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それぞれの成長 パーティー編
29.確認したいこと試してみたいこと(2)
しおりを挟む「ちなみにクソ親父の方は?」
「ドノヴァン。思い出したくもないゲス野郎だよ。今なら復讐してやれるのに」
「何の話か分からんがフィルがそんな物騒なことを言うのは珍しいな」
「あ、そうか。サクヤには話してなかったもんね」
フィルが掻い摘んで話し出す。俺も聞いたことのない残虐な部分があって思い切り引いた。サクちゃんもそのようで、かなり険しい顔になった。
「少なくとも朝食時に聞く話じゃないよね」
「ああ、人の両手足を切断して愛玩動物として飼うって、正気の沙汰じゃないぞ」
「ほんの一例に過ぎないよ。まともじゃないんだよアイツは。というより、ラグナス帝国は異常者の集まりだと思った方がいいよ。僕は色々と調べたけど、存続している理由がクズの掃き溜めだからなんだよね」
サクちゃんが「どういうことだ?」と訊く。だがフィルはパンをかじったばかりで答えれそうもなかったので、俺が代わりに口を開いた。
「要するに、嫌われてつまはじきにされた連中が国を出てラグナス帝国に移住してるんだよ。人族ってだけで優遇されるんだから、性格に難のある連中や異常者からしてみりゃ天国ってこと。だよな?」
フィルが咀嚼したパンをスープで飲み下して「うん」と首肯する。
「そういうこと。チエがいい例だよ。ああいうのって、人族の中だと毛嫌いされるでしょ? 和を乱すっていうか、相手にしたくないじゃない? でもラグナス帝国だと問題ないんだよ。亜人相手なら何をしようが許されるんだから」
「そういうことか。人族至上主義ってそういうことなんだな。漠然としか理解できてなかったってのを思い知った。恐ろしい思想だな。人の闇だ」
「うん、だからちょっくら滅ぼしてこようかと思って」
二人が「は?」とまたも声を揃える。デジャヴュだ。
「聞き間違いじゃないよな?」
「滅ぼすって聞こえたような気がするんだけど?」
俺は「冗談だよ」と言って食事を済ませ、手拭いで口を拭う。
「じゃあ、ダンジョン周回頑張って」
二人にそう声を掛けて、俺は宿の出入口へと向かい、その扉を開けた。
呼び鈴の涼やかな音と扉の閉まる音を背中で聞きながら通りに出る。
まだ早い時間とあって、人の往来は少ない。これなら大丈夫だろうと路地に入り、誰もいないのを確認して【浮遊】を掛ける。
天井付近まで一気に上昇し、街の出入口へ。高さは目算がしにくいので何メートルあるかは判然としないが、五十メートル以上はあると思う。
出入口付近で人のいない路地を探し、一気に下降。着地した後で胃から物が上がってくるのを飲み下す。食事をとったばかりでやることじゃなかったと反省しながら、ふらふら歩いて門へと向かう。
「あ、ユーゴ」
門前の階段を上った先で声を掛けられた。顔を向けると門兵が兜を脱いだ。軽く頭を振り、手櫛で髪を整え笑顔を見せる。俺はその見知った顔に歩み寄る。
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