上 下
327 / 409
それぞれの成長 パーティー編

33.確認したいこと試してみたいこと(6)

しおりを挟む
 
 
「ユーゴ、今度は何を?」

「まぁ、見ててよ」

 発動領域内で【ダークボール】を使う。半径一メートル以内の望んだ場所に漆黒の球が生成され、念じると発射された。ある程度の場所で解除を掛けると消失。

 へー、解除はできるんだな。

 次は【ファイアブレス】を使ってみたが、吐き出す息が火に変化したので口を火傷した。これは俺向きではないと判断。ブレス系はサブロに任せた方が良さそうだ。

 最後の【ダークフレイム】は『闇の炎を放射する』という説明通り、発動領域内の望んだ場所から外に向かって、紫から黒のグラデーションに揺らめく炎が放射された。なんだか禍々まがまがしいので、悪魔になったような気分を味わった。

 しかし、闇の炎って何だ。こんな雑な説明で恥ずかしくないのか神よ。でもなんだか懐かしいな。昔のゲームの説明書もこんな感じだったよな。

 自分でプレイして検証しないと分からないことだらけ。レベルで覚える魔法や術の大半は使う機会がない。どうやらこの世界でもそれは同じようだと覚る。

「どれもあんまり使えそうもないかー。なんとかならんかなー」

「あの、私がおかしいの? ユーゴは、水属性じゃなかった?」

「ん? ああ、そうだよ。今のは俺の術じゃなくてサブロのスキル。だから属性はサブロの持つ火と闇。従魔を持つと、スキルを借りれるんだよ」

「そんな話は聞いたことがないんだけど……」

 エリーゼはずっと困惑していた。自分の中にある常識が覆され続けているのだからそうなっても仕方がないとは思うが、慣れてもらわねばならない。

「じゃあ、戻ろう。イザベラたちにも説明したいからね。現ギルマスに訓練場を貸し切りにしてもらわないといけないから。閉鎖中だから問題ないだろうけど」

「うっ、本気でサブロと戦わせるつもりなんだな」

「生きていてほしいからね。『大切な人』には」

 目を見開いて頬を染めるエリーゼを抱き寄せてお姫様抱っこする。もう慣れたのか悲鳴は上げず、すんなりと受け入れて俺の首に手を回した。

「今のは、ずるい」

「あ、ごめん『大切な人たち』には、だった」

「もう!」

 腕の肉をつねられて「ててて」と言いながら【浮遊】を発動。【障壁】を覆いにして空へと舞い上がり、雲と並んだところで上昇を止める。

 そこで顔を見合わせた俺たちは、互いに軽く噴き出した。

「妾でも良いって、本気だからね」

「エリーゼを嫁にもらったら、あと三人付いてくるじゃないのー」

「仲の良いお嫁さんたちって素敵じゃない?」

「むしろ怖いよね」

 俺たちは談笑しながらウェズリーの街の冒険者ギルドへと向かった。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

スキル【自動回収】で人助け〜素直な少年は無自覚に人をたらし込む〜

ree
ファンタジー
主人公ー陽野 朝日は(ようの あさひ)は  かなり変わった境遇の持ち主だ。  自身の家族も故郷も何もかもを知らずに育ち、本だけが友達だった。  成人を目前にして初めて外に出た彼は今まで未知だった本の中の世界を夢見て冒険に出る。  沢山の人に頼り、頼られ、懐き、懐かれ…至る所で人をタラシ込み、自身の夢の為、人の為ひた走る。    【自動回収】という唯一無二のスキルで気づかず無双!?小さな世界から飛び出した無垢な少年は自分の為に我儘に異世界で人をタラシ込む?お話…  冒険?スローライフ?恋愛?  何が何だか分からないが取り敢えず懸命に生きてみます! *ゲームで偶に目にする機能。  某有名ゲームタイトル(ゼ○ダの伝説、テイ○ズなどなど)をプレイ中、敵を倒したらそのドロップアイテムに近づくと勝手に回収されることがありませんか?  その機能を此処では【自動回収】と呼び、更に機能的になって主人公が扱います。 *設定上【自動回収】の出来る事の枠ゲームよりもとても広いですが、そこはご理解頂ければ幸いです。 ※誤字脱字、設定ゆるめですが温かい目で見守って頂ければ幸いです。 ※プロット完成済み。 ※R15設定は念の為です。 ゆっくり目の更新だと思いますが、最後まで頑張ります!  

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界転移は草原スタート?!~転移先が勇者はお城で。俺は草原~

ノエ丸
ファンタジー
「ステータスオープン!」シーン「——出ねぇ!」地面に両手を叩きつけ、四つん這いの体制で叫ぶ。「クソゲーやんけ!?」 ――イキナリ異世界へと飛ばされた一般的な高校ソラ。 眩い光の中で、彼が最初に目にしたモノ。それは異世界を作り出した創造神――。 ではなくただの広い草原だった――。 生活魔法と云うチートスキル(異世界人は全員持っている)すら持っていない地球人の彼はクソゲーと嘆きながらも、現地人より即座に魔法を授かる事となった。そして始まる冒険者としての日々。 怖いもの知らずのタンクガールに、最高ランクの女冒険者。果てはバーサーカー聖職者と癖のある仲間達と共に異世界を駆け抜け、時にはヒーラーに群がられながらも日々を生きていく。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん
ファンタジー
⭐︎コミカライズ化決定⭐︎    2024年8月6日より配信開始  コミカライズならではを是非お楽しみ下さい。 ⭐︎書籍化決定⭐︎  第1巻:2023年12月〜  第2巻:2024年5月〜  番外編を新たに投稿しております。  そちらの方でも書籍化の情報をお伝えしています。  書籍化に伴い[106話]まで引き下げ、レンタル版と差し替えさせて頂きます。ご了承下さい。    改稿を入れて読みやすくなっております。  可愛い表紙と挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。  書籍版『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』を是非ご覧下さい♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は住んでいた村の為に猟師として生きていた。 いつもと同じ山、いつもと同じ仕事。それなのにこの日は違った。 山で出会った真っ白な狼を助けて命を落とした男が、神に愛され転移先の世界で狼と自由に生きるお話。 初めての投稿です。書きたい事がまとまりません。よく見る異世界ものを書きたいと始めました。異世界に行くまでが長いです。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15をつけました ※本作品は2020年12月3日に完結しておりますが、2021年4月14日より誤字脱字の直し作業をしております。  作品としての変更はございませんが、修正がございます。  ご了承ください。 ※修正作業をしておりましたが2021年5月13日に終了致しました。  依然として誤字脱字が存在する場合がございますが、ご愛嬌とお許しいただければ幸いです。

処理中です...