【完結】蓬莱の鏡〜若返ったおっさんが異世界転移して狐人に救われてから色々とありまして〜

月城 亜希人

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それぞれの成長 パーティー編

20.初めてのダンジョン周回は効率重視でした(1)

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 ゴール地点に三人が揃うと、派手なファンファーレが鳴り響いた。

 赤い扉がゴゴゴゴと地響きに似た大袈裟な音をたてて開いていく。

 開いた扉の向こうにマーダードールベアの姿が見て取れた。どうやらアトラクションをクリアすると階層主の部屋に戻されるようだ。

「急にイベント始まっちゃったから、労いの言葉も掛けられなかったよ」

「ん? ああ、気にすんな。どうせルール無視の脳筋とか言うつもりなんだろ」

「疑心暗鬼になりだしちゃってるけど、ユーゴならその可能性も否めないよね。そりゃあんだけいじられたらサクヤも成長するか。気持ちは分かるよ」

「はいそこ憶測やめてねー。さーて、これからどうなるんだろうねー?」

 会話しながら三人で階層主の部屋に足を踏み入れる。と、マーダードールベアがこちらを見て驚愕の表情を浮かべ「え、ええー⁉」と叫んだ。その後ガクリと膝から崩れ落ち、床に両手両膝を付けて戦慄わななき始めた。

「ななななんてことだ。まさか、まさか本当にクリアしてしまうなんてー」

 身振り手振りが始まる。非常に演技過剰な感じがするが、ミュージカル好きなのかサクちゃんとフィルは物凄く真剣に見入っている。

「約束は約束だからね。次の階層に向かう扉を開けてあげるよ。でも残念だったなー。君たち、とっても美味しそうだったのにー。でもまぁ仕方ないよね。また今度遊びにきてよ。あ、そろそろ僕、バイトの時間だから帰るね。バイバーイ」

 バイトしてんのか。階層主なのに。世知辛いな。

 マーダードールベアが手を振り、ボフンと煙玉が爆発したような演出と共に消える。その煙が晴れた後には一つの宝箱が残されていた。

 俺たちは「あ!」という声を揃えて宝箱に駆け寄る。縁取りが金色、それ以外の部分が赤く塗られた見るからに高級そうな宝箱。

「い、一発目から出たね。アトラクションルートでも出るんだね」

「なんだろう、ドキドキするね」

「なぁ、フィル、宝箱って種類があったりするのか?」

「うん、あるよ。虹色がレアドロップ確定。それ以外はレアドロップの可能性があるって感じ。これは五十パーセントでレアドロップの高級宝箱だと思う」

「二分の一か。十分に期待できるね。ちなみに、ハズレは何?」

「殺人熊の着ぐるみ寝間着」

 え……? それ、ある意味、大当たりじゃないか?

 マーダードールベアの着ぐるみパジャマを着たサイネちゃんを想像してほっこりしてしまう。サクちゃんもほっこり感が出ていたので、ウイナちゃんのことを考えているようだと覚る。どんなのか知らないけど、可愛かったら悶死するぞ。

「ペドフィリアたちよ、戻ってきなさい」

「やめろ。溺愛してることは認めるが保護者感覚なだけだ」

「俺はミヅキさんがいるからな。そういう性的嗜好はない」

「真面目に言い返さないでよ。僕が悪かったよ」
 
 
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