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それぞれの成長 パーティー編
28.確認したいこと試してみたいこと(1)
しおりを挟む翌日、秋一期二十二日。ヤス君の帰還予定日、そして明日がルードとの約束の日。
「ヤスヒト帰ってくるかな?」
宿の食堂で朝食をとりながらフィルが言った。出される物は毎回同じパンと腸詰めに野菜スープ。いい加減飽きてきたな、と思いつつ俺は「さぁ?」と答える。
「仮に帰ってこなくても、先にリンドウ邸に向かえば良いと思うよ。子供じゃないんだし、宿に言伝頼んでおけば追いかけてくるよ」
「それはそうだけどさー、心配じゃないの?」
フィルにムスッとした顔で訊かれるが、俺は「全然」と答える。寝ている間に精神感応で元気にやってる姿を見たばかり。心配しろと言われても無理な話だ。
「怪しいな。ユーゴ、何か知ってるだろ?」
サクちゃんがフォークに刺した腸詰めを向けつつ訊ねてきた。俺はその行為にどんな意味があるのだろうと思いながら「ヤス君は無事」と答える。
「何の因果か友人と瓜二つな子孫と出会って、多分、今も一緒に行動してる。ここで落ち合えなくてもリンドウ邸かアルネスの街に連れてくるでしょ。サクちゃんとミヅキさんみたいに好い仲になる可能性も十分にあるだろうね」
二人が「は?」と声を揃えるのを無視して俺は黙々と食事を進める。
「何でそんなこと分かる訳?」
「そういうスキルでも取得したのか?」
「秘密。いいから食べちゃいなよ。ダンジョン行くんでしょ?」
フィルとサクちゃんは今日もダンジョン四十階層の周回に向かう。ウェズリーを発つのは明日なので、それまでは粘るつもりらしい。
俺も手伝うつもりだったが、気が変わった。確認しておかねばならないことがあるのと、試してみたいことができたから。他にも、色々とやりたいことが――。
「ユーゴも手伝ってくれたら効率上がるんだけどなー」
フィルが上目遣いで言う。可愛く見せているが、そんなものが今の俺に通用すると思うなよ。やることいっぱいあって頭がこんがらがってるんだからな。
ああ、そうだった。一応、確認しておかないといけない。
「突然だがフィルよ、お前の伯父さんの名前は何という?」
「え、どうしたの突然?」
「突然だと前置きしたのに突然で言葉を締めて訊き返すのはやめなさい。そういうの良くないぞ。『本当に突然だね』って無難な返しでいくか『お前の伯父さんの名前を教えたら教えてやろう』って馬鹿を言ってみるとか、もう少し何かあるだろう」
「う、何で怒られてるの僕?」
「返しが天然だったからだ。いいから答えなさい」
「ウェッジ・ローライズ卿だけど……?」
俺は目を覆う。うん、そういうことね。やっぱり繋がっちゃうのね。
次の目標というか、ヒントが与えられるというか。ここまでくると、誰かがこうなるように俺を配置したように思えてくる。誰かとは言わずもがな神なんだけれども。
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