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反省しきりなのです
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「……というわけなのよ。お父様ったら、ひどいと思わない?」
お父様のお説教から解放された私は、すぐさま調理場へ向かった。
ほぼほぼ下ごしらえを終わらせた様子のシンを捕まえ、遮音魔法をかけて周囲に聞こえないようにしてから、ティリエさんのことやお説教を受けたことについて延々と愚痴った。
「……うーん。ティリエさんは気の毒だと思うけど、お嬢の場合はそのぐらいしないとすーぐ暴走するからなぁ……」
「えぇ? でも今回は私も知らなかったんだし、しかたなくない?」
シンったら、ティリエさんだけに同情して私にはそんな反応だなんて、ひどいよ!
「お館様は、いつもお嬢が何かする時には相談するように言ってるだろ? 今回ちゃんとしてなかったんなら叱られてもしょうがないじゃないか」
シンは呆れたように私を見て言った。
「言ったわよ? 新作を作るって……」
「……新作を作るのとオーク狩に行くのは別の話だろ」
「え、だって……あれ?」
「王都なら大抵のもんは揃うんだ。オークだって一体丸ごと納品ってことで冒険者ギルドに依頼すればいい。もしかしたら数日で手に入るかもしれないだろ?」
「……確かに、そうだけど……」
「お嬢は黒銀様と契約してるから気軽にオークを狩ってくるように言うけどな、普通は依頼して待つもんだからな?」
「……そうね」
うぐぐ、そう言われてしまうと何も言えない。
「まあ……お嬢の性格を考えたら、欲しいものはすぐ手に入れようとするのはわかりそうなもんだし、お館様もそのあたりまだ読みが甘いのかもしれないな。俺だって、まさか昨日の今日でオークを狩ってくるとは思ってもみなかったし……」
そうよね! 思い立ったらすぐ行動に移したくなるのが人情ってもんじゃない?
……ん? シンさん? ちょい待ち。
その発言は暗に私がせっかちで思慮が足りない子だって言ってないかな⁉︎
私をかばってるの? 貶してるの? かなーり微妙なんですけどぉ⁉︎
ぐぬぬ……と私がむくれていると、シンは真剣な顔をして私に向き直った。
「だけどな、お嬢。お館様はお嬢のことを心配してるから叱るんだ。お嬢が暴走して何か取り返しのつかないことをしでかした時、お館様が何も事情を知らないのでは助けようがないだろ?」
「……え」
「親ってのは、どれだけ子がしっかりしてようが心配するもんさ。そこんとこわかってやれ。親に心配のかけ通しってのはダメだ。……後悔するのは自分だぞ」
「あ……」
寂しそうに笑うシンを見て、私は何も言えなかった。
冒険者をしていたシンのご両親はすでに他界している。
シンはもう、ご両親に心配をかけることも、安心させることもできないのだ。
私だって前世では両親より早く死んでしまったから、最後は両親を悲しませることしかできなかった。
そう思えば、今の両親に安心どころか心配ばかりかけている私は親不孝者でしかない。
「……ごめんなさい」
「俺に謝ってもしかたないだろ。次からは忘れずお館様に相談しろ。な?」
「うん……」
シンに頭をポンとなでられ、泣きそうになるのをぐっと堪えた。
「よし。そんじゃこの話は終わりな。それで、オークの解体場所は決まったんだろ? いつ解体する?」
シンは湿っぽい空気を変えようと明るい声で話題を変えてくれた。
「……お父様から修練場の裏手ならいいって許可を得たの。ちゃんと結界魔法をかけて、後始末をきちんとするようにって。今日はもう遅いし、下処理に時間もかかることだから解体は明日にしましょう。料理長にはそう言っておいてね」
「了解。料理長には明日の昼の仕込みは免除してもらうように頼んどく。おっしゃ、久々の解体かぁ。腕がなるぜ!」
シンは戯けるようにそう言うと、料理長の下へ向かった。
……ああ、もう。私ったら最悪だ。
私はとぼとぼと自室へと向かったのだった。
「……はあ。自己嫌悪だぁ……」
だらしなくソフアにもたれかかり、近づいてきた真白を抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。
いつもなら真白のもふもふに癒されるのだけれど、気持ちはなかなか浮上しない。
『くりすてあ、げんきない……だいじょうぶ?』
真白がきゅ、と抱きついてくる。
「ごめんね、真白。心配かけて……大丈夫だから」
『……主、我が黙って殲滅してきた故に迷惑をかけたようだが……』
黒銀も心配なのか、きゅーんと言わんばかりにしょんぼりしていた。
「ううん、黒銀は正しいことをしたのよ。黒銀は集落を見つけてきちんとすべきことをしたのだもの。えらいわ」
『しかし、それで主が叱られたではないか』
「叱られたのは、私がきちんとお父様にオーク狩のことを報告していなかったからよ。それでお父様やティリエさんに迷惑をかけてしまった私が悪いの」
『しかし……』
「そうね、もし黒銀が気をつけるなら、集落を見つけた段階で私やお父様に連絡することかしら。そうすれば、すぐに殲滅するのか、冒険者ギルドで討伐隊を編成して動くか相談できるわ」
『うむ……承知した』
今回一番まずかったのは他領だったから、報告が面倒になったこと。
ティリエさんがどうにかごまかしてくれるといいんだけど……他領の冒険者ギルドで、黒銀単独でオークの群れを殲滅したなんて知れたら、変に注目を集めてしまいそうだもの。
……お父様が心配して怒ったのはそこなのかな。黒銀は今のところ私の護衛として専属契約してることになっているし。聖獣契約がバレることはなくても、悪目立ちするのは避けたいよね。
「はあ……」
色々と考えが至らなかった自分に、ますます落ち込む。
「あの……クリステア様、今よろしいでしょうか? クリステア様に来客とのことなのですが……」
そこへ、ミリアが来客があることを知らせにきた。
「……私に?」
誰だろう。マリエルちゃんかな? でも来るときは手紙のひとつもくれると思うんだけど……
「とにかく、急ぐようにとお館様がお呼びです」
「えっ? お父様が?」
なんだろう、すごく嫌な予感しかしないんだけど……⁉︎
お父様のお説教から解放された私は、すぐさま調理場へ向かった。
ほぼほぼ下ごしらえを終わらせた様子のシンを捕まえ、遮音魔法をかけて周囲に聞こえないようにしてから、ティリエさんのことやお説教を受けたことについて延々と愚痴った。
「……うーん。ティリエさんは気の毒だと思うけど、お嬢の場合はそのぐらいしないとすーぐ暴走するからなぁ……」
「えぇ? でも今回は私も知らなかったんだし、しかたなくない?」
シンったら、ティリエさんだけに同情して私にはそんな反応だなんて、ひどいよ!
「お館様は、いつもお嬢が何かする時には相談するように言ってるだろ? 今回ちゃんとしてなかったんなら叱られてもしょうがないじゃないか」
シンは呆れたように私を見て言った。
「言ったわよ? 新作を作るって……」
「……新作を作るのとオーク狩に行くのは別の話だろ」
「え、だって……あれ?」
「王都なら大抵のもんは揃うんだ。オークだって一体丸ごと納品ってことで冒険者ギルドに依頼すればいい。もしかしたら数日で手に入るかもしれないだろ?」
「……確かに、そうだけど……」
「お嬢は黒銀様と契約してるから気軽にオークを狩ってくるように言うけどな、普通は依頼して待つもんだからな?」
「……そうね」
うぐぐ、そう言われてしまうと何も言えない。
「まあ……お嬢の性格を考えたら、欲しいものはすぐ手に入れようとするのはわかりそうなもんだし、お館様もそのあたりまだ読みが甘いのかもしれないな。俺だって、まさか昨日の今日でオークを狩ってくるとは思ってもみなかったし……」
そうよね! 思い立ったらすぐ行動に移したくなるのが人情ってもんじゃない?
……ん? シンさん? ちょい待ち。
その発言は暗に私がせっかちで思慮が足りない子だって言ってないかな⁉︎
私をかばってるの? 貶してるの? かなーり微妙なんですけどぉ⁉︎
ぐぬぬ……と私がむくれていると、シンは真剣な顔をして私に向き直った。
「だけどな、お嬢。お館様はお嬢のことを心配してるから叱るんだ。お嬢が暴走して何か取り返しのつかないことをしでかした時、お館様が何も事情を知らないのでは助けようがないだろ?」
「……え」
「親ってのは、どれだけ子がしっかりしてようが心配するもんさ。そこんとこわかってやれ。親に心配のかけ通しってのはダメだ。……後悔するのは自分だぞ」
「あ……」
寂しそうに笑うシンを見て、私は何も言えなかった。
冒険者をしていたシンのご両親はすでに他界している。
シンはもう、ご両親に心配をかけることも、安心させることもできないのだ。
私だって前世では両親より早く死んでしまったから、最後は両親を悲しませることしかできなかった。
そう思えば、今の両親に安心どころか心配ばかりかけている私は親不孝者でしかない。
「……ごめんなさい」
「俺に謝ってもしかたないだろ。次からは忘れずお館様に相談しろ。な?」
「うん……」
シンに頭をポンとなでられ、泣きそうになるのをぐっと堪えた。
「よし。そんじゃこの話は終わりな。それで、オークの解体場所は決まったんだろ? いつ解体する?」
シンは湿っぽい空気を変えようと明るい声で話題を変えてくれた。
「……お父様から修練場の裏手ならいいって許可を得たの。ちゃんと結界魔法をかけて、後始末をきちんとするようにって。今日はもう遅いし、下処理に時間もかかることだから解体は明日にしましょう。料理長にはそう言っておいてね」
「了解。料理長には明日の昼の仕込みは免除してもらうように頼んどく。おっしゃ、久々の解体かぁ。腕がなるぜ!」
シンは戯けるようにそう言うと、料理長の下へ向かった。
……ああ、もう。私ったら最悪だ。
私はとぼとぼと自室へと向かったのだった。
「……はあ。自己嫌悪だぁ……」
だらしなくソフアにもたれかかり、近づいてきた真白を抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。
いつもなら真白のもふもふに癒されるのだけれど、気持ちはなかなか浮上しない。
『くりすてあ、げんきない……だいじょうぶ?』
真白がきゅ、と抱きついてくる。
「ごめんね、真白。心配かけて……大丈夫だから」
『……主、我が黙って殲滅してきた故に迷惑をかけたようだが……』
黒銀も心配なのか、きゅーんと言わんばかりにしょんぼりしていた。
「ううん、黒銀は正しいことをしたのよ。黒銀は集落を見つけてきちんとすべきことをしたのだもの。えらいわ」
『しかし、それで主が叱られたではないか』
「叱られたのは、私がきちんとお父様にオーク狩のことを報告していなかったからよ。それでお父様やティリエさんに迷惑をかけてしまった私が悪いの」
『しかし……』
「そうね、もし黒銀が気をつけるなら、集落を見つけた段階で私やお父様に連絡することかしら。そうすれば、すぐに殲滅するのか、冒険者ギルドで討伐隊を編成して動くか相談できるわ」
『うむ……承知した』
今回一番まずかったのは他領だったから、報告が面倒になったこと。
ティリエさんがどうにかごまかしてくれるといいんだけど……他領の冒険者ギルドで、黒銀単独でオークの群れを殲滅したなんて知れたら、変に注目を集めてしまいそうだもの。
……お父様が心配して怒ったのはそこなのかな。黒銀は今のところ私の護衛として専属契約してることになっているし。聖獣契約がバレることはなくても、悪目立ちするのは避けたいよね。
「はあ……」
色々と考えが至らなかった自分に、ますます落ち込む。
「あの……クリステア様、今よろしいでしょうか? クリステア様に来客とのことなのですが……」
そこへ、ミリアが来客があることを知らせにきた。
「……私に?」
誰だろう。マリエルちゃんかな? でも来るときは手紙のひとつもくれると思うんだけど……
「とにかく、急ぐようにとお館様がお呼びです」
「えっ? お父様が?」
なんだろう、すごく嫌な予感しかしないんだけど……⁉︎
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