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それぞれの成長 元戦乙女隊編
24.成長する英雄(4)
しおりを挟むここだっ!
一瞬で距離が詰まり、視界がレイジトロルの腹で埋まる。そのタイミングで【迅雷球】を流動させて右拳に纏わせる。【障壁】が割れて右拳に激痛が走るが止まらない。高速推進の勢いそのままに【剛力砕波】を打ち込む。
「ぬっ――ああああっ!」
レイジトロルの腹に拳がめり込み、稲妻が迸る。手首から肩に凄まじい負荷。重い。時間が遅い。まだ一秒も経ってないのが感覚で分かる。突き出した拳が、意思と切り離されたように振り抜かれる。
ドパァンと水袋が破裂したような音が響き、レイジトロルが爆ぜて吹き飛んだ。辺りに帯電して煙を上げる血と肉片が散乱する。が、階層主の特徴通り、焦げ臭さの混ざった饐えた臭気と共にすぐに消失した。
それを見届けた後で、風術推進と【浮遊】を解除し着地する。もうかなり扱いに慣れてきた。慣性で体が流されるようなこともない。
ふぅ、と息を吐くと同時に「すげえええ!」という叫び声が背後から上がった。
振り返ると、イザベラが駆け寄ってきていた。目を輝かせて、興奮しているのが一目で分かる。その後ろには女子三人も続いているが、こちらは目が点。
「すげえ、すげえ、すげえ! 階層主が一撃だ! ユーゴ! なんなんだ今の⁉」
「新術と戦技の組み合わせ。【剛力砕波】っていう、拳の打撃威力が十倍に跳ね上がる技と、空を飛ぶ術の加速と電撃を放つ術の威力を合わせてみた」
「十倍、電撃、加速……」
「アタクシ、ユーゴさんが稲妻になったようにしか見えなかったのですけど……」
「ま、正に疾風迅雷だな」
「あ、それいいな! エリーゼ、この術は【疾風迅雷】って名前にするよ!」
三種派生させた時点で【迅雷】の名は消えていたが、拳に纏ったものは球ではないので、そういう曖昧な状態をすべて【迅雷】と呼ぶことにした。ついでに風術推進を使った高速移動を【疾風】と名付けた。その方が楽だ。
右手を握ったり開いたり、肩を回したりしながら状態を確認する。グローブは無事だが、打ち込んだ瞬間はかなり痛かった。拳は【迅雷】を纏った時点で【障壁】が破壊されて焼けるように熱かったし、【剛力砕波】は拳から手首、腕、と順番に骨が割れていくような痛みを感じた。
打ち込んだ後ですぐに回復術を使ったからなんともないが、明らかに一撃必殺型の技だと思う。これは、ここぞという場面でしか使えないだろう。
でも【疾風迅雷】だけだったら、問題はないかな。
要は【障壁】を厚く張って、電撃に耐えうる強度を保てれば良い訳だから……。
考えながら体に【障壁】と【迅雷】を纏わせてみる。すると全身に細かな稲妻が走り帯電状態になった。
「お、おいユーゴ、お前、もう神様だぞ、それ」
「ああ、最早、雷神だな」
「凄い、かっこいい!」
「こっ、ここまでくると、もう、早くもらってくださいとしか言えませんわね!」
レノアがおかしなことを言うので、女子たちがまた興奮状態になった。わいわいやっているのを苦笑して眺めているうちに【障壁】が耐久限度を迎えて俺が感電。制御を誤った結果、周囲に放電。女子たちも仲良く感電した。
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