320 / 409
それぞれの成長 パーティー編
26.精神感応はヤス君の旅を見せる(3)
しおりを挟む「信じるかどうかは任せるけど、全部本当。俺がここにいるのは、サーヤの遺したものを知りたくて、いつかシンドゥー王国を旅するつもりだったからだよ」
でも、とヤス君は肩を竦める。
「話を聞く限りじゃそのシンドゥー王国は内乱中な訳だろ? 旅はしばらくお預けだなって思ってる。ただサーナと会えたから、別に当分はしなくても良いかなとも思ってるけど」
ヤス君は照れ笑いしながら頬を掻く。確かに見間違えるほどそっくりな子孫と出会ったんだから、目的は達したようなもんだなと思う。羨ましい。
「ヤスヒト様、いえ、ヤスヒトは『自動車』という乗り物を作れる?」
ヤス君が「は?」と目を丸くして首を傾げる。
「どうしたんだよ急に?」
「答えて!」
凄い剣幕で言われてヤス君が「う」とたじろぐ。
「まぁ、本物は無理だけど作れるな。さっきのも二輪だけど『自動車』だし」
サーナが「やっぱり! あれがそうなのね!」と言ってヤス君に詰め寄る。
「初代様の残した異世界物語の中に出てくるの! それに乗って『ドライブ』っていうのを楽しむって! ヤスヒトは本当に異世界から来た人なのね!」
「いや、だから、最初からそう言ってるだろ」
「だったら、お願い! シンドゥー王国を救うのに力を貸して! 『自動車』って凄く速い乗り物なんでしょう⁉ それがあれば戦えるわ!」
ヤス君は呆れたような顔で「気性まで遺伝してんのかよ……」と呟く。それからサーナの肩に手を遣り押し返すと、深々と溜め息を吐いてかぶりを振った。
「救うって言うけど、どうするんだ? 姉ちゃんを殺すのか? 悪いけどさ、俺は誰が王だろうが別にどうでもいいんだよ。シンドゥー王国が存続さえしてれば旅行はできる訳だし、変に首も突っ込みたくない訳」
「そんな⁉」
「まぁ落ち着けって」
ヤス君は興奮するサーナに何があったかを最初から話すように言った。事情を聞いた上で、どうするかを考えるとも。サーナは目を細め、ヤス君に疑わしげな視線をぶつける。
「考えるだけ、とは言わないわよね?」
「あのさ、確認だけど、日サロ行ったサーヤじゃないよな?」
日サロ? とサーナが眉を顰める。ヤス君は「何でもない」と言って手を振る。どうやらサーナはサーヤと受け答えまで似ているようだ。
「とにかく、話を聞いた上で判断するから、さっさと話せ」
「王族に命令って、あんた相当ね。まぁいいわ。私もそっちの方が気が楽だし」
「王女が聞いて呆れるな」
ヤス君の軽口に「うるさいわね!」と言い返し、サーナが視線を落とす。
「さっきも言ったけど、始まりは一週間前の王殺しよ。父様は可もなく不可もなくって感じの人で、よくマリーダから『王らしくない』って叱られてたわ」
0
お気に入りに追加
432
あなたにおすすめの小説
俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話
猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。
バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。
『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか?
※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です
※カクヨム・小説家になろうでも公開しています
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる