上 下
87 / 117
眠り姫の目覚め編

3

しおりを挟む
 
 
 *


 目覚めてから一週間が過ぎて、私はようやく一人で動けるようになった。
 七年も眠り続けていた体は、随分と痩せ細り、足も萎えていた。
 最初は一人でベッドから降りるのも難しくて、もどかしい思いをした。
 でも、苦労だとは思わなかった。
 むしろ、この程度で済んでいることに驚いた。

 だって、床擦れも関節の強張りもなかったんだもの。
 そんなの、驚かない方がおかしいわよね。

 私が貧弱になった程度で済んでいるのは、アリーシャの甲斐甲斐しい世話のお陰だ。目覚めるまでの間、ずっと世話をしてくれていたそうだ。
 アリーシャが妊娠出産、子育てなんかで世話をできなくなった期間は、シクレアとディーヴァが代わりにやってくれていたらしい。もう男のロディに任せる年齢じゃないからって、アリーシャに世話の仕方を訊いて率先してやってくれたのだとか。

 私が目覚めると信じて、根気強く世話をしてくれた女性陣三人には、本当に感謝してる。いえ、みんなに感謝ね。男性陣も、城にいる間は毎日お見舞いに来てくれてたって話だし、本当に私は恵まれてると思う。

 エルモアによれば、話し掛けたり手を握ったりしてもらえたことも、私の意識を呼び覚ます力になったってことだから、七年もの間、諦めずに私に接し続けてくれたみんなには感謝しても仕切れない思いでいる。

 そしてそれは、身内に対してだけじゃない。

 近衛や一緒に訓練した兵たちも、ノルギスお父様とアデル先生に願い出てまで、連日部屋の前に祈りに来てくれていたらしい。
 城下の国民も、城の前まで訪れて祈りを捧げてくれていたって聞いてる。
 わざわざ祈りを捧げる為だけに、王都にまで足を運んでくれた国民もいたそうで、私はもう感謝感激雨霰といった状態だ。

 なので今は、一刻も早く元気になって、感謝の気持ちを伝えたいとリハビリに奮起しているところ。とはいえ、まだまだ無理はできないんだけどもね。

 それにしても……慣れないわ。

 ただ虚弱を改善するってだけなら、ここまで時間は掛からなかったと思うのだけど、いまだにタイムスリップ感覚が抜け切らず、戸惑いが続いている。
 みんなの外見や雰囲気が変わったこともそうだけど、一番はやっぱり自分の体。

 なんだか車を買い替えたような感じがするのよね……。

 例えるなら、スポーツからワンボックスへの乗り換え。要するに視界が違う。
 それはそう。だって、八歳が目を開けたら十五歳なんだもの。
 今は一六五センチくらいだから、四十センチほど高くなったってことになる。

 初めて立って俯いたとき、思わず「高っ」て言っちゃったからね。

 それに共感してくれたのがシクレアとディーヴァだった。二人は……いえ、私の大事な仲間たちは、みんな進化を果たしていた。その一点に関してだけは、私が意識を失うタイミングが良かったように思う。
 というのも、シクレア、アスラ、ディーヴァの三人は人と話せるようになっていたから。みんな、私の代わりにこの国を守るために頑張ってくれていたのである。

 現在は、全員が最終進化を済ませ、人語を話せるようになっている。進化選択は、私の代わりにエルモアがやってくれていたのだと本人から直接聞かされた。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

【完結】元ドラゴンは竜騎士をめざす ~無能と呼ばれた男が国で唯一無二になるまでの話

樹結理(きゆり)
ファンタジー
ドラゴンが治める国「ドラヴァルア」はドラゴンも人間も強さが全てだった。 日本人とドラゴンが前世という、ちょっと変わった記憶を持ち生まれたリュシュ。 しかしそんな前世がありながら、何の力も持たずに生まれたリュシュは周りの人々から馬鹿にされていた。 リュシュは必死に強くなろうと努力したが、しかし努力も虚しく何の力にも恵まれなかったリュシュに十八歳のとき転機が訪れる。 許嫁から弱さを理由に婚約破棄を言い渡されたリュシュは、一念発起し王都を目指す。 家族に心配されながらも、周囲には馬鹿にされながらも、子供のころから憧れた竜騎士になるためにリュシュは旅立つのだった! 王都で竜騎士になるための試験を受けるリュシュ。しかし配属された先はなんと!? 竜騎士を目指していたはずなのに思ってもいなかった部署への配属。さらには国の争いに巻き込まれたり、精霊に気に入られたり!? 挫折を経験したリュシュに待ち受ける己が無能である理由。その理由を知ったときリュシュは……!? 無能と馬鹿にされてきたリュシュが努力し、挫折し、恋や友情を経験しながら成長し、必死に竜騎士を目指す物語。 リュシュは竜騎士になれるのか!?国で唯一無二の存在となれるのか!? ※この作品は小説家になろうにも掲載中です。 ※この作品は作者の世界観から成り立っております。 ※努力しながら成長していく物語です。

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました

みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。 日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。 引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。 そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。 香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……

乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました

白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。 「会いたかったーー……!」 一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。 【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

処理中です...