19 / 81
6‐2 ダンジョン(中編)
しおりを挟む【ライト発動します】
エレスの声のあと、光の球体が俺の頭上に浮かび周囲を照らす。
「え、何?」
「ひ、光魔法まで?」
「ちっ、おいオットー。お前、全然話が違うじゃねぇかよ」
「ぼ、僕だって知らなかったんですよ」
「ね、ねぇ、逃げた方がいいんじゃない? 無理でしょもう」
また内緒話かよ。丸聞こえだってんだよ。
あんなの相手に腹立ててると思うと自分が情けなくなってくるなまったく。
それで、なんだって?
エイゲンのいう『話が違う』ってのは俺の力量を見誤ったってことだな。リンシャオの『逃げた方が』という提案は疚しいことがあるって証明だ。
でもって『無理でしょ』って……。
なんだよもう。完全に俺を殺しにきてんじゃねぇかこいつら。俺の推測大当たりだよ。こりゃカザマ君も汚いことされて窮地に陥ったと見るべきだな。
とはいえ召喚者であるカザマ君がそう易々と命を落とすことはないはずだ。
なんだかんだHPのプロテクター効果は凄いからな。
おそらくカザマ君はリュウエンを守り抜いていることだろう。まだ二人が行方不明になってから三四時間ってとこらしいし、望みは十分あるさ。
いやしかし蒸し暑いな。中はもっと涼しいと思ってたんだが、湿気があって余計に暑く感じる。進むほどに汗出てきたわ。風がほとんどないからか?
もうタンクトップのままでいいか。どうせ死なないし。
ボディーアーマーを着用するにはツナギで隠す必要がある。想像するだけで暑くてたまらん。不用心なのはわかってるが、汗びっしょりはちょっとな。
こんな軽装でダンジョンに入るってのは死にたがり世界一な所業なんだろうな。少し先にいる探索中のパーティーから目を疑っているような顔をされちゃったよ。
そりゃそうか。みんなしっかり装備してるからな。俺なんて素手だってことに今気づいたくらいだ。ちと舐め過ぎだな。トレンチナイフを鞘から抜いて装備しておこう。
そういやはぐれた場所ってどこなんだ?
訊かなきゃ言わないってのもおかしいだろ。それを確認しておかないとダンジョン中を彷徨わないといけなくなる。時間の無駄は極力省かないといけないってのに。
マジで捜す気ねぇなあいつら。どういうつもりだよ。
冗談っぽくしてるけど一刻を争う状況だぞ。実のところかなり切迫感に襲われてるからな。しらみつぶしは追い詰められてやる最後の手段だ。効率良くいかないと。
「おい、はぐれたのってどの辺りなんだ?」
顔だけで振り向いて後ろにいる三人に訊いてみる。
「よ、四階です。地下四階」
上目遣いで答えるリンシャオを、エイゲンが舌打ちして睨みつけた。
ずっとこそこそ話してたからな。違う階層を言おうと打ち合わせてたのをリンシャオが拒否したんだろう。三人の中で最も従順なのはリンシャオだな。
オットーは……おどおどしてどっちつかずか。
俺の『第六感』と『鋭感』には反応がない。四階というのは事実だろう。
「リンシャオ、道順を教えろ」
「は、はい。わかりました」
***
三十分ほどで四階に到達した。
二階、三階と下に向かうほどに気温が落ちていき随分と涼しくなった。道中の魔物はもっぱらゴブリン。進みながら一撃確殺。全く足を止めずに済んだ。
他にもスケルトンなんかが出たが相手にならず。ゴブリンのように血が出ないだけマシといったところ。錆びた剣とか刃こぼれしたナイフ、棍棒なんかを装備していたのが興味深かった。ウシャスで戦った相手は武器も防具も装備してなかったからな。
面白いのが、魔物を仕留めてしばらくすると装備品やアイテムを残してズブズブとダンジョンに呑み込まれていくこと。アイテムといってもスケルトンは骨だし、ゴブリンは牙で用途がさっぱりわからんが。まさか出汁を取る訳でもあるまいて。
三階からはオウガとレッドキャップという赤い帽子を被った素早いゴブリンが現れ始めた。オウガは元が堅い上に防具を装備しているので少し時間を取られ、レッドキャップはゴブリン同様三体以上の群れなのと毒ナイフを持っているのが面倒だった。
とはいえ、敵ではない。俺のAGIだと全ての攻撃を見切ることができるので余裕をもって対処できた。今のところオウガ以外は一撃確殺できている。
そのオウガも顔面三発殴れば沈むんだがな。斬撃なら首に二発か。ドロップアイテムはオウガが角でレッドキャップは帽子か毒瓶。
相変わらず用途不明だが、全てをストレージに収めている。
回収係はエレス。俺は装備やドロップアイテムに近づくだけでいい。
拾う時間が節約できるのは有り難いよな。
20
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる