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それぞれの成長 パーティー編
1.鍛練する理由となんとなく出来た新術(1)
しおりを挟む事件から三日が過ぎた。秋一期十八日。洞窟内なので天候はいつも晴れ。
俺はウェズリーの坑道付近にある廃墟で、サブロと一緒に鍛練をしている。チエによる冒険者ギルド立てこもり事件のあった日に、ドゴンたちが身を隠していた場所だ。
何故こんな場所で鍛練しているかというと、ウェズリーの街に従魔と一緒に鍛練できる場所がなかったからだ。何処か良い場所はないかと探したところ、ここを思いつき、イワンコフさんに許可を取って利用させてもらうことになった次第。
サブロはかなり成長した。まだ魔物の討伐には参加していないので魂格は一だが、たった二日で平均値が四十ほどにまで伸びた。
成長の早さに驚かされたが、へばる度に餌と回復術を与えてのスパルタだったので、そうなっても不思議はないかなとも思う。要はやり過ぎてしまったという訳だ。
そのことについては反省しているが、サブロに俺を嫌った様子は見えない。ランニング中に俺の肩にしがみついていられることを喜んでいるようなので、これで良かったのかなとも思う。俺も毛髪の安全確保に成功したし万々歳だ。
もっとも、能力値が倍以上ある俺が本気で動けば途中で振り落としてしまうので、そこは調整しているのだが、それを明かすとサブロが無理をしそうなのでまだ秘密にしている。焦らずじっくり強くなってもらえばと願っている。
強くなったといえば、俺もそう。能力値は飛躍的に上昇していて驚いた。魂格が二十五。魔力は四千二百。能力値は補正値込みで平均値が百七十を超えていた。
この急成長はチエとの戦いで命の危険があったことが影響しているのではと思う。事件前と事件後では、発揮できる力の感覚が違うことがはっきりと自覚できたので、おそらく無関係ではないだろう。
或いは、強者が相手の実戦は能力値の伸びが大きいのかもしれない。いずれにしろ危険と隣り合わせなので検証する気はない。ただ頭の片隅に置いておくだけにしようと考えている。
ちなみに、例のごとく平均算出に含めていない魅力値は百二十ある。エリーゼたち戦乙女隊のアプローチはこの所為だったのではと疑念を抱いている。
一夫多妻が許されているとはいったものの、ハーレム願望がないので弱る。元の世界に帰れないと分かったら考えるかもしれないが、それでも嫁さんがいっぱいいるというのは精神的にキツそうだ。
建前とはいえアープもいるし……もう考えるのをやめよう。頭が痛くなってきた。
ヤス君は予定通り、事件の日の晩にウェズリーを出た。チエが自爆した後の、言葉にするのも悍ましい状態になった【箱庭】の後片付けをしてからだったので、かなり遅い時間になったが、先延ばしにはしなかった。
「じゃあ行ってきます」
暗闇の中、SFアニメに出てきそうな大型バイクのような物に跨って言うヤス君には驚いた。【魔力モーター】の外側は戦車以外も発想次第で作り変えられるらしく、色々と融通が利くらしい。
今度はボートを作って試す予定だとか。そのうち飛行機なんかも作るのではないかと予想している。【魔力モーター】恐るべし。
だが、腑に落ちないところもある。ゴーグルと土術で作ったヘルメットを装着して走り出すのは格好良かったが【傀儡操作】で魔導具のランタンを三つも自由自在に扱うってやり過ぎだと思う。
光源は光術の専売特許だと思っていたのに、お株を奪われてしまった。ダンジョンでの俺の役割が更に減ったように思う。そりゃコーキも賢人って予言を残すわな。
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