22 / 81
7‐2 復讐劇(中編)
しおりを挟む階段を数段降りてふと思った。
もし俺が捜索前に断罪を済ませてしまった場合どうなるか? と。
これが結構ややこしいことになると気づいてしまった。
まず一つ目の問題点。カザマ君やリュウエンを発見したときに、彼らが三人に対して復讐を行うことができなくなってしまう。
これは非常によくない。俺はわざと殺されたので正直に言えば義務のような感覚で断罪を行おうとしている。だが二人は違う。やはり自分でけりをつけたいだろう。
次に二つ目の問題点。俺が捜索を先に行った場合、三人に逃げられてしまう。
これも非常によくない。逃げられてしまえば今度は三人を捜す手間が増えてしまう。捜索が終わったらまた捜索が始まると言う頭の悪い事態を招いてしまう。
そして最後の問題点。俺が三人を断罪した場合は殺人を犯すことになる。一人でダンジョンから出ればギエンから咎められることは明白だ。
言い訳をすればギエンならわかってくれるとは思うが、それも推測でしかない。いや、希望的観測と言い換えた方がいい。この国の兵は真面目だ。
真面目というのは、融通が利かないともいえる。
俺が犯罪者になってしまえば、似顔絵付きの手配書が出回ることになる。もしかするとこの惑星ジルオラを領有している貴族の耳にまで話が届けられるかもしれない。
そこまでいくとエルバレン商会に迷惑がかかる。今大変な時期なのに、原住民を殺すようなアホの子を未開惑星に降ろしたという汚名が着せられるかもしれない。
【考えすぎですマスター】
「うん、俺もそう思う」
ぶつぶつ口に出していたのをエレスに突っ込まれた。
うるさくしてごめん。
冗談はさておき、まずは三人を捕まえて拘束することにした。
カザマ君を殺害したという部屋にでも放り込んでおけば大丈夫だろう。
そこからは四階探索。カザマ君かリュウエンを発見し次第、三人の処遇を決めようと思う。もし二人とも見つからなかったら、それはそのときに考えよう。
考えを纏めたところで階段を降り切った。そこでばったり三人と鉢合わせた。
エイゲンと互いに「あ」という言葉を発する。
「な、なんで……」
目を剥いて言うリンシャオに俺は笑顔を向ける。
たっぷり嘘を吐いて怖がらせてあげよう。
「なんでって、俺は神の使いだって言ったろ? 俺はカザマ君を殺したお前らの罪の重さを量る為にやってきたんだよ。悔い改める機会を与えよって神に言われてね。ところがお前らは俺のことまで殺した。だから断罪の為にまた降りてきたんだよ」
三人の顔が真っ青になる。俺の死体が消えて混乱してたところに無傷で上からやってきたんだから、そうなるのが自然な反応だよな。
「で、でたらめ言うなっ!」
エイゲンは虚勢を張って長剣を構える。リンシャオは戦意喪失したのか座り込んだ。オットーはエイゲンとリンシャオを交互に見ている。何がしたいんだこいつは。
長剣を構えられた時点で俺は明確な攻撃意思を覚っている。なので戦闘状態に移行しているのは間違いない。能力値が反映されていれば何も怖いことはない。
俺はトレンチナイフを鞘に仕舞い、両手を広げた。
「斬ってみろ。刺してもいいぞ。俺はもう不死身だからな」
「なっ……!」
「お前が俺を殺せたのは、俺が殺されてやったからだ。神は見てる。お前たちの悪行全てをな。カザマ君はそれを報告してるところだ。お前たちは死後、火と硫黄の燃え盛る穴の中で永遠に焼かれ続けるんだよ。眠ることも死ぬことも赦されないままにな」
「お、お赦し下さい! この通りです!」
「ご、ごめんなさいいいいい! 私、そんなの嫌あああ!」
オットーとリンシャオは地面に頭を擦りつけて謝り始めた。なんか、俺の嘘八百の威力が上がってるな。よくもまぁ、こんな適当なこと言えるもんだ。
でも、もっともらしいっちゃあ、もっともらしいのか。
宗教って怖いね。
エイゲンは長剣を構えたままどうしていいかわからない様子。仕方がないので少し背中を押してやることにした。徹底的に絶望感を味わわせてやりたいからな。
「どうしたエイゲン? 斬らないのか? もう謝っても遅いんだから、一矢報いてみればどうだ? さあ、斬りかかって来い。俺を殺してみろ」
「う、うわあああああああ!」
エイゲンが俺の挑発に乗り、長剣を振り上げ走ってきた。レッドキャップより遅い。欠伸が出るような速度だ。やがて長剣が振り下ろされて俺の体に当たる。
ガキンッ──。
全く痛くはないがビリッときた。流石に剣で斬られればそれなりのダメージはあるようだ。それでも一桁だろうな。ケルベロスワームの一撃とは雲泥の差だ。
それよか金属みたいな音がしたことに驚きだわ。
人なんだがな俺は。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜
海月 結城
ファンタジー
ストーカーが幼馴染みをナイフで殺そうとした所を庇って死んだ俺は、気が付くと異世界に転生していた。だが、目の前に見えるのは生い茂った木々、そして、赤ん坊の鳴き声が3つ。
そんな俺たちが捨てられていたのが孤児院だった。子供は俺たち3人だけ。そんな俺たちが5歳になった時、2人の片目の中に変な紋章が浮かび上がった。1人は悪の化身魔王。もう1人はそれを打ち倒す勇者だった。だけど、2人はそんなことに興味ない。
しかし、世界は2人のことを放って置かない。勇者と魔王が復活した。まだ生まれたばかりと言う事でそれぞれの組織の思惑で2人を手駒にしようと2人に襲いかかる。
けれども俺は知っている。2人の力は強力だ。一度2人が喧嘩した事があったのだが、約半径3kmのクレーターが幾つも出来た事を。俺は、2人が戦わない様に2人を守護するのだ。
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
転生弁護士のクエスト同行記 ~冒険者用の契約書を作ることにしたらクエストの成功率が爆上がりしました~
昼から山猫
ファンタジー
異世界に降り立った元日本の弁護士が、冒険者ギルドの依頼で「クエスト契約書」を作成することに。出発前に役割分担を明文化し、報酬の配分や責任範囲を細かく決めると、パーティ同士の内輪揉めは激減し、クエスト成功率が劇的に上がる。そんな噂が広がり、冒険者は誰もが法律事務所に相談してから旅立つように。魔王討伐の最強パーティにも声をかけられ、彼の“契約書”は世界の運命を左右する重要要素となっていく。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ワールド・カスタマイズ・クリエーター
ヘロー天気
ファンタジー
不思議な声によって異世界に喚ばれた悠介は、その世界で邪神と呼ばれる存在だった?
歴史の停滞を打ち破り、世界に循環を促す存在として喚ばれた若者の魂は、新たな時代への潮流となる。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる