
手の熱で肉がダレないようにしないといけない。
私は氷魔法で別のボウルに氷を出して氷水を作り、材料を入れたボウルを重ね、出力を抑えながら手の平に冷気をまといつつお肉を捏ねる。
私みたいに氷魔法が使えない場合は氷水に手を浸して手を冷やしつつ氷水を少しずつ入れながら捏ねたりしないといけないから大変だよね。
「……よし。こんなもんかな?」
3~4分程度混ぜて、肉に粘りが出たらOK。
いつか作る日がきた時のためにと以前ガルバノおじさまに作ってもらっておいた専用の口金を絞り袋にセットして、塩抜きした腸を口金の先に被せてたくし込みながらセット。そして絞り袋にタネを詰める。タネは何分割かにしたそれをボウルに叩きつけるようにして空気を抜き、袋に詰めるを繰り返す、と。そして少しだけニュルッとお肉を絞り出してから切り取る。そして腸を少しだけ引っ張り出して先端を結んで……
「よおーし、ここからが肝心よ! シン、手伝って!」
「……俺はお前が何をしたいのかさっぱりだよ」
私の傍らでミンチにしたりボウルを支えたりと助手として手伝いながらメモを取っていたシンは、ウキウキと口金に腸をセットしている私に怪訝な表情を浮かべ、絞り袋を差し出す私を胡乱な目で見つめた。
「ええとね、シンはこの絞り袋から一定の力でタネ……お肉を絞り出してほしいの。あっ、合図したら止めてね」
「そういうことじゃなくて……はあ、まあいいや。これを一定の力で?」
「そう。一気に絞り出したら破れちゃうからはじめは慎重にね」
シンに絞り袋を渡すと、私は口金の腸の部分に手を添えてスタンバイした。
「えーと……こうか? おっ?」
口金からニュルリとタネが絞り出され腸を押し出していく。
「そうそうそのまま絞り出していってね。……はい、止めて!」
腸の残りが5センチ程度になったところでシンに待ったをかけた私は素早く腸を口金から外し、一定間隔で捻りを加えていった。右巻きにしたら次は左巻きと交互に巻くのがポイントだ。それから、二本が輪になるように合わせて捻ってまとめる。これを四半刻程度乾かす、と。
「これを燻製にしてもいいんだけれど、今回はシンプルに茹でてから焼きましょう」
「へえ……面白いな」
そうなのよ、ソーセージ作りって、この作業が楽しいのよねー!
うはー! 前世ぶりのソーセージちゃん!
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