上 下
326 / 409
それぞれの成長 パーティー編

32.確認したいこと試してみたいこと(5)

しおりを挟む
 
 
「私、魂格十一なんだけど、ユーゴは今どれだけあるの……?」

「俺? 四十六だね」

 四十六、と呟いて魂が抜けたようになったエリーゼを放置し、俺は【異空収納】からステーキの入ったバットを取り出す。

 それをサブロの前に置いて「ご飯だぞ」と声を掛けると、サブロは「ギキュウ」と嬉しそうに鳴いて笑顔で食べ始めた。俺は腕組みしてその様子を眺める。

「んー、事前にステボで確認していたとはいえ予想以上に成長してたな。勾玉に入ってると状態が分からんから怖いよな。サブロ、勾玉の中の広さは大丈夫か?」

 サブロは「グァウ」と答えて頷く。大丈夫なようで一安心。従魔の証はもう外してあった。チェーンの長さが足りなくて巻けなくなってしまったのだろう。

 あれを腕に巻いて感動に震えていた可愛らしいサブロはもうどこにもいない。今は闇竜だと言われても何の疑いも抱けない。その名に違わぬ立派な姿となっている。

 でも、もう少し小さいままでいて欲しかったな……。

 子供の成長を見る親の複雑な心境のようなものを味わいつつ、俺はサブロに必要な物をざっと確認した。食事用の器と従魔用のアクセサリー。

 あとは、専用のくらとか合っても良いかもな。騎獣になることをサブロが嫌がらなければだけれども。

「ユーゴ、それで、私を連れてきた理由は?」

「ん? まずはサブロとの顔合わせ」

 エリーゼが「まずは?」と訊き返すのを手で制し、サブロのステボをチェックする。魂格が上がったので補正値で平均五十を超えはしたが、基礎能力値が低くて見掛け倒し状態。これでは的と変わらない。大きく目立つだけに尚の事。

「エリーゼ、補正値込みの能力平均値ってどのくらい?」

「え⁉ わ、私⁉ よ、四十くらいだけど……」

 ふむ、と俺は顎に手を遣って、レノア、イザベラ、ニーナの能力値を訊ねた。

「イザベラが平均五十でレノアが平均三十くらい。ニーナは私より少し低いな」

「よし、丁度良いな。頼みがあるんだけど、サブロと修行してくれないか?」

「え? サブロと?」

 エリーゼが目を丸くして俺とサブロを交互に見る。

「見た目は強そうだけど、能力値はエリーゼたちと変わらないんだよ。一昨日までは手の平に乗る大きさだったし、基礎能力値が追いついてないんだ」

「そ、そうなの? とてもそんな風には見えないんだけど」

「まぁ、それは戦ってみれば分かるよ。ここではやらないけどね」

 サブロが食事を終えたので、俺はバットを【異空収納】に仕舞い、サブロに勾玉へ戻ってもらう。その光景を見ていたエリーゼの目は点になった。

「ねぇ、ユーゴは、神様か何かなの?」

「ハハハ、何言ってんの。ダンジョンのドロップアイテムを使ってるだけだよ」

 言いつつ、もう一つの目的である従魔スキルの試し打ちを始める。既にステボで確認済みだが再確認。説明にもざっと目を通す。

 サブロの新しいスキルは【ポイズンブレス】と【ダークフレイム】の二種。勾玉に入っている状態でもスキルが借りれるか【ダウン】を自分に掛けて試してみる。

 俺の周囲に黒煙が立ち上り、脱力感に見舞われる。大丈夫なようだと覚ったので『毒の息を吐く』という俺やエリーゼまで危なそうな説明の【ポイズンブレス】以外のすべてのスキルを試してみることにした。

 まずは【ダークボール】だが、念じた場所に発動することができなかった。自分の術と違い、従魔スキルは発動領域内でしか使えないことが分かった。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...