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連載
【三巻発売記念番外編】とある男爵令嬢のお話
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私の名前はマリエル。
メイヤー男爵の娘で、父は元々商会の会頭で、色々な功績を認められて爵位を授かったの。
商人の娘として育った私としては、成り上がりと呼ばれるから貴族になんてなりたくなかったけれど、しかたない。
そんな私は、昔からわけのわからない夢をよく見ていたの。
変な形の建物や服、馬なしで走る馬車や鉄でできた空飛ぶ乗り物……
夢の中の私は黒い髪に黒い瞳をした、不思議な顔立ちをした女の人で、救護院のようなところで働いていたみたい。
その夢は幼い頃から時折見ているけれど、変な夢だなぁと思うだけで、不思議と恐ろしくはなかったな。
夢の中の私は救護院で働き、仕事が終われば職場の近くの使用人部屋がたくさんある塔のような建物の中にある自室へと戻り読書に勤しんでいた。
不思議な形の文字だったけれど、なぜか読むことができたのよね。
文字ばかりの本の時もあれば、絵ばかりの本もあったっけ。
なぜか、男性同士の恋愛を描いた物語が多かったのは不思議だったけれど。
でもそれを読んでいる私は楽しそうで、とても幸せな気持ちだったから忌避感はなかったんだ。
夢の中の私は、時にはせっせと衣装を縫い、お化粧したりすることもあったの。
どうやら別人のような姿になって楽しむのが趣味のようね。
女の人の姿だけじゃなく、なんと時には男の人の姿にもなったりしたわ。びっくり。
どうやらお気に入りの物語の登場人物の姿を真似ていたようだけれど、同じような趣味を持つ人たちと集まって一緒に楽しんでいたのが印象的だったなぁ。
皆とっても楽しそうで、キラキラしていたんだもの。
皆と一緒に楽しんだ後は、酒場へと移動してご馳走を食べながらお酒を飲み、いろんな話をしていた。
そこにいるのは同じ物語を読む同士で、同じように物語に共感していたのよね。
帰り道はとても幸せな気持ちで、次も頑張ろうって強く思ってたっけね。
そうそう。夢の中で食べる料理はどれもものすごーく美味しかったのが印象的だった!
中でも大好物なのは、白っぽい、いや薄黄色いトロッとしたソース!
あれをかけたら、どんなものでも美味しくなったの! まるで魔法のソースね!
食事をする夢から覚めて食べる料理は、なんとも味気なくてがっかりしたものよ。
ある日、とあるご令嬢が考案したというレシピをいくつか購入したとお父様が言ったの。
その中でもいろんなものに合うソースをうちの使用人が作ってくれたのだけど、本当に絶品だった! ていうか、それは夢の中で食べたあのソースだったのよ!
それを実際に食べて「これ、あのソースだ! このソースのレシピ名は? ……え? ま、まよ、ねーず……?」
まよ……まよねーず?……マヨネーズ⁉︎
その瞬間、今まで夢で見ていたのは前世の記憶だったんだ! ってわかったわ。
それから、今までの夢の中のことが繋がって、一気に記憶が蘇って知恵熱が出たのはここだけの話よ。
異世界転生。
まさか自分がそれを体験するとは思いもよらなかったわ……
それにしても、このマヨネーズを考案したクリステア・エリスフィード公爵令嬢って……もしかして……?
確かめる手立てもないまま、時だけが過ぎていった。
噂によれば、領地に引きこもっていたらしいけれど、学園に入学するらしい。
なんと、私と同い年だった。
もしかしたら、学園でお話しする機会があれば転生者が確かめることができるかもしれない。
そんなことを考えていたのだけれど、案外早くその機会はやってきた。
新年の交流会にクリステア様が初めて参加したのだ。
当日姿を現したクリステア様は、とても可愛らしい方だった。
所作も綺麗で、カーテシーも完璧。令嬢の中の令嬢といった方で、近づくのも恐れ多いといったお嬢様だった。
そんなクリステア様が、帰り際に髪に結んでいたリボンを落としたのを見て、思わず拾って追いかけたの。
勇気がいったけれど、頑張って声をかけた。
そうしたら、お茶会に誘っていただいたの! 勇気を出して良かった!
そして私は今日これから、エリスフィード家のお茶会へと向かう。
ああ、ドキドキするわ。
クリステア様が優しい人だといいけれど……
---------------------------
お知らせ
レジーナブックス様より拙作「転生令嬢は庶民の味に飢えている」3巻が、7月30日に出荷されます!
あくまで「出荷日」ですので、書店に届くのはそれから早くて翌日、地域によっては数日かかるかと思われます。
アルファポリスやレジーナのサイトに刊行予定としてアップされております。書影掲載はしばしお待ちくださいませ( ´ ▽ ` )
http://www.regina-books.com/content/recentl
もしかしたらアルファポリスまたはレジーナのメルマガに登録されると私より早く情報が入るかもしれません。
レジーナに登録していると、過去の発売時に発表した番外編のSSが読めます。
どれも主人公以外の視点で描く番外編です。
今回も番外編あります。誰視点かは公開されてからのお楽しみです。
単体でもお楽しみいただけると思いますが、三巻の後だとより楽しめるかと。
読者の皆様に色々と楽しんでいただけるといいな( ´ ▽ ` )
発売まであと数日となりました。
何卒よろしくお願いいたします~!
メイヤー男爵の娘で、父は元々商会の会頭で、色々な功績を認められて爵位を授かったの。
商人の娘として育った私としては、成り上がりと呼ばれるから貴族になんてなりたくなかったけれど、しかたない。
そんな私は、昔からわけのわからない夢をよく見ていたの。
変な形の建物や服、馬なしで走る馬車や鉄でできた空飛ぶ乗り物……
夢の中の私は黒い髪に黒い瞳をした、不思議な顔立ちをした女の人で、救護院のようなところで働いていたみたい。
その夢は幼い頃から時折見ているけれど、変な夢だなぁと思うだけで、不思議と恐ろしくはなかったな。
夢の中の私は救護院で働き、仕事が終われば職場の近くの使用人部屋がたくさんある塔のような建物の中にある自室へと戻り読書に勤しんでいた。
不思議な形の文字だったけれど、なぜか読むことができたのよね。
文字ばかりの本の時もあれば、絵ばかりの本もあったっけ。
なぜか、男性同士の恋愛を描いた物語が多かったのは不思議だったけれど。
でもそれを読んでいる私は楽しそうで、とても幸せな気持ちだったから忌避感はなかったんだ。
夢の中の私は、時にはせっせと衣装を縫い、お化粧したりすることもあったの。
どうやら別人のような姿になって楽しむのが趣味のようね。
女の人の姿だけじゃなく、なんと時には男の人の姿にもなったりしたわ。びっくり。
どうやらお気に入りの物語の登場人物の姿を真似ていたようだけれど、同じような趣味を持つ人たちと集まって一緒に楽しんでいたのが印象的だったなぁ。
皆とっても楽しそうで、キラキラしていたんだもの。
皆と一緒に楽しんだ後は、酒場へと移動してご馳走を食べながらお酒を飲み、いろんな話をしていた。
そこにいるのは同じ物語を読む同士で、同じように物語に共感していたのよね。
帰り道はとても幸せな気持ちで、次も頑張ろうって強く思ってたっけね。
そうそう。夢の中で食べる料理はどれもものすごーく美味しかったのが印象的だった!
中でも大好物なのは、白っぽい、いや薄黄色いトロッとしたソース!
あれをかけたら、どんなものでも美味しくなったの! まるで魔法のソースね!
食事をする夢から覚めて食べる料理は、なんとも味気なくてがっかりしたものよ。
ある日、とあるご令嬢が考案したというレシピをいくつか購入したとお父様が言ったの。
その中でもいろんなものに合うソースをうちの使用人が作ってくれたのだけど、本当に絶品だった! ていうか、それは夢の中で食べたあのソースだったのよ!
それを実際に食べて「これ、あのソースだ! このソースのレシピ名は? ……え? ま、まよ、ねーず……?」
まよ……まよねーず?……マヨネーズ⁉︎
その瞬間、今まで夢で見ていたのは前世の記憶だったんだ! ってわかったわ。
それから、今までの夢の中のことが繋がって、一気に記憶が蘇って知恵熱が出たのはここだけの話よ。
異世界転生。
まさか自分がそれを体験するとは思いもよらなかったわ……
それにしても、このマヨネーズを考案したクリステア・エリスフィード公爵令嬢って……もしかして……?
確かめる手立てもないまま、時だけが過ぎていった。
噂によれば、領地に引きこもっていたらしいけれど、学園に入学するらしい。
なんと、私と同い年だった。
もしかしたら、学園でお話しする機会があれば転生者が確かめることができるかもしれない。
そんなことを考えていたのだけれど、案外早くその機会はやってきた。
新年の交流会にクリステア様が初めて参加したのだ。
当日姿を現したクリステア様は、とても可愛らしい方だった。
所作も綺麗で、カーテシーも完璧。令嬢の中の令嬢といった方で、近づくのも恐れ多いといったお嬢様だった。
そんなクリステア様が、帰り際に髪に結んでいたリボンを落としたのを見て、思わず拾って追いかけたの。
勇気がいったけれど、頑張って声をかけた。
そうしたら、お茶会に誘っていただいたの! 勇気を出して良かった!
そして私は今日これから、エリスフィード家のお茶会へと向かう。
ああ、ドキドキするわ。
クリステア様が優しい人だといいけれど……
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お知らせ
レジーナブックス様より拙作「転生令嬢は庶民の味に飢えている」3巻が、7月30日に出荷されます!
あくまで「出荷日」ですので、書店に届くのはそれから早くて翌日、地域によっては数日かかるかと思われます。
アルファポリスやレジーナのサイトに刊行予定としてアップされております。書影掲載はしばしお待ちくださいませ( ´ ▽ ` )
http://www.regina-books.com/content/recentl
もしかしたらアルファポリスまたはレジーナのメルマガに登録されると私より早く情報が入るかもしれません。
レジーナに登録していると、過去の発売時に発表した番外編のSSが読めます。
どれも主人公以外の視点で描く番外編です。
今回も番外編あります。誰視点かは公開されてからのお楽しみです。
単体でもお楽しみいただけると思いますが、三巻の後だとより楽しめるかと。
読者の皆様に色々と楽しんでいただけるといいな( ´ ▽ ` )
発売まであと数日となりました。
何卒よろしくお願いいたします~!
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