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7‐2 復讐劇(中編)

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 階段を数段降りてふと思った。

 もし俺が捜索前に断罪を済ませてしまった場合どうなるか? と。
 これが結構ややこしいことになると気づいてしまった。

 まず一つ目の問題点。カザマ君やリュウエンを発見したときに、彼らが三人に対して復讐を行うことができなくなってしまう。

 これは非常によくない。俺はわざと殺されたので正直に言えば義務のような感覚で断罪を行おうとしている。だが二人は違う。やはり自分でけりをつけたいだろう。

 次に二つ目の問題点。俺が捜索を先に行った場合、三人に逃げられてしまう。

 これも非常によくない。逃げられてしまえば今度は三人を捜す手間が増えてしまう。捜索が終わったらまた捜索が始まると言う頭の悪い事態を招いてしまう。

 そして最後の問題点。俺が三人を断罪した場合は殺人を犯すことになる。一人でダンジョンから出ればギエンから咎められることは明白だ。

 言い訳をすればギエンならわかってくれるとは思うが、それも推測でしかない。いや、希望的観測と言い換えた方がいい。この国の兵は真面目だ。

 真面目というのは、融通が利かないともいえる。

 俺が犯罪者になってしまえば、似顔絵付きの手配書が出回ることになる。もしかするとこの惑星ジルオラを領有している貴族の耳にまで話が届けられるかもしれない。

 そこまでいくとエルバレン商会に迷惑がかかる。今大変な時期なのに、原住民を殺すようなアホの子を未開惑星に降ろしたという汚名が着せられるかもしれない。

【考えすぎですマスター】
「うん、俺もそう思う」

 ぶつぶつ口に出していたのをエレスに突っ込まれた。
 うるさくしてごめん。

 冗談はさておき、まずは三人を捕まえて拘束することにした。
 カザマ君を殺害したという部屋にでも放り込んでおけば大丈夫だろう。

 そこからは四階探索。カザマ君かリュウエンを発見し次第、三人の処遇を決めようと思う。もし二人とも見つからなかったら、それはそのときに考えよう。

 考えを纏めたところで階段を降り切った。そこでばったり三人と鉢合わせた。

 エイゲンと互いに「あ」という言葉を発する。

「な、なんで……」

 目を剥いて言うリンシャオに俺は笑顔を向ける。
 たっぷり嘘を吐いて怖がらせてあげよう。

「なんでって、俺は神の使いだって言ったろ? 俺はカザマ君を殺したお前らの罪の重さを量る為にやってきたんだよ。悔い改める機会を与えよって神に言われてね。ところがお前らは俺のことまで殺した。だから断罪の為にまた降りてきたんだよ」

 三人の顔が真っ青になる。俺の死体が消えて混乱してたところに無傷で上からやってきたんだから、そうなるのが自然な反応だよな。

「で、でたらめ言うなっ!」

 エイゲンは虚勢を張って長剣を構える。リンシャオは戦意喪失したのか座り込んだ。オットーはエイゲンとリンシャオを交互に見ている。何がしたいんだこいつは。

 長剣を構えられた時点で俺は明確な攻撃意思を覚っている。なので戦闘状態に移行しているのは間違いない。能力値が反映されていれば何も怖いことはない。

 俺はトレンチナイフを鞘に仕舞い、両手を広げた。

「斬ってみろ。刺してもいいぞ。俺はもう不死身だからな」

「なっ……!」

「お前が俺を殺せたのは、俺が殺されてやったからだ。神は見てる。お前たちの悪行全てをな。カザマ君はそれを報告してるところだ。お前たちは死後、火と硫黄の燃え盛る穴の中で永遠に焼かれ続けるんだよ。眠ることも死ぬことも赦されないままにな」

「お、お赦し下さい! この通りです!」
「ご、ごめんなさいいいいい! 私、そんなの嫌あああ!」

 オットーとリンシャオは地面に頭を擦りつけて謝り始めた。なんか、俺の嘘八百の威力が上がってるな。よくもまぁ、こんな適当なこと言えるもんだ。

 でも、もっともらしいっちゃあ、もっともらしいのか。

 宗教って怖いね。

 エイゲンは長剣を構えたままどうしていいかわからない様子。仕方がないので少し背中を押してやることにした。徹底的に絶望感を味わわせてやりたいからな。

「どうしたエイゲン? 斬らないのか? もう謝っても遅いんだから、一矢報いてみればどうだ? さあ、斬りかかって来い。俺を殺してみろ」

「う、うわあああああああ!」

 エイゲンが俺の挑発に乗り、長剣を振り上げ走ってきた。レッドキャップより遅い。欠伸が出るような速度だ。やがて長剣が振り下ろされて俺の体に当たる。

 ガキンッ──。

 全く痛くはないがビリッときた。流石に剣で斬られればそれなりのダメージはあるようだ。それでも一桁だろうな。ケルベロスワームの一撃とは雲泥の差だ。

 それよか金属みたいな音がしたことに驚きだわ。
 人なんだがな俺は。
 
 
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