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それぞれの成長 元戦乙女隊編
10.坑道の奥にいたのは(3)
しおりを挟む「それで、予言の話ですが――」
ルードが気まずさを紛らわすように話を進めようとしたのを手振りで止める。予言についてはもうなんとなく察していたので、こちらから口を開く。
「色々と合点がいったよ。あのときルードが言ってた通り、俺たちと合流してチエを倒すっていうのが、コーキの見た未来の中では最も被害が少ないものだったってことね」
「そうなんですが、違うんですよ。大事なのは流れなんです」
「流れ?」
「もし、僕がチエと引き合わせていなかったらどうなっていたかを考えてください」
言われて、すぐに頭に浮かんだのは新たな出会いだった。ドゴンたち元傭兵の一味、エリーゼたち元戦乙女隊の面々。もしかしたら、サブロとも出会いの切っ掛けを掴み損ねていたかもしれない。
それらの出会いがなければ、俺は今と同じような成長を果たせていたかは分からない。従魔の勾玉目的でダンジョンを周回していたかも謎だ。
だが、少なくとも人身売買の犠牲は減らせていたのではないだろうか?
俺が腕組みして熟考しているとルードが溜め息を溢した。
「僕が体を借りていたあの青年は口下手だったでしょう?」
「あ、そういえば、今は普通に話せてるね! 緊張しぃじゃなかったんだ!」
ルードが眉間に困ったような皺を寄せて「ええ」と言う。
「そうなんです。あれは彼の死体を操作していたからなんですよ」
ルードが言うには、所持している闇属性のスキル【キープ】で腐敗を抑え【ポゼッション】で死体に取り憑き操作していたそうだ。
魔物や獣ならばいざ知らず、人の体を動かすのは非常に難しいとのこと。
中でも特に大変なのが会話。どれだけ練習しても一向に上達せず、常に辿々しいままだったという。その所為で何度もチエにやり込められていたのだとか。
「ユーゴの考えていることは分かります。犠牲をもっと減らせたのではないかと言いたいんでしょう? ですが、僕にはこれが限界でした。もうストレスで……」
「ああ、そうか……。あれと半年だもんね……」
「殺さないようにするのに必死でしたよ」
考えてみたが、口下手な状態では情報収集も難しいだろう。下手をすれば荒事に繋がる。仮にルードがチエを殺していた場合、或いは逃げられていた場合、俺たちは何の情報も得られていなかった。ギルマスに扮していた転移術持ちの工作員も、或いは……。
もしそうなっていたら、現状よりも更に状況は悪くなっていただろう。
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