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それぞれの成長 元戦乙女隊編
3.鬼教官の次は神の使徒(1)
しおりを挟む人の気配。探知を使うと、受付カウンターの奥に三人の反応。
静かに扉を閉めて確認すると、軽鎧を身に着けた少年が三人、棚を物色していた。
おそらく全員、猫人。生意気そうな面構えで、歳は十代前半といったところ。
周囲の確認もそこそこに、手早く引き出しを開けて、そこから取り出した魔石や魔物の素材を腰に下げた袋やポケットに入れている。
鍵は掛けたはずだぞ?
冒険者ギルドの出入口前に閉鎖中の立て札を置き、扉に鍵を掛けたのは俺。掛かっているのも確認した。
にも拘らず入り込んでいるということは、手慣れていると見て良いだろう。悪ガキの悪戯という言葉で片付けて良いことではない。
ん? 三人の悪ガキ?
俺は「ああっ⁉」と声を上げてしまった。こいつらがルードを煩わせた新米冒険者だと思ったからだ。
ルードが姿を消したので詳しい特徴を聞けず仕舞いだったが、十中八九こいつらだろう。
俺の声に反応して、三人が「うわっ⁉」と声を上げて飛び上がった。が、空中で方向転換して着地と同時に駆け出し、素早く受付カウンターを飛び越える。
「驚かすんじゃねーよ! このウスノロー!」
俺の横を通り過ぎ様にそう言った一人が、体当たりするように出入口の扉を開け放って出ていく。続く二人も罵声と嘲笑を残して冒険者ギルドから出ていった。
心詠唱の【疾駆】か……⁉
子供だからと侮っていた。飛び上がってからの動きが猫そのものだったのに目を奪われ、両手足で着地してからの加速に唖然としている間の出来事だった。
「これはルードが手を焼く訳だ」
冒険者ギルドへの不法侵入と窃盗。これらは立派な犯罪行為。子供だから許されるというものではない。
サブロを虐待したことを反省させる為に、拳骨一発とお説教を食らわすつもりでいたが、そんな折檻程度では話が済みそうもなくなった。
トロッコの衝突事故の話もそうだったが度が過ぎている。一度しっかり取り調べを受けさせる必要がありそうだ。叩けば埃が出るに違いない。
俺は【浮遊】を発動し、閉まりかけた出入口の扉を跳ね除けて外へ出た。悪ガキ共が向かった方に折れると、すぐに逃げる背を捉えた。
少しだけ体を浮かせた状態で、風術推進で一気に加速。街ゆく人たちを避けつつ進み、隙間がなければ飛び越える。速度に驚いて皆目を剥くが、悪ガキ共はそれ以上に驚き慌てふためいている様子。
背後で悲鳴が幾つか上がったので、速度を落として振り返る。女性たちのスカートが風の悪戯で捲れ上がっていた。
ごめんなさーい。と心で呟いて再加速。
多分、そうするだろうと思っていたが、案の定、悪ガキ共は三方向に分かれた。
誰を追うかは最初から決めていた。俺のことをウスノロ呼ばわりした奴だ。そのウスノロに追い詰められている気分を十分に味わってもらいたい。
それにしても、俺の探知は不便だな。
人が多いと曖昧になる上に範囲も狭い。目視から外れた二人が既に捉えられなくなっている。こういう状況に陥ると努力を怠ったことが悔やまれる。
本腰を入れて鍛えないといけないなー。
ちらちらとこちらを振り返りながら、焦った様子で駆ける悪ガキに近づく。するとまた心詠唱で【疾駆】を使ったようで、距離が空いた。
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