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それぞれの成長 元戦乙女隊編
28.誰であろうが死ぬときは死ぬ(2)
しおりを挟む「イザベラ! レノアの援護を!」
「分かってるよっ!」
エリーゼとニーナが振り下ろされた腕を左右に分かれて躱す。その間に、レノアが「ええーい!」と大きく振りかぶったフレイルを振り下ろす。二撃目の鉄球が、勢いよくジャイゴーレムの胴体に撃ち込まれ、欠けた岩が飛ぶ。
ジャイゴーレムの顔がレノアに向けられる。
「レノア! 下がれ!」
イザベラが叫び、ジャイゴーレムの背後から駆け寄る。
「でええいっ!」
横に振るわれたウォーハンマーが岩石の表皮を砕く。しっかりと踏み込まれ、見るからに威力が高い。そこから反転して、もう一撃。イザベラが器用な連撃を決める。
その二連撃は相当な威力だったようで、レノアが距離をとっている間に、ジャイゴーレムは足音を響かせ、イザベラに向き直っていた。
「イザベラ、下がって!」
「おうよ!」
ニーナの声掛けに合わせ、イザベラがバックステップ。
ブウンッ――。
イザベラが元いた位置に、ジャイゴーレムの腕が大きく薙ぎ払われる。ここまで風を切る音が聞こえた。動作は緩慢だが、攻撃自体は速い。あれを頭に食らったら、誰であろうが死ぬと思う。明確な合図があるので躱しやすいとはいえ肝が冷える。
大振りの一撃は、一発入るだけで展開がひっくり返るから怖ろしい。
ただ、そのあとに待っているのは硬直時間と次の攻撃に入るまでの準備行動。隙が生じたところで、エリーゼとニーナが左膝に接近。再び細かく攻撃し始める。レノアは離れた位置から状況を見て指示を出し、邪魔にならないところで火球を放ってぶつける。
上手いな。
戦い方が慎重で感心した。声掛けで連携が取れている上、回避重視で危なげがない。能力値の問題で、見た目より火力は乏しいようだが、攻撃はすべて直撃させているから、着実にダメージを蓄積させているはず。
サクちゃんのような派手さはないが、地味で堅実なのは見ていて安心感がある。
というか、サクちゃんが異常なんだよな。トンファーで滅多打ちにして、振り下ろしを躱すと同時に【地縛槍】食らわせて、硬直解けたらすぐまたトンファーでタコ殴りにするんだもん。そうか、分かったぞ。あの変態武人を比較対象にしちゃ駄目なんだ。
不意に、ジャイゴーレムが力強く地団太を踏んだ。
お、きたか。
軽く地面が揺れる。振動以外は完全無防備状態。大技を繰り出す合図だ。
「隙だらけだぜ!」
イザベラが駆け寄り、渾身の一撃をジャイゴーレムの右膝に打ち込む。その直後の踏み鳴らしで、ジャイゴーレムの膝がゴキンと折れた。
「え――?」
まずい!
突然濃くなった影に覆われ、見上げるイザベラ。そこへジャイゴーレムが倒れ込んでいく。俺は咄嗟に地面を蹴り、【疾風】を発動。身を低くして加速する。
「きゃあああ!」
レノアの悲鳴が上がる。「イザベラ!」というエリーゼの叫びも耳に入った。
間に合えっ!
俺は手を伸ばし、イザベラの腰を抱えた。
届いた!
心で叫び、覆いかぶさってくるジャイゴーレムの上半身をすり抜ける。下敷きになる前に救い出せたことに安堵したが、それは手が届いたほんの一瞬のことだった。イザベラを抱えて立ち止まったときには、俺の心臓は握り潰されたように縮んでいた。
顔や体に生温い飛沫が掛かる。
鉄の臭いを感じてすぐ、背後でズンッという音が響き、地面が揺れる。
「イザベラ!」
俺は女子たちが駆け寄ってくるのを手で制して止める。
「討伐はまだ終わってない! こっちは任せて、主にトドメを!」
イザベラは倒れ込んできたジャイゴーレムの上半身に顔を潰され、首を解放骨折していた。折れた骨で皮膚が内側から突き破られ、裂けるように広がった傷口から大量に出血している。腕の中でだらりと体が曲がる。おそらく背骨も何本か折れている。
これは、もう――。
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