転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

文字の大きさ
上 下
111 / 386
連載

下処理の続き

しおりを挟む
解体を終えた私達は、ひとまずソーセージ以外の内臓料理を作ろうと調理場に向かった。
「シン、ミルクはあるかしら?」
「あ? ミルクなら確か冷蔵室にまだあったと思うが……」
「じゃあ、ミルクを持ってきてくれるかしら?」
シンが冷蔵室に向かっている間に、私はインベントリからお目当ての内臓を取り出し、食べやすいサイズにカットしてから大きめのボウルに入れ、シンに渡した。
「これが浸るくらいミルクを入れて欲しいの」
「……は? おいこれ、さっきの内臓だろ⁉︎ 内臓にミルクって、どんなゲテモノ料理を作る気だよ⁉︎」
「ゲテモノ料理だなんて失礼ね。ミルクはもったいないけれど下処理に使うだけよ」
シンは内臓とミルクという組み合わせにギョッとしているけれど、臭みを取るにはこれが手っ取り早いのだ。
そう、私が今回使うのは肝臓……レバーだ。
前世ではレバーの臭みを取るのに私は牛乳を使っていた。 
よく洗って水気を取り、食べやすいサイズにカットしたものを牛乳に20~30分も浸しておく。そうすると臭みも抜け食べやすくなるのだ。
私はその経験から、オークレバーにも応用してみることにした。
うまくいきますように……
「下処理にミルクを使うなんてもったいねぇだろ……ほら、こんなもんでいいか?」
シンはブツブツ言いながらもボウルにミルクを注いでくれた。
「ありがとう! これはこのまましばらく浸しておくとして……と」
これで下処理は大丈夫ね。さてと、これで何を作ろうかな。
一番に思いつくのはレバニラ炒めだよねぇ。でも臭いがキツイから、お父様はよくてもお母様が食べられないかもしれない。うーん、レバーは鉄分が豊富だから女性にこそしっかり食べてもらいたいし……
甘辛煮もいいけど、甘辛煮なら鳥レバーの方が私としては好みなのよね。また今度にしよう。あとは……よし、あれにしよう。
そうと決まれば善は急げとばかりに、私は準備にとりかかるのだった。

「さてと、まずは漬け込みダレを作ろうかな」
醤油、料理酒代わりのヤハトゥール酒、みりんにすりおろした生姜とにんにくをちょっぴり入れて混ぜ合わせる。
下処理の終わったレバーを取り出し、ミルクを清潔なふきんで拭き取り、漬け込みダレに入れて軽く混ぜ合わせてから冷蔵室に入れ少しの間漬け込む。うーん、15分くらいでいいかな?
ミルクに浸して下処理した内臓は、特に腐敗することなく、前世で見たレバーそのものだったわ。
黒銀くろがねに念のため鑑定してもらったんだけど、食べるのに問題はなさそうだったのでひと安心。
「よし、次は……これね!」
私は精米済みの米を出してもらい、それを粉々にするイメージを込めて魔法で粉砕した。
初めて魔法で精米しようとした時に、力加減やどうしたらいいのかわからず、思いっきり粉砕してしまったのだけれど、今やその失敗は餅つきの餅取り粉や米粉を作るのに活かされている。失敗してもこうして他のことに活かせれば失敗も悪くないよね。
精米にしても、ご飯の美味しさに目覚めた皆の協力で私が精米しなくてもよくなったので楽になった。とはいえ、精米はなんだかんだで面倒な作業ではあるので、ガルバノおじさまにお願いしてどうにか精米機を開発しないといけないわね……
本当は、おじさまの知り合いだという魔道具師さんにも協力をお願いできたらいいのだけれど、ティリエさんから「クリステアちゃんはあの魔道具狂いには近づかない方がいいわね」と忠告を受けたのでガルバノおじさまにお願いするしかなさそうだ。
その上で魔道具師さんに依頼する分には問題ないだろうし。
考え事をしつつもでは休むことなく粉砕した米をゴリゴリとすりこぎでさらに細かな粉にしていく。
そうしてできた米粉を漬け込み終わったレバーにまぶして油で揚げる。
フライパンみたいな底の浅いもので揚げれば油の使う量が少なくてすむのでオススメだ。
あとは、付け合わせの野菜や、お味噌汁なんかを作って、と。
「よし、完成ね!」
豚レバーの竜田揚げの完成!
米粉じゃなくて片栗粉でいいんだけど、ここでは片栗粉がバステア商会で漸く取り扱い始めただけで手に入りにくいのと、米粉でもカラッと揚がって美味しいので米粉で代用。これに炒ったゴマをパラリとかけると香ばしさが増して私は好きなんだよね。
ふふ、美味しくできたかな?
しおりを挟む
感想 3,386

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。