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連載
なんとか浮上。
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少々グロい表現がありますのでご注意ください。
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オークの解体を覚えたくて見学していたら、前世で観た動画よりもスプラッタな光景を見て早々にギブアップしてしまった私……ああ、情けない。
黒銀に抱っこされて自室へと運ばれ、ミリアに淹れてもらったお茶でやっとひと心地ついたところ。
黒銀は、真白だけに解体を覚えさせるわけにはいかぬと解体現場へ戻った。
勉強熱心なのはありがたいけれど、またどっちが私の役に立つがで勝負とか始めるんじゃないかと気が気じゃないんだけど。
それにしても……はあ、どうにかいけると思ったんだけどなぁ。
動画は編集するから血がドバーッとか、皮をベロンッとか、スプラッタな場面をそんなに詳しく見せたりはしなかったんだね。
動画では血の匂いなんてしないし。
つまり、私の認識が甘かったってことよね……反省。
うーん……初心者は鶏とかうさぎとか、小型の獲物から始めてみるといいのかもしれない……いやいや、待って?
冬に見た雪うさぎはやたらと大きかったよね、あれは無理。
鶏にしても、ちゃんと足を固定しないと血抜きのために首を落とした後も走り回るとかって聞いたことが……イヤーッ!
そんなの無理無理! 怖すぎる!
自室のソファでガクブルと震えていると、真白から念話が。
『くりすてあ、かいたいおわったよー。このあとはどうしたらいい?』
『ありがとう、真白。お肉は調理場の冷蔵室に保管してね。あっ! 皆クリア魔法できれいに体を清めてね?
それから、内臓は……とりあえず軽く洗っておいてくれる?』
『わかったー』
……ふう、解体が無事終わったみたいでよかった。
とりあえず、解体してしまえば食材として認識できるに違いない……多分。
私は意を決して修練場近くまで転移し、遠くから解体現場の様子をうかがった。
もっと血の匂いがするかと思いきや、真白がクリア魔法で周囲もきれいにしてくれたようで、さほど血の匂いは感じられなかった。
わたしは少しほっとしながら真白達のところへ向かった。
「あっ、くりすてあ!」
「主、まだ休んでいた方がよいのではないか?」
真白は嬉しそうに駆け寄り、黒銀はしかめ面をしつつも心配そうに近寄ってきた。
「やぁね、大丈夫よ。ちょっとびっくりしちゃっただけ」
「それならばよいが。次からは我らがやるので主は無理をしないでくれ」
「ちゃんとかいたいできるようにおぼえたからね?」
「ありがとう……本当はちょっと怖かったの。……あれ? シンはどこ?」
周囲にシンの姿は見えない。
「ああ、彼奴は冷蔵室に肉を運んでいったぞ。内臓はここだが……」
黒銀が私から見えないようにしていたタライの中には、内臓と思しきものが見えた。
……多少洗ってあるからか、マシに見えるけれど、やっぱり内臓は内臓だよね……うえっぷ。
でも、これは食材、これは食材なんだ……と自分に言い聞かせてタライに近づく。
魚を捌いたりだってするんだから、内臓なんてナンボのもんじゃーい!
これから美味しく食べられるようにするんだからねっ!
私はふんすっ!と鼻息も荒く気合いを入れると、マイ割烹着を身にまとい、腕まくりした。
「ええと、これが小腸でこれが……」
と、浅い知識ながらもざっくりと仕分けした。ヒイィ、感触がぁ……!
ヒィヒィ言いつつもなんとか腸の中に残っているものを絞り出し、洗ってから裏表ひっくり返してまた洗い。塩をして置いておく、と。
とりあえず今日のところはここまで。
「なんだ、今日できるんじゃないのか」
シンは残念そうに言うけれど、いやいや、これ結構大変だからね?
前世ならすぐに使えるケーシング(天然腸)が通販でも買えるけれど、ここでそんな便利なものはないから時間をかけてでも作るしかないのだよ、うむ。
これは数日後にまた洗ってしごき、また洗ってようやくあのソーセージに使う皮になるのだ。
ソーセージ作りについては今日のところはこれでおしまいだけれど、せっかくだから何かモツ料理を作りたいなぁ……
他の内臓を物色した私は、あるものを見つけた。
「あ……これ使おう」
そうと決まれば即調理にかからねば! とばかりに下処理の終わったモツ達をインベントリに収納し、調理場へ急いだのだった。
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オークの解体を覚えたくて見学していたら、前世で観た動画よりもスプラッタな光景を見て早々にギブアップしてしまった私……ああ、情けない。
黒銀に抱っこされて自室へと運ばれ、ミリアに淹れてもらったお茶でやっとひと心地ついたところ。
黒銀は、真白だけに解体を覚えさせるわけにはいかぬと解体現場へ戻った。
勉強熱心なのはありがたいけれど、またどっちが私の役に立つがで勝負とか始めるんじゃないかと気が気じゃないんだけど。
それにしても……はあ、どうにかいけると思ったんだけどなぁ。
動画は編集するから血がドバーッとか、皮をベロンッとか、スプラッタな場面をそんなに詳しく見せたりはしなかったんだね。
動画では血の匂いなんてしないし。
つまり、私の認識が甘かったってことよね……反省。
うーん……初心者は鶏とかうさぎとか、小型の獲物から始めてみるといいのかもしれない……いやいや、待って?
冬に見た雪うさぎはやたらと大きかったよね、あれは無理。
鶏にしても、ちゃんと足を固定しないと血抜きのために首を落とした後も走り回るとかって聞いたことが……イヤーッ!
そんなの無理無理! 怖すぎる!
自室のソファでガクブルと震えていると、真白から念話が。
『くりすてあ、かいたいおわったよー。このあとはどうしたらいい?』
『ありがとう、真白。お肉は調理場の冷蔵室に保管してね。あっ! 皆クリア魔法できれいに体を清めてね?
それから、内臓は……とりあえず軽く洗っておいてくれる?』
『わかったー』
……ふう、解体が無事終わったみたいでよかった。
とりあえず、解体してしまえば食材として認識できるに違いない……多分。
私は意を決して修練場近くまで転移し、遠くから解体現場の様子をうかがった。
もっと血の匂いがするかと思いきや、真白がクリア魔法で周囲もきれいにしてくれたようで、さほど血の匂いは感じられなかった。
わたしは少しほっとしながら真白達のところへ向かった。
「あっ、くりすてあ!」
「主、まだ休んでいた方がよいのではないか?」
真白は嬉しそうに駆け寄り、黒銀はしかめ面をしつつも心配そうに近寄ってきた。
「やぁね、大丈夫よ。ちょっとびっくりしちゃっただけ」
「それならばよいが。次からは我らがやるので主は無理をしないでくれ」
「ちゃんとかいたいできるようにおぼえたからね?」
「ありがとう……本当はちょっと怖かったの。……あれ? シンはどこ?」
周囲にシンの姿は見えない。
「ああ、彼奴は冷蔵室に肉を運んでいったぞ。内臓はここだが……」
黒銀が私から見えないようにしていたタライの中には、内臓と思しきものが見えた。
……多少洗ってあるからか、マシに見えるけれど、やっぱり内臓は内臓だよね……うえっぷ。
でも、これは食材、これは食材なんだ……と自分に言い聞かせてタライに近づく。
魚を捌いたりだってするんだから、内臓なんてナンボのもんじゃーい!
これから美味しく食べられるようにするんだからねっ!
私はふんすっ!と鼻息も荒く気合いを入れると、マイ割烹着を身にまとい、腕まくりした。
「ええと、これが小腸でこれが……」
と、浅い知識ながらもざっくりと仕分けした。ヒイィ、感触がぁ……!
ヒィヒィ言いつつもなんとか腸の中に残っているものを絞り出し、洗ってから裏表ひっくり返してまた洗い。塩をして置いておく、と。
とりあえず今日のところはここまで。
「なんだ、今日できるんじゃないのか」
シンは残念そうに言うけれど、いやいや、これ結構大変だからね?
前世ならすぐに使えるケーシング(天然腸)が通販でも買えるけれど、ここでそんな便利なものはないから時間をかけてでも作るしかないのだよ、うむ。
これは数日後にまた洗ってしごき、また洗ってようやくあのソーセージに使う皮になるのだ。
ソーセージ作りについては今日のところはこれでおしまいだけれど、せっかくだから何かモツ料理を作りたいなぁ……
他の内臓を物色した私は、あるものを見つけた。
「あ……これ使おう」
そうと決まれば即調理にかからねば! とばかりに下処理の終わったモツ達をインベントリに収納し、調理場へ急いだのだった。
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