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明かされる真実編

最終話 手渡されたもの

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 あとがき。だが、これはエピローグという形にもなる。
 
 私、月城亜希人は、ある友人から、この長編小説を手渡された。

 彼が言うには、出版社に持ち込んだものの、箸にも棒にもかからなかったそうだ。

 そのときの流れについて、少し書かせてもらう。

 場所は、喫茶店のテーブル席。私は、珈琲の香り漂う店内で、彼が書いたというこの小説を流し読みしていたのだが、その内容に思わず眉を顰めてしまった。

「これって、創作だよな?」

「ああ。モデルはあるが、名前は変えてあるから大丈夫だろう」

「結構、不謹慎だぞ。お前、高校時代、この一家のことで俺のこと殴ったろう」

「それを言うなよ。社会人になってから和解したんだから」

 そうなのだ。ここには、私のことが書いてあった。それだけでなく、栗栖一家と名は変えてあるが、これもまた実際に起きた事件だ。この一家の娘は昨年、彼と結婚している。結婚式には私も出席した。結構、大きい息子もいたので、驚いたのだが、養子だと聞いた。それもまた、この小説の中のコーキとカナエを連想させる。

「住んでたマンスリーマンションの隣人が行方不明ってのも聞いた気がするんだが」

「言った。気のいい青年だったからな。何をしていたか調べてモデルにした」

「不謹慎過ぎるだろう。変わったな、お前」

 ネットアイドルが配信中に消えた事件も、その後に復帰したことも事実としてある。今や大人気の動画配信者だ。あとは、性同一性障害をカミングアウトしたアメリカ人の若手女優が服毒自殺した事件も起きている。やたらとモデルが多い。

「それで? これを俺にどうしろと?」

「お前、ネット小説書いてるだろ? 俺の代わりに載せてくれないか?」

 自分で掲載しようとしたが、手が震えてキーボードが打てなくなるそうだ。

「白昼夢が起きて、胸がいっぱいになるんだよ」

 フィルがミリーたちと一緒に楽しげに冒険する姿。

 サクヤがミヅキと手を取り合って孤児院を運営している姿。

 それに協力する笑顔のスミレとサツキの姿。

 ヤスヒトとサーナが逆賊マリーダを討ち、勝鬨を上げる姿。

 ギーとニルリティを討ち果たし、抱き合うリンドウとスズランの姿。

 祖父母であるツバキとイナリの元で、幸せに暮らすウイナとサイネの姿。

 目を覆うデネブと、ドタバタするアープの姿。

 手を繋いで街を歩くローガとローズの姿。

 仕事に追われて、遂に服が破れるエドワードの姿。

 ウェズリーの街の門前で、ラグナス帝国軍と対峙するイワンコフの姿。

 冒険者ギルドでキビキビ働くジオと、妻になったミチルの姿。

 魔物化騒ぎで獅子奮迅の活躍を見せるサイガ組とヒューガ組の姿。

 ワブ族の集落で畑を耕し、汗を拭うドゴンの姿。

 就いた役職の仕事を忙しくこなすエリーゼたちの姿。

 桃花仙との戦いで名誉の死を遂げたルードの姿。

 その棲み処でユーゴを思い空を見上げるサブロの姿。

「俺がコーキを救い【箱庭】に戻る頃には、ルードが皆を各地に送り届けていたんだ。それぞれの役割を果たす為に。だが俺はそこに関わることはできなかった」

 それは俺の役割ではなかったから――。

「なんてな。ハハハ。俺は書けなかったけど、皆、儀来ニーラを守ったんだ。まるで、【精神感応】が見せてくれてるみたいだろ? 不思議なんだよな。俺の創作なのに、本当のことみたいに思うんだよ。もしかしたら、これは俺の自叙伝なのかもな」

 彼の目尻には、四十代らしい幸せで寂しげな小皺が刻まれていた。(了)



 ――――



 本当のあとがき。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。

 主人公のユーゴの役割をメインに書いておりますので、当初から本編はこのような形で終えることになっておりました。物足りないとは思いますが、ご容赦を。

 書き始めた頃の思いは、完結させることでした。
 それが果たせたので、良かったなと胸を撫で下ろしているところです。

 残念ながら後半は強引にダイジェストになってます。そのシーンを細かに書けたらよかったのですが、読む人がいなくなれば書く価値も薄れます。人気がなくなったので、きりの良いところで打ち切りということです。

 当然ですけど、すべてフィクションです。
 
 さて、長々とお付き合いありがとうございました。読んでくださった皆様に感謝を。
 
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