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それぞれの成長 元戦乙女隊編
21.成長する英雄(1)
しおりを挟む小一時間くらいで二十階層まで進んだ。
引率役の俺が照明と探知、魔物の撃退まですべてを受け持った状態で、女子たちには褒賞値だけもらってのお散歩を楽しんでもらっている。
俺が何かをする度に目を丸くしていた女子たちも、イザベラを除いていい加減慣れたようで、段々と無表情になってきていた。そう、イザベラを除いては。
「すげー! なぁ、ユーゴ、今のってどうやったんだ⁉」
「これは戦技っていうスキルだよ。必殺技みたいなもんかな」
「必殺技⁉ アタイにも使えるのか⁉」
「魂格が上がれば使えるんじゃないかなぁ? 俺も条件はよく分かってないんだよね。イザベラが頻繁に使ってる武器の戦技はステボに表示されるはずだよ」
こんな感じで、俺が何かをする度に、イザベラだけは根掘り葉掘り訊いてくる。上層なので、なんとなく色々と試しているのだが、そのすべてに興味を持つ。
俺の性格上、普段なら煩わしく感じてもおかしくないのだが、不思議と不快ではなかった。むしろこの会話が俺自身の成長に繋がり驚いていた。
どんなことでもそうだが、説明することで気づくことがある。これは元の世界でもよくあったことだ。例えば、勉強。自分で理解したつもりでいても、誰かに教えることで新たな発見や、思い違いを知るきっかけになる。
考えてみれば、元のパーティーにいたときは戦闘に関してそういったことはしてこなかった。というか、しようにもできなかった。フィルとヤス君が遠距離攻撃術で終わらせてしまうからだ。
ヤス君離脱後にダンジョンに潜ったときも【迅雷】の試し打ちと【浮遊】と風術推進による高速移動を使った実戦での立ち回り練習しかしていない。自分が何もしなくても、フィルとサクちゃんがいれば討伐は終わってしまうような状況だったので、軽い説明こそすれど、術や技について深く考えたりすることはなかった。
カキ氷屋をやってたくらいまでは反省会もしてたんだけどな……。
その頃は、それこそ将棋の感想戦とは言わないまでも、どこでどういった行動をとるのが最善なのかという振り返りは行っていた。ただ、俺の場合は【過冷却水球】を開発した後はそれを如何に上手く利用するかということにシフトしてしまい、ほとんどそれ一本になってしまったのだけれども。
ある程度の力を得てからは、それぞれがパーティー内での役割を理解してしまったからか、自ら幅を狭めていたように思う。確かにそれが最善手ではあるのだろうが、すべてを自分一人で受け持つだけでなく、イザベラからの質問に答えることで、それが飽くまで自分のパーティー内にいたとき限定のものであると理解させられた次第。
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