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もう一人の渡り人編

11.自嘲の言葉を呟くと間髪入れずに首肯する友人(4)

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「あれ? ユーゴさん知っててやったんじゃなかったんすか? 最初から捕まる予定みたいな話してたから、俺はてっきり知ってるもんだと思ってましたけど」

 きょとんとした顔のヤス君に問われ、俺は脂汗が浮くのを感じた。

 言われてみればそうだ。それを脅しに使う輩がいるから、権力者を装うのが重罪にされている。捕らえた後に証が立って極刑にされるなんて仕組みだと、衛兵は罪を恐れて詐欺師を捕まえられなくなる。誰だって貧乏くじは引きたくない。

「俺って、馬鹿だったんだな」

「うん、知ってる」

 フィルが間髪入れずに首肯してからエリーゼに顔を向ける。

「でもそれならどうして、エリーゼはユーゴを捕縛しなかったの?」

「諸君の話に、思い当たる節があったからだ。もし戦乙女隊が人身売買に関わっていたとすれば由々しき事態。あのチエとかいう冒険者ギルド職員との癒着の方が事案としては大きい。それにユーゴは、私を笑う隊員たちを一喝し、手を握って引き寄せてくれた。そして話を聞いて導いてくれた。とても悪人とは思えない」

 エリーゼが手を擦りながら、恥じらうような上目遣いで俺を見る。

「と、殿方に手を引かれるというのは、悪くないものだな」

 え、なにこれ?

「ユーゴさん、早くも二人目の嫁さんですか。節操ないっすね」

 エリーゼが「え?」と目を見開いて呟き、眉を下げて笑む。

「そ、そうか、ユーゴは既に結婚していたのか……」

「いや違う。してない。それに何かおかしい。ヤス君がややこしくしてる」

「まぁ、解放ってことだから、僕たちは冒険者ギルドに向かうよ」

「詐称したのはユーゴだけだしな。どう考えても、エリーゼに協力してやらんと駄目だろ。ユーゴの所為で咎められることにでもなったら気の毒だ」

 おい、詐称はしてないぞ。証がないだけだぞ。

 だがその人聞きの悪い間違い一点を除けばサクちゃんの言うことはもっとも。全員解放した場合、他の隊員が息を吹き返し、エリーゼの失策だと責め立てる恐れがある。取り敢えずの言い訳を作るには、推定詐欺師の俺が同行するべきだろう。

 それでも三人は逃亡ではなく解放扱いになったので結果としては上々。ルードにサラマンダーは届けられるので憂いはない。

 念の為、ヤス君から【天眼芯】を受け取りズボンのポケットへ。

 ギチギチだなおい。やっぱ受け取らなきゃ良かったかな。牢に入る可能性もほとんどなさそうだし。でも俺、警戒心薄いし油断するもんなぁ。

 そんなことを考えながら、俺はエリーゼについていった。
 
 
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