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ガーランディアの王女編
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私はロディに抱えられて、メイドたちの住む別館に連れて行ってもらった。
木造の洋館で、玄関の広間を抜けた先は、板張りの廊下と明かりの取り入れ窓。
その向かいにある壁には、ドアが等間隔で並んでいる。
なんだか、取り壊されて姿を消した昔の校舎を思い出す造りだった。
ロディが、その一角から外れて、階段下にあるドアの前で立ち止まる。
明らかに他と雰囲気が違う。物置きとしか思えないんだけど。
「ここが、アリーちゃのお部屋?」
私が訊くと、ロディは顔の前で人差し指を立てた。
「おそらく、アリーシャは寝ておりますので」
ロディの囁きに私はこくこくと頷く。起こしちゃ悪いもんね。
ロディがノックをせず、静かにドアを開く。
すると、きれいな裸と遭遇した。
アリーシャは清拭中だった。パンツ一枚で、包帯の巻かれた手以外は丸出し。
驚きすぎて、兄妹は声も出せずに固まっている。
でも被害は最小限で食い止められたはずだ。
なぜなら、私は異変を感じてすぐに、ロディの目を隠していたのだから。
それにしても、色も形もきれいで大きさも適度なバランスの良いおっぱいだ。
腰のくびれも、おしりも、正に私の憧れとする理想像。
歳を重ねるにつれ、こけし一直線だった前世の私とは大違い。
今後の参考に、ずっと見ていたいけれど、ここは心を鬼にしなければ。
「ロディ、早くちめて!」
「は、はい!」
ロディが掴んだままだったドアノブを静かに引く。音もなくドアが閉まる。
私はロディの顔のスベスベ肌を堪能していたけど、手に伝わる熱が急激に上がって湿っぽくなったので、ビックリして離した。ロディ、顔が真っ赤。
「あとで、アリーちゃに、あやまらなきゃにぇ」
「い、いえ。責任を取ります」
「ちぇきにん⁉ ロディ、にゃに言っちぇんの⁉」
「じ、実はですね――」
二人に血の繋がりはないとのことだった。
ロディはアリーシャに以前から恋心を抱いていたらしい。
幼児に何を言ってるんだこの美青年は。
アンコがハァハァしちゃうじゃないの。
美男美女カップルって、素敵よね。うっとりして溜め息が出ちゃう。
夜って、どんなことするんだろう。ああ、駄目駄目。アンコが出過ぎ。
今の私はノイン王女。妄想こけし腐女子なんかじゃないのよ。
唯一の贅沢が漫喫フリータイムなアラフォー女じゃないんだからね。
そんなことより、ドアを開けたときの衝撃を思い出すのよ。
アリーシャの裸体じゃない方。そう、部屋の様子よ。
あまりにも貧しげだった。窓がないし、薄暗くて狭い。
それに、シングルベッドしかなかった。
それはそうよね。あんなに狭くちゃ、他の物を置く余裕なんてないわ。
私の部屋も、王女にしては決して広いとは言えないし、調度品も簡素なのよね。
それはまだ幼児だからだろうって勝手に納得してたけど……。
でもこれは……。
やっぱり、何かおかしいわよね……。
ロディに訊いてみると、悲しい顔をされた。
口を噤んでしまったけど、それで理解した。
要するに、私が原因ってことね。
父が会いに来ない理由も、母同様、気味悪がられてるからだったわけだ。
軟禁されてるのも、城内を彷徨かせたくなかったってことね。
穢らわしいとか、悍ましいって思われてるんだわ、きっと。
兄と違って追放されないのは、私が女だからってだけ。
それはそう。だって、嫁がせれば済む話なんだもの。いずれは厄介払いできるんだから、わざわざ追い出す必要もないわよね。外交の道具にもなるわけだし。
でも、それでロディたちの待遇まで悪いっておかしくない?
むしろ、化け物扱いしてる王女の世話を引き受けてくれてるんだから、めいっぱい良くしてあげなきゃ駄目だと思うんだけど。辞められたらどうするのよ。
なんて、腹を立ててもさ……。
二人がいなくなって困るのは私だけなのよね。
王からすれば、私が生きていさえすれば、なんでも良いんだから。
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