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それぞれの成長 パーティー編

5.それなりに派手なのに影が薄い(1)

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 ヤス君が出発して四日目。パーティー合流まで折返し地点を過ぎた。

 俺は新術を試したくてフィルとサクちゃんを伴ってダンジョンを訪れている。

 階層は四十一。下層階の入口だ。

「ヤスヒトがいないのに、なんだか悪い気はするんだけどね」

「確かに、抜け駆けしているような気にはなるな」

「そういう割には、声を掛けたら二つ返事で引き受けてくれたよね」

 まぁ、暇だったから。という力ない声が揃う。「ピギー……」とサブロも項垂れる。流石に三日もトレーニングが続くと息抜きが必要らしい。

 俺は初日にフィルにサブロを預け、カナン大平原までの空の旅を楽しんでいたのでそうでもないが、やはりマンネリ化というものは苦痛なのだと皆を見て思った。

 【光球】と【冷涼薄霧】を使い、薄ら赤い光を放つ洞窟内を歩く。ウェズリーのダンジョンは下層に進むごとに熱を持つらしく【冷涼薄霧】が大活躍している。

「ヤスヒトがいないと、探知が心許こころもとなくて恐いよな」

「一応、俺が使ってるけど、罠の解除とかはできないから、そこは恐いよね」

「罠を見つけたら、遠距離攻撃術をぶつけて発動させちゃえば良いよ。ヤスヒトも面倒なときはそうしてたじゃない?」

「毒ガス噴出とか、気体系以外はね。俺の探知だと距離もそんなに取れないから」

「それでも俺よりは断然マシだ。反応あるか?」

 俺は探知に何の反応もないことを伝える。まだ四十階層から降りたばかり。どこの階層でもそうだが、階段付近にはあまり魔物はいない。

 流石に下層ともなると、冒険者の数も少ない。上層は他のパーティーとすれ違う頻度が高く、中層は全滅したパーティーの跡を目にする頻度が高かった。

 ダンジョンは魔物も人も死んでいれば飲み込んでしまう。遺留品だけが遺される。それも他のパーティーが持っていってしまうので、後には何も残らない。

 俺たちはそんな墓荒らしみたいな真似をしたことは一度もないが、フィルによれば、冒険者の間では礼儀みたいなものなのだとか。

「なんで盗賊の真似事が礼儀だって言われてる訳?」

「思いを継ぐって意味があるんだよ」

「甲子園の砂みたいだな」

 軽い会話を挟みつつ歩くが、やはりヤス君がいたときと違い適度な緊張感がある。探知役ってこんなにしんどいのかと思ったが、よくよく考えてみたら俺だけ術を三つも行使している。

 【光球】くらいは受け持とうよサクちゃん……。

 心で呟いてじっと見ていたら、気づいたサクちゃんが「あ、悪い」と苦笑しながら【光球】を出した。目は口ほどに物を言うが発動した。そんなスキルはないのだがね。

 十分くらい進んだところの三叉路で探知に反応があった。左側には三体、右側には五体いる。それを伝えると、サクちゃんから数が多い方が良いだろうという意見が出た。

「なんか、サクちゃん戦闘狂みたいな発言するようになったよね」

「ああ、それは認める。最近フラストレーションを溜め込んでるしな」

「半月斧は扱えるようになったの?」

「それを試したいんだ」

 サクちゃんが【異空収納】から半月斧を取り出す。長羽織によく合っている。見た目は完全に武人だ。コーキの予言も中々に鋭く言い表しているな、と思う。

 こうして見ると、フィルも貴人という表現がしっくりくる。ヤス君の賢人もぴったりだ。俺の英雄って一番微妙だろう。そもそも英雄って特徴捉えづらい表現だよな。

 コーキよ、俺には特徴がなかったってことか?
 
 
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