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それぞれの成長 パーティー編
8.大きくなっちゃった(1)
しおりを挟むなんだか胸の辺りが重くて目が覚めた。
寝ぼけ眼を向けると布団の上に中型犬ほどの大きさがある黒い塊が乗っていた。その塊は、俺が動いたことに反応して「ピギッ」と鳴いて顔に飛びついてきた。
「わぷっ⁉」
俺は軽い恐慌状態に陥りつつも、その生き物を両手で掴み顔から引っ剥がす。仰向けになって高く持ち上げると見覚えのある顔が目に飛び込んできた。
「まさか、サブロか⁉」
「ピギー」
はっきりと笑んでいるのが分かる顔で、サブロが嬉しげに鳴きながら頷く。たった一日で随分と大きくなった。重さは体感二十キロくらい。頭の側面には小さな曲がった角が二本。蝙蝠のような翼まで背に生えている。
「んー、うるさいよユーゴ? げっ⁉」
フィルが隣のベッドからそんな声を上げた。
「いや、分かるけど、『げ』はないだろう。サブロが傷つく」
「サブロなのそれ⁉」
フィルがベッドから降りて駆け寄ってきた。俺は半身を起こしてベッドで胡座を掻き、サブロを隣に下ろす。サブロは寝そべるような状態だったこれまでとは違い、尻尾を支えにしてしっかりと座った。竜のぬいぐるみのようだ。
「うわ、本当だ。顔はサブロだ。骨格から変わってるけど」
「うん、どう見ても二足歩行になってるからな」
言いつつ、サブロのステボを開いて確認する。昨日のダンジョンで魂格が十二まで上がったが、心当たりがあるとすればそのくらい。
「魔物の成長って魂格依存なのかね?」
「知らないよ。でも目の前で起きたんだから、そうなんじゃない?」
フィルがサブロを撫でてウフフアハハしているのを横目にスキルを確認。
【ダークボール】と【ファイアブレス】と【ダウン】。
【ダークボール】は最初から持っていたスキル。チエとの戦いでサブロが放ってくれた黒い球。説明は『闇属性の攻撃』としかない。
【ファイアブレス】と【ダウン】が新たに習得したスキル。それぞれ『火炎の息吹による攻撃』と『対象の能力値を落とす』ということらしい。
【ファイアブレス】は無理だが【ダウン】はここでも使えそうだ。俺も使うことがありそうだし、どのくらい効果があるのかを知っておきたい。
「フィルよ、検証を頼めるか?」
「え、何の?」
俺はフィルの脇に手を入れ高く持ち上げる。その状態で、自分に【ダウン】を掛けてみる。薄っすらと黒い煙が周囲に漂いすぐに消える。脱力感に襲われ、重みが増したように感じた。
「何してんの……?」
「体感で確認中」
冷めた顔で訊ねてきた宙ぶらりんのフィルにそう答え、自分のステボを開く。思いのほか能力値が下がっていた。ざっと計算してみる。
は⁉ 二割引き⁉
スーパーのチラシでも見たかのような言葉を心で叫びながら、よく確認する。固定値で能力値が落ちる訳ではなく、全体が割合で落ちている。
ついでに重複できないかを試してみたが、それは不可能なようだった。
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