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6‐2 ダンジョン(中編)

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【ライト発動します】

 エレスの声のあと、光の球体が俺の頭上に浮かび周囲を照らす。

「え、何?」
「ひ、光魔法まで?」
「ちっ、おいオットー。お前、全然話が違うじゃねぇかよ」
「ぼ、僕だって知らなかったんですよ」
「ね、ねぇ、逃げた方がいいんじゃない? 無理でしょもう」

 また内緒話かよ。丸聞こえだってんだよ。
 あんなの相手に腹立ててると思うと自分が情けなくなってくるなまったく。

 それで、なんだって?

 エイゲンのいう『話が違う』ってのは俺の力量を見誤ったってことだな。リンシャオの『逃げた方が』という提案は疚しいことがあるって証明だ。

 でもって『無理でしょ』って……。

 なんだよもう。完全に俺を殺しにきてんじゃねぇかこいつら。俺の推測大当たりだよ。こりゃカザマ君も汚いことされて窮地に陥ったと見るべきだな。

 とはいえ召喚者であるカザマ君がそう易々と命を落とすことはないはずだ。
 なんだかんだHPのプロテクター効果は凄いからな。

 おそらくカザマ君はリュウエンを守り抜いていることだろう。まだ二人が行方不明になってから三四時間ってとこらしいし、望みは十分あるさ。

 いやしかし蒸し暑いな。中はもっと涼しいと思ってたんだが、湿気があって余計に暑く感じる。進むほどに汗出てきたわ。風がほとんどないからか?

 もうタンクトップのままでいいか。どうせ死なないし。

 ボディーアーマーを着用するにはツナギで隠す必要がある。想像するだけで暑くてたまらん。不用心なのはわかってるが、汗びっしょりはちょっとな。

 こんな軽装でダンジョンに入るってのは死にたがり世界一な所業なんだろうな。少し先にいる探索中のパーティーから目を疑っているような顔をされちゃったよ。

 そりゃそうか。みんなしっかり装備してるからな。俺なんて素手だってことに今気づいたくらいだ。ちと舐め過ぎだな。トレンチナイフを鞘から抜いて装備しておこう。

 そういやはぐれた場所ってどこなんだ?

 訊かなきゃ言わないってのもおかしいだろ。それを確認しておかないとダンジョン中を彷徨わないといけなくなる。時間の無駄は極力省かないといけないってのに。

 マジで捜す気ねぇなあいつら。どういうつもりだよ。

 冗談っぽくしてるけど一刻を争う状況だぞ。実のところかなり切迫感に襲われてるからな。しらみつぶしは追い詰められてやる最後の手段だ。効率良くいかないと。

「おい、はぐれたのってどの辺りなんだ?」

 顔だけで振り向いて後ろにいる三人に訊いてみる。

「よ、四階です。地下四階」

 上目遣いで答えるリンシャオを、エイゲンが舌打ちして睨みつけた。

 ずっとこそこそ話してたからな。違う階層を言おうと打ち合わせてたのをリンシャオが拒否したんだろう。三人の中で最も従順なのはリンシャオだな。

 オットーは……おどおどしてどっちつかずか。

 俺の『第六感』と『鋭感』には反応がない。四階というのは事実だろう。

「リンシャオ、道順を教えろ」
「は、はい。わかりました」


 ***


 三十分ほどで四階に到達した。

 二階、三階と下に向かうほどに気温が落ちていき随分と涼しくなった。道中の魔物はもっぱらゴブリン。進みながら一撃確殺。全く足を止めずに済んだ。

 他にもスケルトンなんかが出たが相手にならず。ゴブリンのように血が出ないだけマシといったところ。錆びた剣とか刃こぼれしたナイフ、棍棒なんかを装備していたのが興味深かった。ウシャスで戦った相手は武器も防具も装備してなかったからな。

 面白いのが、魔物を仕留めてしばらくすると装備品やアイテムを残してズブズブとダンジョンに呑み込まれていくこと。アイテムといってもスケルトンは骨だし、ゴブリンは牙で用途がさっぱりわからんが。まさか出汁を取る訳でもあるまいて。

 三階からはオウガとレッドキャップという赤い帽子を被った素早いゴブリンが現れ始めた。オウガは元が堅い上に防具を装備しているので少し時間を取られ、レッドキャップはゴブリン同様三体以上の群れなのと毒ナイフを持っているのが面倒だった。

 とはいえ、敵ではない。俺のAGIだと全ての攻撃を見切ることができるので余裕をもって対処できた。今のところオウガ以外は一撃確殺できている。

 そのオウガも顔面三発殴れば沈むんだがな。斬撃なら首に二発か。ドロップアイテムはオウガが角でレッドキャップは帽子か毒瓶。

 相変わらず用途不明だが、全てをストレージに収めている。

 回収係はエレス。俺は装備やドロップアイテムに近づくだけでいい。
 拾う時間が節約できるのは有り難いよな。
 
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