257 / 409
ウェズリーの街編
30.飛び出したのはサラマンダーと襲撃者でした(4)
しおりを挟む「残りは十二人だけど、一応、あの十人も拘束しとこっか?」
「うん、その方が良いと思う」
フィルが賛同すると、残る二人も首肯した。俺は「じゃあ行ってくる」と片手を振って、単身で十人の側へ駆け寄り、その足元に【過冷却水球】を落としていった。
大きさも生成速度も上がったので、一個当てれば足がしっかり拘束される。バランスが取れなくなって倒れたところに追加で当てる。
二つ当てれば十分だろ。
怯えたような声を上げて、もたもたと逃げようとする十人。それを眺めて、何をしているんだか、と呆れたところで左右に残る十人が動き出した。
挟み打ちか。そりゃそうだよね。そうなるよね。
サブロは俺の肩にどうにかしがみついている。それはもう必死に。これ以上の無理をさせるのは酷なので、俺はゆっくりと歩いて後退した。
左から男が一人飛び掛かってきた。大袈裟な動作で長剣を振り下ろしてきたので【陰盾】で受けて【陽盾】で腕に返してやった。
自分で振るった剣で両腕が切断された男は悲鳴を上げてうずくまった。返り血が【障壁】に遮られる。汚れなくて便利。
右から飛び掛かってきた男は、俺が何をするでもなく吹っ飛んだ。マスケット銃の銃弾を受けたのだと察した。ヤス君の援護は安心するね。
すぐに三人目と四人目が左右から短剣で襲ってきたが、一人は両足が切断されて転倒し、一人は短棒が頭に直撃して倒れた。フィルもサクちゃんもやるなぁ。
最高のパーティーだ。
五人目はスキンヘッドの巨漢。対峙するなり大金槌を横薙ぎに振ってきた。俺は跳躍して避け、先端部を【陰盾】で受けて【陽盾】で相手の太腿に返した。
肉と骨が破壊される嫌な音が聞こえ、巨漢は「ぐぅっ」と呻いて倒れた。そこに【過冷却水球】で追い打ちを掛けて、俺は頼れる仲間の元に向かう。
サブロが「ピギー」と頬に抱きついて擦り寄ってきた。指で頭を撫でてやる。
嬉しいのか、よしよし。
「攻撃が止んだね。多分、舐めて掛かってたんだろね」
「奥の二人が逃げようとしてる感じっすね。どうします?」
「捕まえんといかんだろ」
「そうだよね。逃がす意味が分からない」
「別にいいと思うよ。だってあれ、モンテさんとチエだし」
フィルとサクちゃんが「え⁉」と一言。ヤス君は気づいていた様子。
「やっぱそれしかないっすよねー。告げ口したとしか思えませんもん」
「俺たちがルードに協力するってところまでしっかり話しておいたからね。でもモンテさんが告げ口する程に冒険者ギルドを牛耳ってるとは思わなかったな。こんなことあり得んでしょ。ギルマスまで黙らせてんのかね?」
「いや、呑気にしてないで捕まえんといかんだろ」
「そうだよ。説明させなきゃ。それに二人だって決まった訳でもないでしょ」
俺とヤス君は顔を見合わせて肩を竦める。それから二人で怪我をして呻く五人の側に向かって歩いた。無傷の五人は、距離を取ってこちらを警戒している。
ヤス君は俺がやろうとしていることを理解しているようで、マスケット銃で敵を牽制してくれている。
俺は最初に襲い掛かってきた男の腕を一つ拾い、怯えて逃げようとするその男の肩を掴んで止めて、腕同士の切断面を合わせる。
「治すぞ。動くなよ」
回復術を使い、くっつけてやる。かなり集中が必要だが、神経までしっかりと繋げるイメージでやると、接合後に動くのは魚で実証済み。
頼むぞー。人には初めてやるからなー。
かなり緊張したが、どうにか上手くいったようで、男は動く手を見て涙を流して喜んだ。もう片方の腕は自分で切断面を合わせさせ、両腕を完治させる。それが済むなり、土下座で感謝された。
こっちも人体実験しちゃってごめんな。と、心で謝る。後になって、自分のしたことの怖ろしさに気づいて動悸がした。切断した腕の断面とか間近で見ると胸が悪くなる。ちょっと血の気が引いていた。
「これから全員の怪我を治すから、よかったら知ってることを話してくれ。ただ、別に言いたくなかったら言わなくてもいいぞ。言ったら自分の身が危険とか、そういう場合は無理に言わなくていいからな。安全を一番に考えてくれ」
一人ずつ怪我を治していく。男たちは全員、何が起きているのか分からない様子だった。だが大金槌の巨漢が「感謝しやす!」と泣きながら俺に土下座をするのを見ると、無傷だった五人まで武器を捨てて土下座した。
0
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ひだまりを求めて
空野セピ
ファンタジー
惑星「フォルン」
星の誕生と共に精霊が宿り、精霊が世界を創り上げたと言い伝えられている。
精霊達は、世界中の万物に宿り、人間を見守っていると言われている。
しかし、その人間達が長年争い、精霊達は傷付いていき、世界は天変地異と異常気象に包まれていく──。
平凡で長閑な村でいつも通りの生活をするマッドとティミー。
ある日、謎の男「レン」により村が襲撃され、村は甚大な被害が出てしまう。
その男は、ティミーの持つ「あるもの」を狙っていた。
このままだと再びレンが村を襲ってくると考えたマッドとティミーは、レンを追う為に旅に出る決意をする。
世界が天変地異によって、崩壊していく事を知らずに───。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる