【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人

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明かされる真実編

27.坑道前説明会(2)

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「えぇ……? なにそれ。そんなのが、ラグナス帝国の裏にいたってこと?」

「そういうこと。どれだけ続いてるかは知らないけど、多分、ラグナス帝国の人族至上主義っていうのは、トウゲンに敵対行動を取らせない為の隠れ蓑だろうね」

 下手に存在を明かして反発を招けば、二つの世界間で戦争が起こる。当然、滅亡するのは儀来ニーラに住む者の方だ。だがそれは乱獲と変わらない。先人がやらかした食い合い戦争の二の舞い。食料確保が難しくなり、結局は自分たちの首を締めることになる。

 それを考慮して、従属させた儀来ニーラの人族を使い、時間を掛けて帝国という形に仕上げたのだと思う。亜人の管理を行いやすくする為に。

「だが、それならどうしてギーは明け透けに話したんだ?」

「そりゃ、隠す必要がなくなったからじゃない?」

 俺の返答に、ヤス君が「最悪だ」と呟く。フィルとサクちゃんはまだ察していないようだ。女子たちも理解が追いついていない様子。仕方ない。ややこしいもの。

 トウゲンの存在について、ニルリティも隠し立てしなかった。そして、俺以外にも桃花仙について知っている者はいた。ウェズリーのギルマスに扮していた工作員や、その口封じに来た連中がそうだ。なので、存在を徐々に明かしていると見て間違いない。

 それはつまり――。

「トウゲンは儀来に移住するつもりなんだろうね。帝国との交渉で管理体制が整ったからなのか、あっちの魔物の被害が深刻になってきたからなのかは、分からないけど」

「両方じゃないっすかね? 儀来の人族に亜人を管理させて、自分たちはヒエラルキーと食物連鎖の頂点に君臨ってとこっすね。ハハハ、笑えねー」

「そっか、桃花仙を捨てるだけで、魔物と食料の問題が解決するもんね。え、ちょっと待って、そしたら次は、二大仙ニタイセンが標的にされるってこと⁉」

「多分ね。俺たちって美味しいらしいよ」

 桃花仙には異世界同士を繋げる術がある。だが繋げているのは儀来だけ。二大仙に繋げてはいない。もし繋げているのなら、俺たちが元の世界にいたときに気づけていたはずだ。そうなっていないということは、要するに繋げることができないということ。

「その術がどういった形で行われているのかは知らないけど、おそらく個人が軽々しく使えるものじゃないんだろうね。装置とか儀式が必要なのかもしれない」

「ですね。あとは、儀来からじゃないと、二大仙には繋げることができないってことじゃないすかね?」

「そっか。儀来は二つの世界の中間地点なんだね」

「そういうことだと思いますよ。儀来の人族が、渡り人にとっての毒になるってのも、食われないように進化を遂げたからとも考えられますし」

「とすると、食われ続けた歴史が更に過去にあったかもしれんってことか。聞いてるだけでおぞましい気分になるな。それはそうとして、ユーゴ、何で坑道前なんだ?」

「ああ、そろそろ行こうか。ルードとイノリノミヤが待ってる」

 は? という声が重なる。

 もう説明会は終わりだよ。行けば分かると伝えて、俺は足を進めた。
 
 
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