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ウェズリーの街編

28.飛び出したのはサラマンダーと襲撃者でした(2)

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「これしばらく続けていいっすかね? 濡れ手で粟なんすけど」

「なんか有名軍師の計略みたいなこと言い出してるけど、それ短くない? 物は良さそうだけど、弓じゃ使い物にならないんじゃないの?」

「ボウガン用の金属矢だな。回収は賢いだろ。費用が馬鹿にならんからな」

「じゃあ、しばらくこうしてよっか。それ鍛冶屋で引き取ってもらえる?」

「流石フィル君。そのつもりっすよ。今晩の飯代くらいにはなるでしょ」

 のんびりと話している間にも矢は飛んできていたが、すべて勢いが死んで落下。三十本ほど回収したところで攻撃の手が止んだ。

 矢が切れるにしては早いので、無意味だと覚って諦めたのだと推測する。ヤス君が、がっかりした様子で【異空収納】に矢を仕舞う。

「しけてやがんなー。まぁ、壁の後ろの五人がボウガン所持者って分かっただけでも良いっすかね。他は射線に入ってないから射れないだけかもっすけど」

「矢が勿体もったいないだけじゃない? 貧乏性が炸裂したんだよ」

「それに関しては僕たちも他人のこと言えないよね」

「そうは言うけどな、人間相手だと懸賞金でもかかってない限りは何の得にもならんからな。褒賞値がもらえる訳でもないし、賠償請求されるかもしれんし」

 襲撃されているのに、もう歓談の域に入っている。場にそぐわないが、それも仕方がないかなと思う。何故なら相手の力量が低いから。

 矢の命中精度を見て分かった。下手くそだ。射出速度はあるが、それは武器の性能。

 【風壁】なしで棒立ち状態を想定しても、当たったのは僅か二本。それもちょっと動けば躱せてしまう位置。他の皆もそうなのだろう。危機感を抱けない。

 対峙した訳ではないのでまだ何とも言えないが、少なくとも遠距離攻撃は怖ろしくない。ローガ一味と戦ったときの方が遥かに怖ろしかった。

 ローガか。頑張ってるかなー。

 帰ったらローガやデネブさんを交えて模擬戦をしてみるのも良いかもしれない。あの二人なら、今の俺たちと能力値的に大差はないだろう。

 そんなことを考えたとき、ふと知り合いの強さが気になった。

 ナッシュとクロエさんは俺たちと同じくらい。シャフトさんとレインさんは少し上にいる感じがする。

 エドワードさんはその上で、ヒューガさんとジオさん、あとサイガさんは多分もっと上だろう。で、頂上がミチルさん。

 スズランさんはその更に上な印象。リンドウさんは別格。鍛練して分かったが、煙管の殴り一発で巨大な魔物を半壊させるのは異常だ。誰にもできないと思う。

 ただなぁ、ルードもおかしいよなぁ。

 人と向かい合って殺されるイメージを抱いたのは初めての経験だった。あれは緊張したが故の威圧だったが、本気でぶつけられたら、それだけで気を失うんじゃなかろうか。

 リンドウさんは敢えてそれを感じさせないようにしているから分からないが、威圧だけで言えば今のところルードがトップだ。もしかするとメチャクチャ強いのかもしれない。今度、模擬戦お願いしてみよう。

「ユーゴ、何考えてんの?」

「ん、ああ、今度ルードに模擬戦お願いしようかなって」

「いいな。あれは強いぞ。俺も頼もう」

「ついていけんっす。さて、矢も飛んできませんし、そろそろ行きますか」

 そのうち俺の探知にも反応が出た。二十メートルくらい離れた場所の岩陰や壁の後ろに、合計二十二人の反応があった。五人ずつ四箇所。二人は最奥。

 この配置、取り囲もうとしてるな。

 俺はふと思いつき足を止めた。それに合わせて全員が立ち止まる。
 
 
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