301 / 409
それぞれの成長 パーティー編
7.それなりに派手なのに影が薄い(3)
しおりを挟むどうにか声掛けが間に合った。サクちゃんが飛び掛かってきた右の一頭を足先から滑り込むようにして躱し、半月斧を通り過ぎ様に横薙ぎに振る。
それを横目で見つつ、俺は襲い掛かってきたドーベルリザードに向かい両手の平の間から新術【迅雷】を放ちつつバックステップ。黄色い残光の帯を引いて【迅雷】が迸りドーベルリザードに直撃する。
ジジジジッと音が鳴り、ドーベルリザードは体表に細かな火花と稲妻を走らせて痙攣。光の明滅が終わると煙を上げて地に倒れ伏した。
う、うわー、恐ろしいなこの術……。
観察も程々に残り一頭に目を遣ると、サクちゃんが半月斧の柄で突進攻撃を弾いているところだった。俺はそれを見ながら【障壁】を体の周囲に纏う。
その後【浮遊】で僅かに体を浮かし、風術推進で高速突進を仕掛け、攻撃を仕切り直しに着地したばかりのドーベルリザードの顔面に【砕破】を打ち込んだ。
軽快な破裂音を発して、ドーベルリザードの頭が半壊。軽く血飛沫が飛んだが【障壁】が受けてくれているので問題はない。
腕を振り抜くと同時に術を解除。慣性で流れる体を着地と同時に足でブレーキをかけて止める。加速が凄くてちょっと怖かった。
額の冷や汗を袖で拭いながら、ふぅっと息を吐く。
「な、何だ今の⁉ 【疾駆】じゃないよな⁉」
「ユーゴ⁉ 凄い速かったよ⁉」
肩で振り落とされまいと必死になっていたサブロも「ピッピギピー⁉」とおったまげーみたいに鳴く。どこで覚えるんだそんなの。
俺は驚く二人に向かって肩を竦める。
「新術だよ。俺はヤス君の言ってたイメージが掴めなくて、転移が使える気がしなかったから、高速移動に切り替えたんだ。そしたら今の術が出来た」
「それ、俺にも使えるか?」
「風属性を推進力に使ってるから、難しいかな」
サクちゃんが肩を落としたのとは対照的に、フィルが目を輝かせる。
「風属性ってことは僕にも習得のチャンスはあるってことだね⁉」
俺は【浮遊】で体を浮かし、素早く移動しながらドーベルリザードの死骸を【異空収納】に収めていく。二人が呆気にとられた様子になる。
「見ての通り、俺は無属性術で体を浮かしてるから念動力を使えないと習得は無理だね。でもフィルなら他に方法があるんじゃないの?」
「風術で空を飛ぶのはコントロールが難しくて事故が多いんだよ……。というか、なんでそんなに平然と空中浮遊できてるのさ⁉ おかしいだろ⁉」
「どうやるんだ⁉ 俺も飛びたい!」
フィルが地団駄を踏み、サクちゃんが息を吹き返す。なんだかこういうのも恒例行事みたいになってきたな、と思う。
結局この日は四十一階層の転移装置までで終了し、二人に術のコツを教える羽目になった。
おかしいな。俺は【迅雷】の威力を試すはずだったんだけどな。
ダンジョンを出るまで、遭遇した魔物相手に何度か使ったのだが、二人の【迅雷】への反応が余りに薄くて、少し残念な一日だった。
0
お気に入りに追加
431
あなたにおすすめの小説
地球からきた転生者の殺し方 =ハーレム要員の女の子を一人ずつ寝取っていきます
三浦裕
ファンタジー
「地球人てどーしてすぐ転生してくんの!? いや転生してもいいけどうちの世界にはこないで欲しいわけ、迷惑だから。いや最悪きてもいいけどうちの国には手をださんで欲しいわけ、滅ぶから。まじ迷惑してます」
地球から来た転生者に散々苦しめられたオークの女王オ・ルナは憤慨していた。必ずやあのくそ生意気な地球人どもに目にものみせてくれようと。だが――
「しっかし地球人超つえーからのう……なんなのあの針がバカになった体重計みたいなステータス。バックに女神でもついてんの? 勝てん勝てん」
地球人は殺りたいが、しかし地球人強すぎる。悩んだオ・ルナはある妙案を思いつく。
「地球人は地球人に殺らせたろ。むっふっふ。わらわってばまじ策士」
オ・ルナは唯一知り合いの地球人、カトー・モトキにクエストを発注する。
地球からきた転生者を、オークの国にあだなす前に殺ってくれ。
「報酬は……そうじゃのう、一人地球人を殺すたび、わらわにエ、エッチなことしてよいぞ……?」
カトーはその提案に乗る。
「任せとけ、転生者を殺すなんて簡単だ――あいつはハーレム要員の女を寝取られると、勝手に力を失って弱る」
毎日更新してます。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
ウィッチ・ザ・ヘイト!〜俺だけ使える【敵視】魔法のせいで、両親に憎まれ村を追放されました。男で唯一の魔術師になったので最強を目指します〜
(有)八
ファンタジー
「親父! 俺、冒険にでたい!」
「は? 無理だろ常識的に考えて」
冒険者に憧れる少年タクトは冒険に出たかった。しかし世界の常識が邪魔をする。“男は”冒険者になれない……魔法が使えないからだ。女だけが魔法を使える。それが十五年生きて知った常識だった。
ある時、夢を否定され意気消沈するタクトの前に一人の老婆が現れる。老婆は自分の事を“魔女”と言った。
「お前さんに魔法を使わせてやろう」
魔女の言葉にタクトは半信半疑だったが、村に帰った時それは確信に変わった。
「お前はもう息子ではない! 今すぐ村を出て行け!」
村の全員が豹変し両親でさえタクトを憎み、侮蔑する。魔女から与えられた力は普通の魔法ではなかったのだ。『敵視《ヘイト》を自身に向ける魔法』。使えば周りは敵だらけになる。
両親から憎まれ、村を追放されたタクトは一人決意する。「最強の魔術師になって、馬鹿にしてきた奴らを見返してやるッ!」
これは、与えられた特異な魔法を武器に、世界でたった一人の“男の魔術師”を目指した少年の物語。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!
KeyBow
ファンタジー
日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】
変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。
【アホが見ーる馬のけーつ♪
スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】
はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。
出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!
行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。
悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!
一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる