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それぞれの成長 元戦乙女隊編
12.坑道の奥にいたのは(5)
しおりを挟む「冥福を祈るよ……」
「ええ、きっと神の国に迎え入れられてますよ。ところで、僕が捨ててきた魔戦斧ヴァルディオルム・ガーランディアは武人の手に渡りましたか?」
捨てたって。扱いがゴミだな。
「ま、まぁ、うん、喜んで使ってるよ。それにしても長い名前だね。ヴァルディ……なんだっけ? 覚えてられないよ」
「ハハハ、サーヤも同じことを言って『斧』って呼んでました。作った鍛冶屋が格好つけたがりだったんです。腕は良かったんですけどね」
「へー、あの半月斧って元はサーヤの物だったのか。男のサクちゃんでも振り回すのに苦労してるのに、サーヤって凄かったんだね」
ええ、懐かしいです。と、ルードが遠い目をして微笑み、黙り込む。会話中の相手がいるのに自分だけ思い出に浸るとはどういう了見なのだろうか。
「あ、あのさ、どんな冒険だったのか知りたいんだけど、聞かせてもらえる?」
ルードがかぶりを振る。
「それは僕ではなく、イノリンの役目です」
「え……?」
「彼女はこの五百年、ユーゴが訪れるのを待っているんですよ」
「は⁉ 俺を待ってるって、それはどういう――」
訊きかけたとき、「うわぁあ⁉」という悲鳴が上がった。
「ば、ばばば化け物ぉ!」
ああもう、こんなときに。
ルードと共に、うんざりしながら溜め息を一つ。探知を使って、近づいてくる者の進行方向に【過冷却水球】を設置する。ばたばたと慌ただしい足音を鳴らして駆けてきたのは、俺にウスノロと罵声をぶつけた悪ガキだった。
「わぁっ⁉」
ルードにばかり気を取られていたからだろう、悪ガキは真正面から【過冷却水球】に衝突した。爆ぜた水が足に纏わりついて凍りつき、ものの見事に転倒する。
俺はすかさず【過冷却水球】を追加でぶつけて氷結拘束。あっという間に悪ガキの氷漬けが一つ出来上がる。怯えか寒さかガチガチと歯を鳴らしている。
このまま何処かで展示してやろうかな。
「た、助けてぇっ!」
「五月蝿いよ、もう」
口にも【過冷却水球】を当てて凍りつかせる。それでもムームーと騒がしい。
「お見事。凄い術ですね」
「ありがとう。ルードに褒められるとお世辞でも嬉しいよ。それにしても見下げた奴だね。仲間を見捨てて逃げちゃうんだから」
「助けを呼びに行くという感じでもありませんでしたね。これは生かしておいても利はなさそうです。やはりこの場で食い殺してしまいましょうか」
「ハハハ、こんな友達甲斐のないの食べたら食あたりしそうだけどね。子供だし勘弁してあげて」
言いながら、俺はステボで時刻を確認する。十二時を少し過ぎていた。
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