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星の守護者編
めいっぱいの感謝を胸に
しおりを挟む私が王都に戻ると、ルシウスと進化の光を纏った仲間たちが待ち構えていた。
「ノイン様、今までありがとうございました。僕は幸せ者です。最期にエルモア様から、こんな大役がもらえたんですから」
「私からも感謝を。夫共々、いただいた命、星の為に捧げます。ふふふ、そんな顔をなさらないでください。本望なのです。どうかご自愛くださいね」
「ノイン様、お世話になりました。ルシウス、俺は行くが、後のことは頼んだぞ。いいか、ノイン様を泣かせるようなことはするなよ。男の約束だぞ」
「ノイン、おいら、いっぱいの人に助けてもらったからさ、いっぱいの人を助けたいって思ってたんだ。夢が叶ったよ。今までありがとな。それじゃ、またな」
「ノイン、私、あなたと会えて幸せだった。もし、もし生まれ変わったら、また友達にしてね。大好きよ。ずっと、ずっと想ってるわ。私のこと、忘れないでね」
どうしてみんなが別れの挨拶みたいなことを言うのか分からなかった。
それで、戸惑っているうちに体に戻られて、私は意識を失った。
それから、悲しい夢を見た。
光になったみんなが、空に上って、大きな隕石にぶつかって押し戻していく夢。
すごい力強い雄叫びを上げて、どんどんこの惑星から離していく。
私も手伝わなきゃって思うんだけど、ただ応援することしかできなかった。
そして、大きな隕石は、遠く離れた宇宙でみんなと閃光になって消滅した。
目が覚めたときには、もう朝になっていた。
私は自室のベッドで寝ていて、隣にはルシウスが寝ていた。
たぶん、私を運んで、力尽きちゃったんだと思う。
それだけ昨日は大変だったんだなって、改めて思った。
私はなんとなく、夢のことが気になって、みんなに呼び掛けてみた。
だけど誰からも返事はなくて、やっぱりあれは夢じゃなかったんだって覚った。
ああ、そうか……。
みんな、この星を守る為に行っちゃったんだ……。
そう心で呟くと、涙が溢れて止まらなくなった。
私の泣き声で起きたルシウスも、一緒になって泣いた。
夢で見た通りのことが、現実に起きていた。
それから三年が過ぎて、私は母親になった。
産まれてきたのは、とっても可愛い金髪巻き毛の男の子。
出産から少し経って、ああ、そういうことかって気づいた。
なんだか体がスースーするような気がしてたけど、同化してたクピドのエルモアが分離して出て行ったからだったんだなって。
道理でこの子、クピドのエルモアとそっくりな訳よね。
もちろん、名前はエルモアにした。安直すぎるかなって思ったけど、その名前で呼ぶと満足そうに笑ってるから、それでいいみたい。
不思議な話よね。私の体の元の持ち主が、私の子供として産まれてくるなんて。
命は巡ってるんだなって実感させられちゃうわよね。
さて、そんな巡った命のお父さんになったルシウスはというと、毎日が大忙し。
皇帝を失ったアラドスタッド帝国、王様を失ったデルフィナ王国をこの国に統合して、ガーランディア大王国になっちゃったもんだから、もうてんやわんや。
それでも、家族の時間をとってくれてるから、やっぱり完璧だなって思う。
家族といえば、ルイン兄さんとアデル兄様。
二人は国家防衛大臣として国の為に働いている。アデル兄様は西方アラドスタッド領、ルイン兄さんは東方デルフィナ領の領主も兼任してる。
そのルイン兄さんなのだけど、ようやく死の穢れが落ちて、ヒメさんを迎えに行けるって喜んでる。真っ黒になった姿を見せると、ヒメさんがショックを受けるだろうからって、この三年、文通で愛を育んでいた。紳士でロマンチストだなって思う。
それはそうと、国境が消えたことで、国の行き来が容易になったから、もう少しエルモアが大きくなったら、身分を隠して旅をしようって考えてる。
ルシウスは忙しくて無理だから、ロディとアリーシャ、シャンティと一緒にね。
旅の目的は、巡った命を探すこと。
シクレア、アスラ、ディーヴァ、アルト、ラーマ。
大切な私の家族たち。きっとまた会えるって信じてる。
ね、エルモア?
(大丈夫だよ。ママ。みんなの場所なら、大体分かるから)
そのときはお願いね。
(もちろん。早く行きたいね)
うふふ、そうね――。
神に理不尽な理由で地球を追放された私は、惑星エルモアの王女、ノイン・ガーランディアに転生した。それからもう十九年、長いようで短かったなって思う。
いっぱい辛いことはあった。悲しいこともあった。
だけど、今は本当に幸せ。頑張って良かったって思ってる。
だから、私は今日も頑張るの。
めいっぱいの感謝を胸に。
明日も、明後日も、その次の日も、ひたすら頑張って生きていくのよ。
だって、私はもうミタラシ・アンコじゃないんだもの。
私はノイン・ガーランディア。エルモアの使者。
後悔しない、幸せな日々を送る王女なんだから――。
――――――――
【あとがき】
最後までお読みいただきありがとうございました。
お楽しみいただけたなら幸いです。
また別作品でお会いできれば嬉しく思います。では。
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